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異世界で真実の愛を  作者: ぬっすぃ~
第二章 戦乙女として
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61.決意

テラ様との話を終えて天界に戻った私は気になったことをロカに聞きます。


「ロカ、ちょっと聞きたいことがいくつかあるんだけどいいかな?」


『どうしてテラ様に聞かなかったのよ』


「さすがにテラ様に質問攻めするのは私でもどうかと思うわよ」


『それって私にならいいと思ってるってことじゃない』


ロカはあきれるようにそう言い、言葉を続けます。


『まあ、いいよ。それでなにが聞きたいの?』


「いろいろあるけど、まずはディアのことかな?」


『聖女のこと?』


私がそう言うとロカは意外そうに聞き返してきました。


「ええ、ディアのことだから私のことを心配しているんじゃないかって思ったの」


私のことをお姉様と慕ってくれているディアのことだから、魔王との戦いで強制送還されてしまった私のことを心配しているだろうと思ったのです。


『彼女にはテラ様が神託をくだされたから今は大丈夫よ』


私はロカの返答を聞いて疑問が残ります。


「今は?」


『ええ、彼女はリーネが強制送還されたことに凄くショックを受けたみたいでふさぎ込んでしまっていたの。どうもリーネが死んでしまったと思っていたみたいなのよ』


私はロカの説明を聞いて強制送還された時のことを考えました。

あの時のことをディアの視点で考えると、私が空間の裂け目からの攻撃を受けて消えてしまったように見えたのだろう。

おそらく私への呼びかけもおこなっただろうけど、私は意識を失っていたからディアの呼びかけに応じることは出来なかった。

そう考えるとディアが私のことを死んでしまったと思ってもしょうがないのです。


「ディアをずいぶんと悲しませてしまったわ」


『それでテラ様が、リーネが妹のように気にかけている彼女のことを見かねて神託をくだされたのよ』


「私のせいでテラ様の手も煩わせることになってしまったのね」


あの時に私がもう少しうまく対処出来ていれば、ディアを悲しませることもテラ様の手を煩わせることも無かったと考えると申し訳なく思います。


『今回の件は私達も初めてだったからしょうがないところもあるのよ。魔王が自分の世界の神の眷属を召喚するなんて誰も想像していなかったんだから』


ロカにそう言われて私は気がつきました。


「ソドン村の人々は異世界の神の眷属を召喚するための生け贄にされたの?」


たとえ魔王と言えども異世界から神の眷属を召喚することは簡単に出来ることではありません。

そう考えるとソドン村に人々の死体が見あたらなかった理由はそれしか考えられませんでした。

私がそう聞くとロカは苦い顔をしてこたえます。


『ええ、ソドン村の人々の魂は召喚に使われて消滅してしまったのよ』


ロカの言葉を聞いて私は憤りを感じます。

この世界において、人々は死んでも輪廻転生の流れに乗り新たな生を授かります。

しかし魔王は異世界の神の眷属を召喚するために人々の魂までも手にかけたのです。


私はこれまでに多くの魔物を討伐してきました。

でもそれは、戦乙女になったから戦乙女の使命としておこなってきただけで、戦乙女の使命がなければ行動していたかは疑問が残ります。


しかし今回の魔王の悪行を知り、はじめて自分から魔物を討伐する決意をします。


「ロカ、私はこれまで異世界の魔物にそれほど危機感を感じていなかったわ。この世界を守るために魔物を討伐していればそれでいいと思っていたのよ。でも、それは間違いだった。私はこの世界とこの世界の人々を守りたいと初めて思ったわ」


私にはこの世界を守るための力があるけど、今まで人々のためにこの力を使うことは考えもしなかった。

勇者召喚や戦乙女召喚の建て前に拘らなければソドン村の人々を助けることが出来たかもしれない。

私はそんな想いが込み上げてきます。


『リーネにそう言ってもらえると嬉しいけど、無理をしてはダメよ。今回の件で戦乙女の活動の見直しも必要になるでしょうし、今は焦らないで自分のことを大事にして』


私はロカにそう言われて思い出します。


「ロカ、私の経過観察ってどれぐらい様子をみるの?」


テラ様に経過観察をすると言われたけどどれぐらいの期間様子をみるのかは聞いていませんでした。


『リーネの鎧の調査もあるからまだはっきりとした期間は決まってないよ』


「えっ?私の鎧の調査?」


私はロカの返事が意外でつい聞き返してしまいました。


『ええ、そうよ。リーネの鎧は原形を留めないぐらい破壊されてしまったの。だから力の残滓を調べてリーネがどのような攻撃を受けたか調査しているのよ』


「えっ?でも戦乙女の鎧って不壊特性がついてるはずじゃ?」


『戦乙女の鎧には不壊特性がついているけど、女神様達やテラ様の眷属である私達ぐらいの力があれば破壊することは可能なの。だからどのような力で破壊されたのか調査しているのよ』


私はあらためてロカの説明を聞き自分が受けた攻撃が危険なものだったことを再認識します。


「私って意外と運がいいのかもね」


『えっ?』


「だってそうでしょ?戦乙女の鎧が破壊されるような攻撃を受けたけど、テラ様のおかげもあって今はなんともないのよ」


私がそう言うとロカは複雑そうな顔しました。


『それは経過観察の結果次第よ。本当にまだわかっていないことが多いから楽観はしないで』


「ん、わかったわ」


『じゃあ、他になにか聞きたいことはある?』


一番気になっていたディアのことや魔王のことが聞けたので他には思いつきません。


「聞きたいことはそれぐらいかな?ありがとう、ロカ」


『そう?じゃあ、これを渡しておくよ』


ロカはそう言って見たことのある袋を取り出しました。

それは魔王討伐前に日本米をもらった時と同じ袋でした。


『それから、これもよ』


ロカはお米に続いてなにかの入った壺を取り出します。

ロカが壺を取り出した時に私には懐かしいにおいがしました。


「それって、もしかして・・・」


『そう、醤油よ。日本食には必要なんでしょ?』


私は少々戸惑いました。

ロカが私のためにお米と醤油を準備してくれたのは嬉しいのですが、テラ様の手を煩わせてしまったのではないかと思ったのです。


「ロカ、テラ様にお願いしたの?」


『前に日本米を渡した時に説明したでしょ?祐也さんに日本食についての意見が欲しいって』


「あれって建て前じゃなかったの?」


『私は建て前だなんて一言も言ってないじゃない。ただ、世界の食事事情を改善させるのに、日本人の転生者に協力してもらうようにってテラ様に提案しただけよ』


ロカの言葉を聞いて、私はロカの気づかいに嬉しく思いました。

ロカはいつでも私のことを気にかけてくれているのです。


「ありがとう、ロカ」


『世界のためにしたことだからリーネがお礼を言う必要はないよ』


ロカは笑顔でそう言いました。

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