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異世界で真実の愛を  作者: ぬっすぃ~
第二章 戦乙女として
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69.1人の活動2

街道沿いをしばらく歩いているとドレックらしき町が見えてきました。


ここから見えるドレックの町は小さな門と木製の柵で周囲を囲ってありましたがそれほど強固な柵には見えませんでした。

あの柵ではオーガなんかには役にたたないと思ったけど、森の中に弱い魔物しかいなかったことを考えるとドレック周辺は比較的安全なのかもしれません。


小さな門には2人の兵士がついていて町の出入りを監視しているようです。

私が門に近づくと1人の兵士が声をかけてきました。


『身分証もしくはギルドカードを提示してください。どちらも無い場合は保証金として銀貨3枚が必要です』


そう言われたので私はギルドカードを出します。


「これでいい?」


『えっ?A級・・・はい、問題ありません。入町税に銅貨1枚が必要です』


私が出したギルドカードを見て兵士は驚いていましたがすぐに落ち着き対応してくれます。

ロカからはA級のギルドカードでも問題無いと言われていましたが、辺境の町ではやはり珍しいみたいです。


そんなことを考えていて気がつきましたが、私は銅貨どころか銀貨も持っていませんでした。

しょうがないので金貨を1枚出して謝罪しておきます。


「ごめんなさい、金貨しか持ち合わせが無かったわ」


『いえいえ、大丈夫です』


対応してくれている兵士はそう言って私が出した金貨を受け取り、銀貨9枚と銅貨9枚を返してくれました。

正直なところ、辺境の町の裏手にあたる門だから、まともな兵士はいないだろうと勝手に思っていました。


この兵士になら町のことをある程度聞いても問題はなさそうだったので、最近の町の様子と宿屋や酒場の場所を聞いておきます。

異世界の魔物を見つけるためにはまずは情報収集が必要だから対応のいい兵士に聞いたのですが、兵士の話では最近はこれといった問題は起こっていないということでした。


宿屋は3軒あり町の北側に2軒、町の中央にある冒険者ギルドの横に1軒あり、北側の2軒は商人が使う少しお高い店と一般的な店が1軒ずつ、冒険者ギルドの横は最低クラスの安宿だという。

酒場は北側に2軒と冒険者ギルド併設の1軒があるがどこも似たような感じであまり差は無いようです。


私は対応してくれた兵士にお礼を言い町の中に入ります。

町の中に入ると大通りが町の中央まで続き、そこから右側に折れ曲がって北に伸びているようで、感覚的には大通りが「く」の字になっている感じです。


ドレックの町は農業が主要産業なためか、今の時間帯、お昼少し前ですがあまり人々は見られません。

今のところ、商人らしき人や護衛の冒険者くらいしか見かけることが出来ませんでした。


(今の時間帯だと町の住人は農作業中なのかしら?)


私はこの後、どう行動するか考えます。

町の中を一通り歩いて町の状況を確認する必要もありますが、お昼が近いので酒場で情報収集することにしました。

ここから1番近いのは冒険者ギルド併設の酒場なのでそこに向かいます。


大通りを中央に向かって10分ほど歩くと大通りの南側に剣と盾がモチーフの看板が見えてきました。

冒険者ギルドの看板はこの世界共通のデザインで、ひと目で冒険者ギルドだとわかるようになっているのです。


冒険者ギルドに近づくと喧騒が聞こえてきますが、冒険者ギルドの左側は宿屋で右側は倉庫のような建物で酒場は見あたりません。

疑問に思い冒険者ギルドの扉に近づくと喧騒は冒険者ギルドの中から聞こえてきていました。

酒場は冒険者ギルド併設と聞いていたけど、どうやら冒険者ギルドの中にあるようです。


(外でもこれだけ聞こえているってことは中は相当うるさいわね)


そんなことを思いながら扉を開けて冒険者ギルドの中に入ると、左側から大きな喧騒が聞こえてきて耳を伏せたくなりました。

それもそのはずで、これほどうるさい状況は前世でも数回しか経験していませんし、この世界では一度も経験していないのです。


ちなみに、耳を伏せるとは比喩ではなく、エルフの耳はある程度自由に動かせるので、実際に耳を下げることが出来るのです。


うるさいのを我慢して中を見渡すと、正面に冒険者ギルドの受付があり、右側は待合所のようになっています。

左側は壁のまん中に開かれた両開きの扉があり、喧騒はそこから聞こえてきていました。


(酒場はあの中よね・・・はぁ、気が重いわ)


私は喧騒を聞いて気が萎えますが、ここに来た目的が酒場での情報収集なので中に入らないわけにはいきません。

そんなわけで、気持ちを切り替えて酒場に入ると、6人の男性が2つのテーブルを使って大騒ぎしていました。


私は男性達には目もくれずにカウンター席まで移動してマスターに食事を頼みます。


「食事を頼みたいのだけど」


『銅貨5枚だ』


私がそう言うとマスターは無愛想に食事を準備して料金を言いました。

マスターの無愛想さを見てここでの情報収集はロクに出来ないだろうと思いました。

当初はチップを渡して話を聞こうと思っていましたが、マスターの無愛想さを見るとまともに話が出来るとは思えなかったのです。


私はとりあえず銅貨5枚を渡して食事を受け取ります。

受け取った食事は大きめの黒パンに、ただ焼いただけのおそらくホーンラビットの肉、野菜のスープでした。


(黒パンは初めてだわ)


