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異世界で真実の愛を  作者: ぬっすぃ~
第二章 戦乙女として
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70.1人の活動3

その後、私はラミィから知っていることを聞き出し、ラミィとはギルドで別れました。

ラミィの話では働かなくなった男性は昼間から酒場に入り浸っているということだったので、私は町の北側にある酒場に向かうことにしました。


しばらくすると左手に酒場らしい建物が見えてきましたが、お昼時なのに客が入っていくのは見られません。

酒場の店内に入ると商人らしき格好の男性3人が食事をしている以外の客はいませんでした。


私はとりあえずカウンターに向かいマスターにエールを頼みます。

エールとはいわゆるビールのことですが、この世界ではホップは使用されておらずアルコール度数も低いため、水と同じような感覚で飲まれています。


「エールを1杯ください」


『はい、エールは銅貨1枚です。ご一緒にビルもいかがでしょうか?こちらも銅貨1枚になります』


ビルというのは大豆のような豆のことで、ビルを湯がいた物を酒のつまみとして出すのがこの世界では一般的です。


「じゃあ、一緒にもらうわ」


そう言って銅貨を2枚出すと、マスターはすぐにエールとビルを出してくれます。


(そういえばお酒を飲むのは前世以来になるわ)


この世界に来てから料理でお酒を使うことはありましたがお酒を飲むのはこれが初めてでした。

そんなことを考えながらエールを一口飲みます。


(前日に開けたビールの残りを飲んでるみたい)


