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異世界で真実の愛を  作者: ぬっすぃ~
第二章 戦乙女として
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68.1人の活動1

私が新しい部隊長になってから数日後、初めての活動をおこなうことになりました。

場所はガストール王国の南東にあるレイドック帝国に属するドレックという町です。


ナスハ様の話では、およそ2ヶ月前にドレックの近郊の森で時空の歪みが発生していて、それが異世界から魔物が送られてきて発生した歪みだという。

時空の歪みを発見したナスハ様は歪みの修復および魔物の調査をおこなったが魔物の発見にはいたらなかったということでした。


それ以降にドレック周辺に生息している魔物に異常は見られないことから、異世界の魔物はドレックに潜伏している可能性があるということで、今回、私が調査することになったのです。

今回初めて町を調査することもあって、調査期間をどうするかが少し問題になりましたが、とりあえず調査期間は1週間として、魔物の発見にいたらなかった場合は継続するという方向で落ち着きました。


現世に降りる準備を終えた私はナスハ様に時空の歪みがあったところまで送ってもらいます。


『では、クエフリーネさん、よろしくお願いします』


ナスハ様はそう言われて神界に戻られました。


「よし、ドレックに向かうとするわ」


私は自分に気合いを入れてドレックに向かうために移動を開始しました。

時空の歪みがあったこの場所はドレックの東側にある森の奥で、ここから街道まではおよそ2時間かかるということですが、私の足なら1時間と少しで街道に出ることが出来ると思います。


しばらく街道に向けて森の中を移動しますがあまり魔物の気配は感じられず、いてもホーンラビットやフォレストウルフなどの弱い魔物や動物しかいません。

この森はあまり魔物がおらず比較的安全な森のようで、周囲を警戒しつつも今の状況をあらためて振り返ります。


「よく考えたら1人って初めてだわ」


私がこの世界に来てから1年ほど経ちますが、訓練期間は常にロカと一緒だったし、戦乙女として活動するようになってからも、必ず誰かと一緒に行動していて1人になったことはありませんでした。

だから、今回の活動が初めて1人で行動することになるのです。


「それにしても、1週間で発見できるかしら」


私はこれからのことを考えて少し不安になります。

町に潜伏しているであろう魔物を発見出来るかどうかもですが、初めて1人で行動するってことは相談する相手もいないからです。

最悪、ロカに念話で相談するっていう方法もあるけど、今のロカにあまり迷惑はかけれません。


私が調査することになったドレックはレイドック帝国の南西部にあり、西と南は高い山脈に囲まれたいわゆる辺境の町です。

町の人口はおよそ2000人で主な産業が農業だけの比較的小さな町ですが、人々の出入りが少ないなんてことはありません。

主に穀物を扱う商人の出入りは多く、それにともない冒険者の出入りも多いのです。


そんなことを考えながら1時間ほど移動すると、前方に冒険者らしき女性を発見しました。

彼女はどうやら薬草を採っているみたいですが、近くに寄って来ているホーンラビットに気がついていないみたいです。


ホーンラビットは魔物の1種ですが、草食のため基本的に襲われることはありません。

しかし、縄張り意識が強いため、縄張りに入っていると角で攻撃されることがあります。


薬草を採っている彼女はホーンラビットの縄張りに入ってしまっているみたいですが、薬草を採ることに夢中になっているようでした。

私は彼女を見て、自分にも身に覚えがあるので少しおかしくなりました。

あの時はロカに『新人冒険者にはよくあることだから』と言われたのを思い出します。


今の彼女の様子から、きっと新人冒険者なのだろうと推測出来ました。

ここで彼女がホーンラビットに攻撃されても死ぬようなことはありませんが、このまま見ぬ振りをするのもアレだと思い、ホーンラビットをストーンブレットで仕留めてから声をかけます。


