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異世界で真実の愛を  作者: ぬっすぃ~
第二章 戦乙女として
62/113

62.料理

天界で経過観察することになった私は息抜きも兼ねて料理をすることにしました。

ロカが日本米と醤油を準備してくれたので、なにか丼ものを作ってみようと思い思案します。


食材的にはオークが豚肉として使えるからトンカツならぬオークカツを作ろうと思ったけど、この世界には油で揚げるという調理方法は存在していないため大量の油を準備する必要があります。


私はそこでオークの脂肪からラードを作ることにしました。

前世ではラードを作ったことはありませんが、知識としてラードの作り方は知っていたので特に問題はありません。


私がラードを作るためにオークの脂肪を火にかけているとロカが様子を見にきました。


『リーネ、調子はどう?』


「今のところ特に違和感とかは無いわ」


『なにか少しでも違和感があったらすぐに言うのよ』


「ええ、わかってるわ」


ロカは鍋が気になるみたいで、そうやり取りする間も鍋をチラチラと見ています。

ロカは料理が出来ないって言っていたし、私がしていることに興味があるみたいです。


『ところで、もう料理を始めてるの?』


「いいえ、まだよ」


私がそうこたえるとロカは不思議そうに聞いてきます。


『えっ?じゃあ、今しているのはなに?』


「料理に必要な油を作っているのよ」


『これだけの油を全部使うの?』


「ええ、この油を使って食材を揚げるの」


『食材を揚げる?焼くのとは違うのよね?』


私は分離したオークの油身をざるで濾しつつ説明を続けます。


「揚げるっていうのは、この油の温度を上げて油の熱で調理する方法のことよ」


私がそう説明したけれど、ロカはいまいち理解出来なかったみたいで聞いてきます。


『ごめん、リーネ。もう少し詳しく説明してくれる?』


「まあ、見たほうが早いと思うからちょっと見てて」


私はそう言って油の温度を上げていき、あらかじめ適当な大きさに切ってあったオーク肉に小麦粉、溶き卵、パン粉をつけて揚げる準備をします。

オークカツの準備が出来たので油の温度をパン粉で確認してみると適温だったのでオークカツを油に投入して揚げはじめました。


「こんな感じで食材を油の中に入れて加熱する方法が揚げるっていう調理方法になるわ」


『ふ~ん、この方法って手間がかかってるけど、やっぱり焼くのとは違うのよね?』


「そうね、大きな違いは食感かな?油で揚げると表面がサクって感じになるわよ」


『表面がサクって言われてもいまいちわからないんだけど?』


「まあ、食べてみればわかるから」


そうこうしているうちに揚げているオークカツがほんのりと色づきだしたので油から上げてしっかり油をきります。

その間に油の温度を上げていき2度揚げの準備をします。


『出来たの?』


「いいえ、まだよ。油の温度を上げてもう一度揚げるの」


私がそうこたえるとロカは不思議そうに質問を返してきます。


『わざわざ温度を変えて2回も揚げるの?』


「そうしたほうがよりおいしくなるのよ」


私はそうこたえつつ油の温度を確認して2度揚げし始めます。


『けっこう手の込んだ料理なのね、私には絶対に無理よ』


私が料理をしているところを見てロカはそう感想を言いましたが、私としては揚げ物なんてたいして手間のかかる料理ではないのです。

下準備をして揚げるだけなのでどちらかと言えば楽な料理って思っていますが、料理が出来ないロカからすると手の込んだ料理だと思ってしまうようでした。


「揚げ物って慣れたら楽な料理なのよ」


私がそう言うとロカは驚いた表情をしました。


『これで楽って冗談よね?』


「本当よ。出汁をとる必要も無いし常に手をかける必要も無いから、私が作る料理の中では揚げ物は楽な料理だわ」


私はきつね色に揚がったオークカツを油から上げつつそうこたえます。

揚げ上がったオークカツの油をしっかりときってから包丁を入れると、サクッという小気味よい音がしました。

久しぶりに揚げ物をしたがちゃんと揚げることが出来たみたいです。


私はオークカツを一口サイズに切り分けてフォークに刺しロカに差し出すと、ロカが固まっていました。