私が飲んだエールはまさにそんな感じで、おいしいと感じるものではありませんでしたが、続けてビルを食べると豆の味がエールの苦味を消しておいしく感じられました。

前世では枝豆を食べてビールを飲むといった感じで「つまみを食べて酒を飲む」って感じでしたが、この世界では「酒を飲んでつまみを食べる」のが主流なのかもしれません。


私はエールとビルを口にしつつ店内をうかがうが、客が増える様子がないのでマスターに声をかけることにしました。


「お昼はいつもこんなに静かなの?」


私がそう聞くと、マスターは少し困ったような表情でこたえてくれます。


『最近はすっかりお客が減りまして。ふた月ほど前から向こうの店に客を取られてしまったんです』


「それは大変ね」


『ええ、どうやら新しく雇った店員の人気が凄いらしく、多くの男性客は向こうの店にしか行かなくなってしまったんです』


ラミィとマスターの話をまとめると、新しく雇った店員が人気で男性客が店に集まるようになって、その男性客達が働かなくなったってことのようです。


「ふ~ん、新しい店員って女性なのよね?どんな感じの女性か知ってますか?」


『私は直接見たことは無いですが客の話だと、かわいくてなおかつ色っぽい女性という噂です』


「へぇ~かわいいけど色っぽいのね、ちょっと興味深いわ。その女性ってドレック出身なのかしら?」


『違うと思います。そんな女性がいたら昔から話題になっているでしょう』


「なるほど、ありがとう」


私はそう言って銀貨を1枚をチップとして出します。

マスターの話はかなり有益な情報だと思えたので色をつけておきました。


店を出た私はあらためて情報をまとめます。

2ヶ月前から酒場で店員として雇われている女性は、ドレック出身ではなく、男性客達を虜にして働かない男性を増やしているということです。

話の内容自体は無くはない話ですが、雇われた時期を考えると黒の可能性は高いと思えました。


私は確認するためにもう1つの酒場に向かいます。

もう1つの酒場はさきほどの店から100mほどしか離れていませんが、こちらの店は繁盛しているようで店の外にまで喧騒が聞こえてきます。

私が店の中に入ると若い女性の店員が声をかけてきました。


『お一人様ですか?今は混雑してますから相席になりますがよろしいですか?』


私はそう言われ店内の見渡します。

店内は4人掛けのテーブルが8つにカウンター席が12席ありますが、カウンター席は全て埋まり、テーブル席も2ヶ所空いているだけのようです。

客のほとんどは男性客でしたが、男性1人、女性2人の3人組の冒険者が座るテーブル席に空きがあったのでその席に相席させてもらうことにしました。


私は冒険者が座るテーブル席に近づき声をかけます。


「相席させてもらってもいい?」


私がそう声をかけると食事中の女性2人は私の顔を見て頷いてくれましたが、男性は私の顔を見て固まってしまっています。

しばらく待っても男性から反応が返ってこないのでどうしようかと悩んでいると女性の1人が男性に声をかけました。


『バカロット!女の顔をジロジロ見てんじゃねぇよ!失礼だろ!』


女性にそう言われた男性は慌てて声をかけてきます。


『すいません!綺麗な顔の人だったんで、つい見とれてしまいました』


私は男性にそう言われて内心で焦ります。

ダークエルフの私はエルフと同様に容姿が整っていて綺麗な顔をしていることは理解していましたが、男性から顔が綺麗だと言われてどう反応していいかわからなかったのです。


しかし、そんな私をよそに、さきほど声をかけた女性が男性に噛みつくように言います。


『あたいが綺麗じゃないって言いたいのか?!』


『・・・レイラも特徴的な顔だと思うよ』


『てめぇ、あたいにケンカを売ってんだな?』


『いや、そんなつもりは・・・』


『バカロット、前から言ってんだろ!思ったことをなんでも口にすんじゃねぇ!』


『・・・ごめん』


私が呆気にとられて2人のやり取りを見ていると、もう1人の女性が声をかけてきます。


『いつものことだから、気にせず座って~』


女性はそう言いましたが、いつものことだと言われても逆に気になってしまいます。

本気で言い合いしているわけではないだろうけど、普段からこんなやり取りをしていたら目立って仕方がないし、下手をするとトラブルの原因になりかねないのに気にしている様子は無いのです。


『いいから座って座って』


私がそんなことを考えていると女性はそう声をかけてきたので、気を取り直して席に座ることにしました。


「それじゃあ、おじゃまするわね」


『うん、ほんとに気にしなくていいから』


私がそう言って席に座ると、女性は笑顔でそう返事をしてくれました。

席に座った私は、さきほどの店員にエールとビルを頼んでから女性に声をかけます。


「この店、凄く人が多いわね」


この店に客が多いことは知っていますが素知らぬ顔をして聞いてみます。


『なんでも人気の店員さんがいるらしいですよ。ロットが見てみたいって言うから私達も一緒に来たんだけど、男の人ばかりでちょっと場違いな感じだからレイラの機嫌が悪いの』


女性がそうこたえると、レイラと呼ばれた女性が会話に混ざってきました。


『バカロットが店員見て鼻の下伸ばしてるところにあんたがきてあの態度だろ?さすがにあたいもイラッてくるぞ。ラティナもそう思うだろ?』


『私も多少思うところはありますけど、男の人ってみんなそんな感じだからそこまでじゃないかな』


ラティナと呼ばれた女性がそうこたえると今度はロットと呼ばれた男性が会話に混ざってきます。


『そうですよ、男って綺麗な人を見ると僕みたいになってしまうんですからレイラも怒らないでくださいよ』


『てめぇ、なに開き直ってんだよ!』


『いや、でも事実だから・・・』


『ちっ、じゃあ、見られてたあんたにっと、すまん、あんたって言う言い方は失礼だな、悪いけど名前聞いていいか?』


3人の会話に半分置いていかれていた私はレイラにそう話を振られたのでとりあえず名乗ります。


「あっ、クエフリーネよ」


『それで、クエフリーネはロットに見られてどう思ったわけ?』


私はレイラにそう聞かれて少し悩みます。

ロットは確かに私の顔を見て固まっていたけど、嫌悪感があるような表情をしていたわけではないし特に思うことはありませんでした。


「別に、なにも思わないわ」


私がそうこたえるとレイラは機嫌の悪さを隠しもせずに言います。


『見慣れてるってか。はいはい、あたいが短気なだけだったってわけだ』


「見慣れてるわけじゃないけど気にするようなことでもないわ。場所によっては険悪な視線を向けられることもあるからいちいち気にしていないだけよ」


私はレイラ気持ちを察して納得出来そうな理由を言いました。

私が言ったことを聞いたレイラは少し納得したように返事をします。


『そうか、帝国じゃダークエルフも珍しくないけどよそじゃそうでもないもんな』


レイラがそう言うと今度はラティナが質問してきます。


『クエフリーネさんって、もしかして純血種ですか?』


ラティナにそう聞かれたが私は質問の意図がわかりませんでした。

私に純血種かどうかを聞いてきたってことはダークエルフの純血種が少ない、もしくは珍しいってことだろうけど、私が純血種かどうかはラティナ達には関係ないと思えるのです。


