表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で真実の愛を  作者: ぬっすぃ~
第二章 戦乙女として
74/113

74.1人の活動7

食後の仮眠を取った私は目を覚ましました。

窓の外を見ると日は沈んでいますが、まだ明るくてそれほど時間が経っていないのがわかります。

私は気持ちを切り替えるためにシャワーを浴びることにしました。


シャワールームは1m四方のスペースに水を出す魔道具と固定のシャワーがついているだけの簡素な造りですが、一般的な宿屋にはシャワールームがないことを考えるとじゅうぶん贅沢な設備です。


シャワールームに入り、換装で衣装を脱ぐと魔道具を操作して水を出して徐々に身体にかけていきます。

ドレックは温暖な気候で気温も30度ほどあるためか、水を浴びてもそれほど冷たく感じることはありませんでした。

シャワールームでしっかりと水を浴びると仮眠を取ってぼんやりしていた頭はしっかりと覚醒してきました。


水を浴びた後、生活魔法の乾燥で身体を乾かした私は黒の装備に換装します。

今からマヤが宿泊しているスイートに忍び込み、中の間取りや状態を確認することにしたのです。


私は自分に光属性魔法のミラージュをかけて隣りのスイートに向かいます。


光属性魔法のミラージュは光の屈折率を変えて見えなくしたり、実際の位置を誤認させたりする魔法です。

目で確認している相手にはそれなりに有効な魔法ですが、音や匂いで確認している動物や体温を感じる魔物、魂を見れる精霊などには全く効果がありません。


スイートの前にきた私はとりあえず扉の鍵を確認しますが当然しっかり鍵がかかっています。

私はここにきて鍵を開ける方法がないことに気がつきました。

鍵の構造自体は複雑なものではありませんが物理的に鍵を開ける技術は持っていませんし、鍵を開ける魔法も知らないのです。


鍵を魔法で開けるのはそれほど難しくはないと思いますが、下手をするとイニティニーニ様に怒られてしまうので躊躇してしまいます。


私はいったん自分の部屋に戻って鍵の構造を見ながら魔法を考えます。

ここの鍵は金属製の軸に鍵穴が開いており、一番奥まで鍵を差し込み、ストッパーを押さえながら軸を回すことによって金属製の棒が出入りするようです。

ようは金属製の軸さえ回せれば鍵は開くのです。


(サイコキネシスって感じかな?)


私は自分の部屋の鍵で実験してみることにします。

奥のストッパーを押さえて軸が回るイメージで魔法を発動させるとカチっという音がして軸が回り鍵が開きました。

どうやらうまく開けれたようですが、鍵の構造が把握出来たら道具さえあれば魔法を使わずとも開けられたように思います。


とりあえず魔法で鍵を開けることが出来たので、あらためて隣りのスイートに向かい鍵を開けて中に忍び込みます。


スイートの中はリビングと寝室に別れているようで、扉を開けて入ったすぐの部屋には大きめのローテーブルにソファーが2脚あり、部屋の片隅には魔道具の冷蔵庫も設置されています。

