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異世界で真実の愛を  作者: ぬっすぃ~
第二章 戦乙女として
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77.ディアとロイン3

それから一月が経ち、ディアとロインの結婚式がおこなわれる日になりました。


2人の婚儀はラヴェルナ神殿の大聖堂で執り行われるそうで、大司教となったヒラリーが婚儀の進行をおこなうということです。

また、聖女の婚儀ということもあって、テラリベルの王族や多くの高位貴族達も参列することになったようです。


ラヴェルナ神殿には婚儀の参列者以外にも聖女の結婚を祝福するために多くの人々が集まっていました。

テラリベルの街中には多くの屋台が出ており、人々が聖女の結婚を祝福していてちょっとしたお祭り騒ぎのようです。


婚儀での私の出番は2人が女神様に宣誓をおこなった後になります。

2人の宣誓を聞いた女神様の眷属が2人を祝福するために現世に姿を現すという流れになるのですが、私はすでに現世に降りて大聖堂の中にいます。


女神様は神界にいても現世の様子を覗くことが出来るそうですが、私には出来ないことなので大聖堂の中にいないと姿を現すタイミングがわからないからです。

大聖堂の中にいるといっても今の時点で人々の目に触れるわけにはいかないので、ミラージュの魔法で姿を消して女神像の上で待機している状態なのです。


私は女神像の上で待機していますが、直接女神像の上に乗っているのではなく、時空魔法で自分の重力を無くして空中に浮いているのです。

いくら人々が想像で作った女神像だとしても女神像の上に直接乗るようなバチ当たりなことは出来ません。


そうこうしているうちに準備が整ったようで進行役のヒラリーが婚儀の開始を宣言します。


『ただいまよりランシール伯爵家長女、ディアンヌ・ランシールとディストコンテ男爵家次男、ロイン・ディストコンテの婚儀をおこないます。まずは、新郎ロイン・ディストコンテの入場です』


ヒラリーがそう宣言すると大聖堂の入口から婚礼の衣装を着たロインが入場してきます。

1人で入場して来たロインは堂々とした態度で歩いてきますが、緊張しているのか、顔がやや強張っているように見えます。


そんなロインがヒラリーの前まで来ると、ヒラリーは続いてディアの入場を宣言します。


『続いて、新婦ディアンヌ・ランシールの入場です』


ヒラリーがそう宣言すると、父親らしい男性に手を引かれたディアが入場してきます。

ディアはプリンセスラインといわれる純白のウエディングドレスを身に纏い、紫がかった銀髪を綺麗に結い上げていて頭にはヴェールをつけています。


ディアの顔はヴェールに隠れてよく見えませんが、ロインとは違って微笑んでいるように見えました。

むしろ、ディアより手を引いている父親のほうが緊張しているように見えます。


ディアがヒラリーの前まで来ると司祭達による聖歌の斉唱がおこなわれます。

聖歌とは女神様の神託をもとに女神様のお言葉が人々にもわかりやすいように歌にしたもので、女神様を信仰している人の多いテラリベルでは広く浸透しているようで、参列者の中にも斉唱している人々がいました。


聖歌の斉唱が終わるとヒラリーが聖書、女神様の神託を書き記した教典の朗読をしていきます。

聖書に書き記されている神託は、人々を導くお言葉や咎となる行為などを難しい言葉で伝えているものがほとんどで、女神様を知る私でもどの女神様の神託かがわからないお言葉でした。


聖書の朗読が終わるといよいよ2人による女神様への宣誓になります。

前世では聖書の朗読の後に指輪の交換や抱負の表明などがあったように思いますがこちらの世界ではそのような習慣は無いみたいでした。

2人は一度、お互いの顔を見てから宣誓をおこないます。


『わたくし、ディアンヌ・ランシールは、ロイン・ディストコンテを夫とし、良き時も悪き時も、2人寄り添い、共に歩み、死が2人を分かつまで、愛を誓い合うことを女神様に誓います』


