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異世界で真実の愛を  作者: ぬっすぃ~
第二章 戦乙女として
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81.面倒事2

翌日、まだ夜が明けきらないうちに起床した私達は、カラートの街近くに降り立ち作戦の準備に入ります。


昨日のミーティングで街の西に展開する第17部隊から2人の隊員が私の援護にまわることになりました。

私の援護にまわってくれたのは第17部隊隊長のエミニエールと隊員のカレッサです。


2人とも接近戦闘は得意ではありませんが、エミニエールはエルフなだけあり魔法が得意で状況判断も正確です。

エミニエールと同様に人族のカレッサも魔法が得意な隊員なので安心して援護を任せられます。


今回の作戦では戦乙女達は事前に展開することになっているのですが、私だけは冒険者を装い街中に入るので、あらかじめ2人と打ち合わせをしておきます。


「エミニエール、援護の件だけど、ギリギリまで攻撃しないで欲しいの」


私がそう言うとエミニエールは意外そうに言います。


『えっ?どうして?3人で攻撃してさっさと街中から追い出したほうがいいんじゃない?』


エミニエールが言うように、作戦では私達が異世界の魔物を急襲して街の外に追い出すことになっていますが、実際に私達が急襲した時に予定どおりに魔物が動いてくれるとは限りません。

私達が急襲したことによって街中で暴れまわる可能性が無いとは言えないのです。

私としては街中で暴れまわられるのは避けたいので出来るだけ選択肢を多く持っておきたいのです。


「作戦では私達が街中から追い出すことになっているけど、実際に急襲した時に魔物がどう動くかわからないから心配なのよ」


『あいかわらず心配性ね、でもギリギリまで待つのは無理よ。クエフリーネの危険も大きくなるから待っても1分、それ以上はダメ。人々のことも大切だけど私達眷属に被害が出るようなことは絶対にしたくないから、それはわかってね』


エミニエールは私の危険性をちゃんと理解しているようで、許容出来る時間は1分と言いました。

1分と聞くとほとんど待っていないように感じますが、戦闘中に1分あれば数回は切り結ぶことが出来るのでけっして短い時間とは言えないのです。


「なんだかんだ言っても私の事を心配してくれてるのね。わかったわ、1分あればある程度は魔物の行動も判断出来ると思うからそれでお願いするわ」


エミニエールの考えは間違っていないし、私のことを心配しているからこそ待てる時間が1分だけなのがわかるので私はこれを承諾しました。


『クエフリーネはわかってると思うけど、私はけっしてみんなのことを心配してないわけじゃないのよ。ただ、私はみんなのことを信頼してるから普段はなにも言わないだけよ』


そう言うエミニエールは少し不満げな様子です。

エミニエールは普段から楽観的な言動をすることがよくあるので、深く関わっていない眷属には脳天気な性格だと思われていることが不満のようでした。


「エミニエールのことはわかってるつもりだけど、いろんな考えの眷属がいるんだからあまり気にしないほうがいいんじゃない?」


『気にしないって言っても、今回みたいに参加部隊数が多い作戦の時は気になるのよ。第17部隊は後方支援だから気楽だと思われてそうでなんか嫌。カレッサもそう思わない?』


私は気にしないように促してみますが、エミニエールは自分が率いる部隊が後方支援だという理由で他の部隊から気楽そうに思われてるのが嫌みたいです。


『私は気楽そうにしていると思われても気にならないけど、第17部隊はエミニエール隊長が気楽そうに私達と話をするから私達全員がお気楽だと思われてる節はあります』


話を振られたカレッサがそう答えると、エミニエールはふてくされたように言います。


『え~!私が原因だって言いたいの?』


『私は第17部隊の現状を言っただけで、エミニエール隊長が原因とは一言も言ってません』


カレッサはエミニエールが言った文句を聞いてもしれっとそう言い放ちました。

何度か第17部隊と共に作戦をしたことがありますが、割とよく見る光景なので私は「またやってる」という気持ちしか湧きませんでした。

しかし、2人がやり取りをし出すとなかなか終わらないことがわかっているので、私は2人を諌めるように言います。


「そろそろ時間になるから2人とも作戦に集中して。それから、援護には聖光が有効だと思っているのだけど、どう思う?」


私がそう言うとカレッサは押し黙りました。

カレッサは隊長のエミニエールを立てているのか、作戦のことなどを話す時は基本的に何も意見を言わないのです。

そんなカレッサとは対照的にエミニエールは先ほどの表情から一変して真剣な表情で答えます。


『聖光はありだと思う。いくら太陽の光を克服していても、吸血鬼である以上は聖属性の光は有効だと思うし、聖光なら周りに人々がいても問題無いからちょうどいいんじゃない?』


エミニエールも私と同じように、人々のことも考慮したうえで援護には聖光が適していると判断したようです。


「じゃあ、援護の開始は聖光とプロテクションでお願いするわ。もし予定外のことが起こったらその時はエミニエールの判断に任せるわ」


『オッケー。じゃあ、カレッサはクエフリーネにプロテクションを掛けたら槍を放てるように待機。私は聖光で援護しつつ状況を判断して臨機応変に動くよ』


私が援護のことをそうお願いすると、エミニエールは私のお願いどおりに援護の分担を決めていました。


「私はそろそろカラートに向かうから2人は先に向かって待機していて」


『それじゃあ、先に行ってるからクエフリーネも気をつけて。カレッサ、いくよ』


私がカラートに向かうことを告げると、エミニエールは笑顔でそう言い、私を援護するために先にカラートに向かいました。

2人がカラートに向かうのを見届けた私は黒い装備に換装してカラートに向かい歩き出します。


いつもは黒い装備を全て使うことは無く、部分的に使用して冒険者を装っているのですが、今回は魔王クラスもしくはそれ以上の強敵であることが予想されるので装備の簡略化はしないで全て装備しています。


正直なところ、この黒い装備を全てつけるのは恥ずかしいです。

特に髪飾りと一体となった左目の部分が私の羞恥心を煽りますが、この黒い装備の剣を使うためには必ず左目の部分が必要になるのでつけないわけにはいきません。


部分的にとはいえ、この黒い装備をつけて人々の前に姿を現すと、私に向けられる人々の視線が微妙な感じになるのがわかるのです。

なんていうか、痛い人を見るような視線になるのです。

そんなこともあって、この黒い装備を全てつけるのはそれなりの覚悟が必要でした。


この装備をテラ様からいただいた時に、人々に見られた時のことなど考えもせず、ダークヒーローっぽいって喜んでいた過去の自分を叱りたい気持ちになります。


そんなことを考えながら歩いているとカラートの西門が見えてきました。


今回の作戦を成功させるために、ここからはくだらないことを考えないように気持ちを切り替えて西門に向かったのでした。

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