私は初めて見る黒パンに少しだけ興味がわきました。

ロカから冒険者のことを教えてもらった時に黒パンのことは聞いていましたが、実際に見て食べるのはこれが初めてです。

黒パンは保存食も兼ねているからそのままでは固くて食べれないと聞いていたとおり、カチカチでとても噛めそうにありません。


そこでロカから聞いていたとおりに黒パンをスープに浸して柔らかくする間にホーンラビットの肉をかじりますがほぼ素材の味しかしません。

胡椒がかかっていればもう少しマシな味になるのだろうけど、この肉は塩をかけてあるかも怪しいです。


私は味を無視して肉を食べきり黒パンにかかります。

スープに浸してあった黒パンはわずかに柔らかくなってなんとか噛める状態になっていましたが、味は酸味があるだけでおいしくはありません。

しばらく黒パンを噛んでいましたがなかなか飲み込めないのでスープで流し込みますがスープはほぼ野菜の煮汁でした。


私はなんとか黒パンを食べきり食事を終えましたが、2度と食べたくないという感想しか浮かびませんでした。


(ロカが食事に興味を持っていなかったのが納得出来るわ)


どこで食事をしても今みたいな食事が出てくるわけではないですが、冒険者をしているとこのような食事が多くなるので「食事を楽しむ」という考えは浮かばなくて当然でした。


食事を終えた私は酒場から出ることにします。

マスターは無愛想だし、客は騒がしい6人しかいないので情報収集をあきらめて酒場から出るとラミィと鉢合わせました。


『あ、クエフリーネさん、少しだけお話しする時間をもらえませんか?』


私を見たラミィはそう声をかけてきました。

ラミィはさきほどとは違って落ち込んでいるようでしたが、ここで下手に対応するとまたついて来ると言いかねないので連れて行けないことを念を押してこたえます。


「いいけど、連れて行くのは無理だからね」


『はい、そのことはあきらめました』


ラミィはそう返事をしてくれたので、私は待合所に移動してラミィの話を聞くことにしました。


「それで、話って?」


『はい、私、ちゃんとクエフリーネさんにホーンラビットをもらったお礼を言ってなかったので・・・あの、ホーンラビットをくださってありがとうございます』


ラミィはそう言ってお礼の言葉を口にしました。

そう言われてみればお礼は言われていなかったけど、私が必要無くてあげただけだから特に気にしていませんでした。


「ラミィがいなかったら捨てていくだけだから別にお礼はいいわ」


実際のところ、ラミィがいなかったらホーンラビットを仕留めることもしなかっただろうけど、そこは言わぬが花だろう。


『私がホーンラビットをもらったことにはかわりないので、ちゃんとお礼を言っておきたかったんです。それと、失礼な態度をとってしまってごめんなさい』


(ん?失礼な態度って?)


『クエフリーネさんは私を連れて行けない理由をちゃんと説明してくれたのに、足手まといって言われてショックで自分だけ先に町に戻ってしまいました』


私はラミィの説明を聞いて納得しました。

確かに客観的に見ればラミィの態度は悪かっただろうけど、泣かせたこともあって気にしていませんでした。

足手まといと言われたらああいう行動になってもしょうがないという気持ちのほうが強かったのです。


『町に戻ってからギルドの人に話したら、そんなの当たり前だって言われて、私が無理なお願いをしてるのがわかったんです』


冒険者がパーティーを組む場合、普通は同じ、もしくは近いランクの冒険者とパーティーを組むのが一般的で、実力が極端に離れている者がパーティーを組むのは寄生と言われ嫌悪されているのです。

そんな理由もあって私が足手まといと言ったことをギルドで当然だと言われたようでした。


「ラミィは登録したての新人だからその辺のことは知らなかったのね。まあ、ソロで活動するのは大変だから、同じランクの人を探して一緒に活動することにしたほうがいいわ」


『そう言われても、こんな田舎じゃ農業をする人がほとんどで冒険者になる人って少ないから私みたいな新人はいないんだもん』


ドレック周辺が比較的安全とはいえ、ラミィがソロで活動するのは難しそうなのでパーティーを組むように提案しますが、どうやらドレックでは農業に従事する人がほとんどで冒険者になる人は少ないみたいでした。


普通に考えるとドレックみたいな田舎では小さい時から農作業を手伝うのがあたりまえなので、成人してもほとんどの人が農業に従事するのは自然なながれです。

そんな中では冒険者になろうとする人が少ないのは当然の結果なのです。


ラミィは農業が嫌で冒険者になったと言っていましたが、冒険者になるよりも安全で定期的な収入のある農業のほうがラミィには向いているのではないかと思い、農業が嫌な理由を聞いてみることにしました。


「ラミィは農業が嫌で冒険者になったと言っていたけど、農業のなにが嫌なの?」


私がそう聞くとラミィはやや不満げに話します。


『私も最初は普通に農業をしてたんだけど、少し前から働かない男の人が増えてきたのよ。そのせいで1人あたりの作業量が増えてしまって大変だったのよ』


私はラミィの話を聞いて違和感を覚えました。

ドレックは人口が2000人ほどの小さな町です。

そんな町で農作業に影響が出るほどニートみたいな男性が急に増えるとは思えなかったのです。


「ラミィ、働かない男性が増えたのってどれくらい前からかわかる?」


私がそう質問するとラミィは不思議そうな表情になりながらもこたえてくれます。


『えっ?えっと~、一月半ぐらい前じゃないかな?』


私はラミィの返事を聞いて、時期的なことを考慮するとなにかしら異世界の魔物が関係しているのではないかという考えにいたりました。

異世界の魔物がどのように関与しているかまではわかりませんが、ドレックでの僅かな異常を調べれば異世界の魔物に繋がる確信がありました。


たまたま知り合ったラミィから異世界の魔物に繋がりそうな話を聞けて、ラミィが女神様のお導きと言っていたのを思い出します。


(最初はいろいろと困ったことがあったけどラミィと知り合えたのは結果的には良かったわ)


私はそんなことを考えながらラミィから話を聞くのでした。

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