『わたくし、ロイン・ディストコンテは、ディアンヌ・ランシールを妻とし、良き時も悪き時も、2人寄り添い、共に歩み、死が2人を分かつまで、愛を誓い合うことを女神様に誓います』


2人はそう女神様への誓いの言葉をのべました。

前世でもそうでしたが宣誓の言葉は定型文があるようで、2人とも同じ宣誓の言葉でしたがこればかりはしょうがないと思います。


そして、いよいよ私の出番となりました。


2人の宣誓が終わると私はミラージュの魔法で輝く光を生み出していき、荘厳な雰囲気を演出します。

大聖堂内に光があふれてくると人々から驚きの声が聞こえてきます。


私としてはコソッと顔を出して2人を祝福するつもりでいましたが、テラ様に『私の眷属として現世に降りるのですから、相応の演出をして人々に敬われるように降臨してください』と言われてしまったので派手な演出をして降臨しないといけません。


ミラージュの魔法で生み出す光を徐々に増やしていき、最後に目が眩むような強い光を出してから私は姿を現し地上に降り立ちます。


私が姿を現すと人々から『おおっ!女神様が降臨なさった!』などと、私を女神様と勘違いした声がそこかしこから聞こえてきました。


(やばっ!とっととテラ様の眷属だって宣言しないと女神様だと思われてしまう!)


私は心の中では焦りながら事前に考えていた降臨時の宣言を言葉にします。


「創造の女神テラ様の眷属であるクエフリーネです。本日は聖女ディアンヌ・ランシールの願いを受け、2人の結婚に祝福の言葉を贈るために現世に降臨いたしました」


私がそう宣言すると、女神様の眷属である私の言葉を遮らないようにか、さきほどまで騒然としていた大聖堂が静寂に包まれました。


私が姿を現したことでディアとロインは嬉しそうな笑顔で私のことを見つめています。

祝福しに来ただけでこんなに喜んでくれる2人を見て、私はあらためて心からこの2人を祝福しようと思いました。


「ディア、ロイン、結婚おめでとう。2人の人生に幸多からんことを、そして、生涯において共に愛し合えることを祈り、心から祝福いたします」


私はそう2人を祝福し、言葉を続けます。


「また、2人の人生において、苦境に立たされた時には私を頼りなさい。2人が共に愛し合う限り、私は協力を惜しみません」


これはテラリベルの貴族である2人に贈るはなむけの言葉として今考えました。

私はてっきり貴族なのはディアだけだと思っていたのですが、ロインも貴族だと初めて知ったのです。


2人にはこれから貴族のしがらみが多くなり、困難な出来事があることが予想されます。

そんな2人に女神様の眷属である私が力を貸すと宣言することで、少しでもしがらみが無くなるようにと思っての言葉でした。


テラリベルの王族や高位貴族達が参列しているこの場で私がそう宣言することで、2人に余計な手出しが出来にくい状況にしたかったのです。


私の言葉を聞いたディアは目に涙をためながらお礼の言葉を口にします。


『リーネお姉様、祝福していただきありがとうございます。そして私達2人にお力添えしていただけることを心より感謝いたします』


『リーネ様、祝福をありがとうございます。私は生涯ディアを愛し、共に生きることをリーネ様に誓います。もし私が至らなかった時にはお力添えをお願いしたいと存じます』


ディアに続いてロインはそう言いました。

女神様に宣誓しているのですから、わざわざ私に宣誓しなくてもと思わなくもないですが、私のことを信仰していると言っていたロインは私にも誓いを立ておきたかったみたいです。


もともとの目的である2人の祝福を終えた私は2人にしか聞こえないように言います。


「(今日はテラ様の眷属として降臨していますので私が戦乙女だということは人々に伝えないでくださいね)」


私の言葉を聞いた2人は静かに頷いてくれました。

2人が頷いたのを確認した私は最後に人々に向けて言葉を発します。


「女神様は人々のことを見守っておられます。ですから、生を全うした時に女神様のみもとに導かれるような生を歩んでください」


私は人々にそう伝えると天界に戻りました。

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