私がそんなことを思っているとラティナは慌ててさきほどの言葉を補足するように言います。


『ごめんなさい、深い意味は無かったんだけどクエフリーネさんってハーフっぽくないから純血種の方かなって思って聞いただけです』


ラティナの話を聞いて、さきほどの質問の意図は納得出来ましたが1つ疑問が残りました。

ラティナがハーフっぽくないと言っていたってことは、少なくともドレック周辺ではハーフのほうがよく見られるということになるのです。


「レイドック帝国は初めてなんだけど、帝国ではハーフのほうが多いのかしら?」


『ハーフのほうが多いというよりハーフ方しか見かけませんね。レイドック帝国はダークエルフも1種族として容認していますから、人族との混血化が進んでいてダークエルフの純血種の方はまず見ません』


私はラティナの話を聞いて複雑な気持ちになりました。

レイドック帝国ではダークエルフが容認されていることを嬉しく思う反面、混血化が進みハーフばかりになっている現状を愁いてしまいます。


ラティナの話を聞いて私がそんなことを思っていると、なんでもないようにロットが言いました。


『クエフリーネさんって純血種なんですか?どうりで綺麗なお顔をされてると思いました』


ロットがそう言うとレイラはロットの頭を叩き、注意します。


『バカロット!だから言ってんだろ、女の顔のことを本人の前で言うな!』


『えぇ~?いいじゃないですか?悪いことは言ってませんよ?』


ロットは叩かれた頭をさすりながらそう反論しますがレイラは気にせずさらに反論します。


『良い悪いに関係無く男に顔のことを言われるのが嫌な女もいるんだよ!』


『えっ?そんな女性がいるんですか?褒め言葉なら女性は喜ぶと思うんですが、ラティナはどうなんですか?』


ロットはレイラの話を聞いて驚いたようにラティナに話を振りますが、レイラはロットの対応に腹を立てて声を荒げます。


『てめぇ!わざわざラティナに聞いてんじゃねぇ!』


『まあまあ、レイラも落ち着いて。ロットはわからないかもしれないけど、たとえ褒め言葉でも女性を下に見るような男性から言われるのは嫌なのよ。それから、この話はこれで終わりにして。クエフリーネさんが呆れてますよ』


この騒ぎをおさめるように言ったラティナの言葉を聞いて私は安堵しました。

ラティナの言うとおり、私はレイラとロットのやり取りを見て呆れて傍観していたのです。

天然気味のロットと短気なレイラをまとめているであろうラティナを私は心の中で賞賛しました。


ひとまず落ち着いたので私は当初の目的である人気の店員について聞いてみることにしました。


「さっき言っていた人気の店員ってのはどの子なの?」


『それはですね・・・』


『ロット、少し黙っててくれる?』


私の質問にロットがこたえようとしたのをラティナが黙るように言って止めました。

ラティナの言葉使いは変わっていませんが、ロットに言った内容から少し怒っているように感じられます。


『クエフリーネさん、厨房の近くでオーダーを取っている紫色のチュニックを着た女性がそうです』


ラティナにそう説明されて、私は該当する女性に目を向けました。

その女性は幼さが残るような可愛らしい顔をしているが、ちょっとした仕草や動きが独特の色気を伴っています。

そして、周りの客に笑顔をふりまいていますが目だけは慌ただしく動いていました。


私はそんな女性の目を見てある1つのことを思い浮かべます。


(獲物を物色している動物みたい)


私はそんなことを思いながら、ほぼ確信を持って女性を鑑定しました。

そして、予想どおりにその女性からはなにも情報を得ることが出来ませんでした。

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