リビングの広さは6畳ほどで左手は寝室に続いていて、奥には扉がありました。

奥の扉を開けると右手にトイレと左手に浴槽が設置されていて水回りが1ヶ所にまとめられているようです。


寝室は8畳ほどでキングサイズのベットに椅子とテーブルがあり、備え付けの棚にはタオル代わりの布や予備のシーツ、薄手のローブが準備されています。


スイートは1泊で金貨5枚するだけあって部屋の設備も充実しており、前世のホテルにも負けないクオリティーでした。


「ラブホテルみたい」


しかしスイートの中を見た私はそんな感想が口から出ます。

前世では実際にラブホテルに入ったことはありませんが、検索して部屋の画像を見ることはありました。


そんなこんなで部屋の中を確認した私は鍵をかけ直して自分の部屋に戻ります。


マヤは働いている酒場が閉まるまでは後1時間ぐらいあり、それから男性を連れて戻って来ると考えると2時間後ぐらいに宿屋に戻ってくると思われました。


私は逸る気持ちを抑えてポーションの作成をすることにしました。

薬屋の店主と話していて、薬草の下処理が不十分でポーションの作成に失敗していた可能性が出てきたのでそれを確認するつもりです。


初級の回復ポーションは傷薬と同じヒラリ草を使って作りますが、いままでは傷薬を作る時と同じように葉脈もそのまま加えていました。

しかし、葉脈の部分は僅かに違う成分が含まれているらしく、葉脈を取り除くと高品質の傷薬が作れると聞いたのです。


ある程度すり潰したヒラリ草から太い葉脈を取り除き、さらにすり潰して滑らかにします。

滑らかになるまですり潰したヒラリ草をスプーンで掬い、摺り切って一定の分量を取るとガラスの器に移し、魔力を込めながら水を注いでいきます。

すると、すり潰したヒラリ草が魔力を込めた水に溶け込むように消えていき、緑色をした水が器の中に現れました。


「1発で成功したわ!やっぱり下処理が不十分だったみたいね」


いつもは中途半端に溶けてちゃんとした回復ポーションにならないことが多かったのですが、今回は最初からちゃんとした回復ポーションになったのです。

やはり、ヒラリ草の葉脈を取り除いたのが良かったみたいで、準備したヒラリ草は全てちゃんとした回復ポーションになりました。


そんな感じでポーション作成のコツを掴んで喜んでいると、通路のほうから男女の話し声が聞こえてきました。


どうやらマヤが男性を連れて戻ってきたようです。


男女の話し声は私の部屋を通過してマヤが宿泊しているスイートの中に入っていきました。

私は聞き耳を立てて隣りの部屋から聞こえてくる音に集中します。


どうやらマヤが連れ込んだ男性はかなり酔っているみたいで、話し声が大きくて内容も意味がない言葉を発しています。


『もう~ロレックさんたら~お酒を飲み過ぎですよ~』


『いいじゃん、マヤしゃんがもっろきもち~くしてくんらろ?』


『だからっていってもお酒の飲み過ぎでまともに歩けもしないじゃないですか~ほら、ベットまでいきますよ~ロレックさん』


『あっ、ちょっ、マヤしゃん?自分で歩くかや・・・』


『もうっ、早くしてくださいね』


そんな2人のやり取りが聞こえ、男性をなんとかベットまで連れていったようでした。


『ちょっとお酒を飲ませ過ぎちゃったけど、どうせ朝まで目覚めないから一緒よね』


一度リビングに戻ってきたマヤはそういって寝室に向かったようです。

2人が寝室に向かったのを確認した私はミラージュをかけ直して静かにリビングに忍び込みます。


寝室からは男性やマヤの声が聞こえてきます。


『マヤしゃん、ちょっ、もっ』


『あぁ~ん、ロレックさん、もっと頑張って~』


『もう、むい・・・』


『ダメよ、ロレックさん、まだ気持ち良くなってないでしょう?』


私はそんな声を聞いているだけでだんだん恥ずかしくなってきますが、これも使命のためと割り切って寝室を覗くと、ロレックの上に乗ったマヤが見えました。

今のマヤは人族の姿をしておらず、頭から捻れた角を生やし、コウモリを彷彿させる翼が背中から生えていて見るからにサキュバスという姿をしていました。


そうこうしているうちにロレックが力尽き動かなくなりました。


『あちゃ~やっぱりお酒を飲ませ過ぎちゃったか~もうっ!たいして精気を吸えなかったじゃない!』


そんな2人を確認した私は、音を消す風属性魔法のサイレンスと光を遮断する闇属性魔法のダークネスを発動させてマヤに切りかかります。

ダークネスの魔法によって寝室の中は真っ暗になりますが、私は暗視スキルがあるためマヤのことをはっきり見ることが出来ます。


切りかかる寸前で私に気づいたマヤは左手を出して口を開きますがサイレンスの効果で声を発することが出来ません。

私が振るった剣はマヤの左手に遮られて胴体には僅かしか傷つけることが出来ませんでしたが、左手を肩口辺りから切り落とすことが出来ました。


さらに踏み込み横凪に振るった剣をマヤは後ろに飛び退き回避しようとしますが、私の剣はマヤの左足をとらえて膝上辺りから切り落とします。

壁際に追い詰められたマヤは涙を流しながら魔法を発動させようとして口を動かしますが、声が発せないので魔法を発動することは出来ないみたいです。


魔法が使えないとわかったマヤは身をひるがえして寝室の窓から逃げようとしますが私はベットを飛び越えて背中へと切りかかります。

背中の翼が邪魔をして胴体にはとどきませんでしたが右の翼を切り落とすことが出来、その反動でマヤは床を転がるように倒れて私のほうを見ています。


さきほどからわかっていたことですが、どうやらサキュバスも暗闇の中を見る能力があるようでした。


(ダークネスは必要なかったわ)


マヤは逃げきれないと思ったのか、私に向かって必死に口を動かしていますがサイレンスの効果で何を言っているのかわかりません。

おそらくは命乞いをしているのだろうけど、マヤが異世界の魔物であるかぎり見逃すことは出来ないのです。


私は1度、大きく横に首を振り、そしてマヤの首を切り落としました。

それが最も痛みをともなわない殺し方だと思ったからです。


ダークネスを解除して部屋の中を見ると寝室は血の海と言えるような状態でした。

私はマヤの死体をストレージにしまって寝室にクリーンをかけていきます。

幸いにも寝室の壁や床を剣で傷つけることがなかったため、クリーンをかけると綺麗な状態に戻すことが出来ました。


ベットに横たわっているロレックは朝になれば意識を取り戻すだろうと考えてそのまま放置し、サイレンスを解除して私は自分の部屋に戻ります。


「ふう、なんとかなったけど、やっぱり人っぽい魔物を殺すのはちょっと嫌な気分になるわ」


私はあらためてマヤを殺した時のことを考えました。

人型の魔物を殺すこと自体はなにも感じませんが、命乞いをしている相手を殺すのは嫌な気分になるのです。


私はそんなことを思いながら金の草原亭で休み、翌朝には金の草原亭を出てひとけのない場所に移動すると天界へと跳躍しました。


天界に戻った私は活動の報告をするために神界に移動してナスハ様のもとに向かいます。


「ナスハ様、活動の報告に参りました」


『クエフリーネさん、予定は1週間あったと思いますがもう完了したのですか?』


私が報告にくるとナスハ様は少し驚いたように聞き返されました。


「はい、思いのほか情報収集がスムーズにいきまして、昨夜のうちに魔物の討伐に成功しました」


私がそうこたえるとナスハ様は感心したように言われます。


『ほう、それはすばらしいです。やはりテラ様の眷属の方は優秀ですね。では詳しい報告をお願いします』


ナスハ様がそう言われたので、私はドレックで仕入れた情報をまとめて説明していきました。


「活動の報告は以上で、こちらが今回討伐した異世界の魔物です」


私は最後にそう言ってマヤの死体をストレージから出しました。


『お疲れさまでした、地上でも問題は無かったみたいですから安心しました。次の調査は決まり次第連絡いたしますので、それまでゆっくり休んでください』


私の報告を聞いたナスハ様はそう労いの言葉をかけてくれました。


初めての隠密活動は途中でいろいろとトラブったけど、無事に使命をはたすことが出来たのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