私が揚げ物は楽だと言ったことに驚いて固まっていたみたいです。


「ロカ?」


『えっ?なにリーネ?』


「試食してみて、熱いから気をつけてね」


私がそう言うと我に返ったロカはフォークのオークカツを受け取りました。

私もオークカツを取り試食すると、サクッという音とともに香ばしい香りが口の中に広がります。

私が久しぶりのトンカツならぬオークカツの余韻に浸っているとロカが声を上げました。


『うわっ?!なにこれ?』


「どう?おいしい?」


『ええ、噛んだ時のサクっていう食感は初めてだし、香りも良いし凄くおいしいよ!』


ロカは初めて食べたオークカツのことを気に入ったのか、そういうと切り分けてあるオークカツを次々に食べていきます。

そんなロカの嬉しそうな顔を見て、私は料理をすることも好きだけど、自分が作った料理を食べた人が喜んでいるのが嬉しいとあらためて思いました。


『ねぇ、リーネ、この料理をエリザに教えてくれない?そうすれば食堂のメニューになるでしょ?』


私がそんなことを思っているとロカが意外なお願いをしてきました。

ロカはこれまで食事にたいしてあまり関心が無く、不味くなければそれでいいって感じで食べる物にそれほどこだわりはみせませんでした。

そんなロカがオークカツを食堂のメニューにしたいと言ってきたのです。


「エリザリーナさんに教えるのはいいけど、そんなにオークカツが気にいったの?」


『ええ、いままでは焼いた肉か煮込んだ肉しか食べたことがなかったから特にこだわりは無かったけど、このオークカツは凄く気に入ったよ。リーネが作ってるところを見ていても私には作れそうにないから食堂で食べれるようにしたいのよ』


「へぇ~ロカは食事に興味が無いって思っていたから意外だわ」


『しょうがないじゃない。私が人族だったころから料理はほとんど発展していないのよ』


そう言われるとロカが食事に興味が無いのも納得出来てしまう。

ロカが人族だったのは1500年以上前で、その時から料理が代わり映えしないのだったら、ロカが言うように興味が無くなってもしょうがないと思ってしまった。


「じゃあ、私が教えられる簡単な料理をいくつかエリザリーナさんに教えてあげることにするわ」


『ありがとう、リーネ。これで少しは食事も楽しみになるよ』


そんな訳で私は食堂のメニュー改革をすることになりました。


ロカが戻っていった後、私は当初の目的であるオークカツ丼を作ることにしました。

カツ丼を作るのに必要になってくるのがだしですが、和食で使う昆布やかつお節はありませんのでなにかで代用する必要があります。


そこで私は、昆布の代用にはうま味成分が昆布と同じトマトを、鰹節の変わりには煮干しを使用してだしをとりました。

トマトでだしをとったのは初めてでしたが、醤油を合わせるとそれほど違和感はありません。

みりんの代用は白ワインです。


しばらく試行錯誤して納得がいく味の割り下が出来たのでオークカツを揚げていきます。

揚げ上がったオークカツは一度ストレージにしまっていき、準備したオークカツを全て揚げてしまいます。

お米はすでに炊いてストレージにしまってあるので後はオークカツを卵でとじるだけです。


さきほど作った割り下に玉ねぎを投入して一煮立ちさせ、そこへオークカツを投入。

溶き卵を2回に分けて回し入れて最後に数十秒フタをして溶き卵にちゃんと火をとおす。

本当なら溶き卵は半熟にしたいが、この世界の卵はしっかり加熱しないと危険なのでそこはあきらめました。


卵溶き卵にしっかり火がとおったのを確認したらスープ皿に炊いたお米を盛り、その上からオークカツとじを乗せればオークカツ丼の完成。


すぐにでも試食をしたいけど、準備した10食分を先に作ってしまうことにして次々にオークカツ丼を作っていく。

最後に少しお米が足りなくなってしまったのでその分を試食するとして9食分のオークカツ丼が出来ました。


準備した分の調理が終わったのであらためてオークカツ丼を試食します。


「いろいろと代用して作ったけどちゃんとカツ丼になってるわ」


私はオークカツ丼の出来に満足します。

この世界に来てからちゃんとした料理をしたのは初めてでしたが凄く楽しい時間を過ごすことが出来ました。

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