「薬草採りに夢中になっていると危ないわよ」


『えっ?あぅ・・・』


私の声に反応した彼女は、私と仕留めたホーンラビットを何度も見て慌てています。


「もっと周囲を警戒しておかないと痛い目に合うわよ」


『あ、はい、あ、ありがとう、ございます』


私がそう言うと彼女はどもりながらもお礼を言いました。

とりあえず彼女を助けたけど特に関わるつもりは無いので一言かけて移動します。


「じゃあね」


『あ、あのっ!』


そう声をかけて移動しようとすると彼女に声をかけられました。

私は彼女の意図がわからず聞き返します。


「なに?」


『あの、ホーンラビットを、お忘れです・・・』


そういえばそうでした。

ホーンラビットは角が素材として使えるし、肉も食用に適しているので冒険者ギルドに持っていけば多少はお金になるのです。

冒険者を装っている私がホーンラビットを持っていかなかったので彼女は忘れたと思ったようです。


しかし、私は冒険者ギルドには用事は無いしホーンラビットを持っていく必要性はありません。

だからホーンラビットは彼女にあげることにしました。


「必要無いから好きにしていいわ」


『いや、でも、あの・・・』


「いいのいいの、じゃあね」


私がそう言って移動し始めると、彼女は慌てて追いかけて来て、私の前まで来て言いました。


『じゃあ、名前を教えてください!』


さきほどの様子と違い、彼女ははっきりした口調で私の名前を聞いてきました。

このままだといつドレックに向かえるかわからないので私は彼女に名前を教えることにしました。


「クエフリーネよ」


『私、ラミィっていいます。クエフリーネさんはドレックに向かわれるんですよね?私もドレックに戻るんでちょっとだけ待ってください、すぐに準備してしまいます』


私が名のると彼女は早口でそう言って荷物をまとめだしました。

私が呆気にとられているうちに、彼女、ラミィは準備を終えて戻ってきました。


『さぁ、クエフリーネさん、ドレックに向かいましょう!』


そう言ってラミィは力強く提案しますが、冷静になった私はラミィの提案に反論します。


「いや、別に一緒に向かう必要はないよね?」


『行き先は一緒なんですから一緒のほうがいいですよ!』


「いや、一緒に行く意味が・・・」


『さぁ、行きますよ!』


私がラミィの勢いに戸惑っていると、ラミィは私の手をとり移動し始めたので、あきらめて移動することにしました。

どのみちドレックに向かうから一緒に移動しても問題は無いし、ドレックについたらラミィは冒険者ギルドに向かうだろうからその時に別れればいいと考えたのです。


とりあえずラミィと一緒に移動して森から出ると街道沿いにドレックに向かいます。

ドレックまではここからおよそ1時間かかるとラミィは言いましたが、ラミィの歩くペースを考えると成人男性で30分といったところだと思われます。


私はペースを合わせて歩きながらラミィの話を聞きます。

ラミィは今年成人して仕事をすることになったが、農業をするのが嫌で昨日冒険者ギルドに登録したばかりだそうです。

昨日の今日で常設依頼の薬草採取のために森の中で薬草を採っていて私と出会ったということでした。


『最初に声をかけられた時は驚いて頭の中がまっ白になっちゃったけど、助けてくれたクエフリーネさんが恩をきせるでもなく去ろうとされてピンときました!この出会いは女神様のお導きだって。だから私はクエフリーネさんについていくことにしました!』


私はラミィの話を聞いて困惑しました。

今日たまたま会った私にラミィはついて来ると言うのです。


(ラミィを助けたのはいいとして、その後の対応をミスったわ)


私はラミィを助けた後、さっさと移動してしまえば良かったと後悔しました。

とにかく、私についてこられるといろいろと面倒なので連れては行けない旨を伝えます。


「ラミィには悪いけど私は仕事でドレックに来てるから、あなたがついてくるといろいろとマズいの。だからあきらめてくれる?」


私がそう言うとラミィは少し考えてから言います。


『じゃあ、ドレックでの仕事が終わったら連れて行ってください。それなら大丈夫ですよね?』


(あきらめるっていう選択肢は無いのね・・・)


私はどういえばラミィがあきらめてくれるか考えます。

こんな時、ロカならどうするかって考えるとある方法が思いつきました。

私はギルドカードを出してラミィに見せ、連れて行けない理由を説明します。


「私はA級だから危険な依頼も受けるわ。場合によってはラミィを助けることは出来なくなるから、自分で身を守るすべを持たないラミィは連れては行けないのよ」


私がそう説明するとラミィは泣きそうになりながら返事を返してきます。


『やっぱり、素人みたいな私は連れていけませんよね。これといった特技も無い私がついて行っても迷惑なだけですよね?』


今にも泣きそうなラミィの言葉を聞いて同情しそうになりますが、ここはラミィのためにも心を鬼にしてはっきり言います。


「ラミィは足手まといにしかならないわ」


私がそうこたえると、ラミィは泣きながらドレックに向かって走っていきました。

そんな様子を見て私はつい想いが口から出ました。


「慕ってくれる子を突き放すのがこんなに苦しいなんて思わなかった・・・」


私は重い気持ちのままドレックに向かって歩きだしました。

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