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異世界で真実の愛を  作者: ぬっすぃ~
第二章 戦乙女として
60/113

60.代償

私が目を覚ますと、そこは自室のベットの上のようで、この半年で見慣れた天井が見えました。


『リーネ!よかった、ちゃんと意識を取り戻せたのね』


すると傍らからロカの声が聞こえてきました。


(あれ?私ってどうして自室にいるの?)


私は状況がわからずにロカのほうを見ると、ロカは涙を流しながら私のことを見ていました。


(ロカが涙を流しているなんて、初めてみるかも)


私がそんなことを考えているとロカが声をかけてきます。


『リーネ、大丈夫?私のことはわかる?』


(えっ?私のことって、ロカ、だよね?)


私はその言葉でますます混乱します。

ロカの質問の意図がまったくわからないのです。


『リーネ、私の名前は?』


「えっ?ロカ、だよね?」


『じゃあ、ここがどこかわかる?』


「えっ?私の自室かな?」


『じゃあ、自分のことは言える?』


「自分のこと?私はリーネよ」


『立場と名前をちゃんと言って』


「え~と、戦乙女のクエフリーネ、これでいい?」


『じゃあ・・・』


「ちょっと待って、ロカの質問の意図がまったくわからないんだけど?」


私はひとまずロカの質問を止めました。

ロカはなぜか聞かなくてもいいようなことを次々に聞いてきて、ロカの意図がまったくわからないから理由を聞きたかったのです。


『じゃあ、質問を変えるよ』


「いやいや、さっきから質問ばかりしてる理由を教えてよ」


『後2つの質問にこたえてくれたら教えてあげるよ』


「え~?!」


本当に意味がわかりません。

どうしてロカがそんな質問をくり返すのか見当もつきませんでした。


『ここで目覚める前の記憶はなに?』


「え~と、魔王と戦っていて、空間の裂け目からなにかが出てきそうだったから攻撃したら私も攻撃を受けちゃったって感じ?」


『一緒に戦っていた人の名前は?』


「ディア、祐也、ルイナ、ロイン、ガーランドの5人よ」


私が2つの質問にこたえるとロカは小さくため息をついて言います。


『ふぅ、記憶は大丈夫そうね』


「だから、ちゃんと教えてよ」


私があらためて理由を教えてくれるように言うとロカは真剣な表情で言います。


『じゃあ、テラ様のところに移動してからちゃんと教えてあげるから』


ロカはそう言うと私の手を掴み神界に跳躍してテラ様の前まで私を連れていきます。


『リーネ、よかったわ。ちゃんと意識を取り戻せたのね』


テラ様は私のことを見るなりロカと同じようなことを言われました。


「テラ様、詳しい説明をしていただかないとわけがわからないです」


『そうね、ではリーネの身に起こったことを説明します。いろいろと疑問がわくと思いますが、まずは最後まで聞いてください』


テラ様はそう言われて私の身に起こったことを説明されます。


『リーネが討伐に向かった魔王は自分の世界の神の眷属、魔神族を召喚していました。魔神族とはあなた達と同じような邪神の眷属です』


(あの空間の裂け目にいたのが魔神族ってことね)


『そして、魔神族は魂に直接ダメージをあたえるすべを持っています。リーネが受けた攻撃も魂に直接ダメージをあたえる攻撃だったようです』


(えっ?私は魂に直接攻撃を受けたってこと?)


『その攻撃を受けたリーネは意識を失い天界に強制送還されてきたのです。強制送還されてきたリーネは魂に損傷を伴っていました』


(じゃあ、私の魂には損傷があるってこと?)


『リーネの魂は私が損傷を回復させる処置をおこないましたが、なにぶん異世界の眷属の攻撃ですので、どの程度魂が回復しているかは未知数でした』


(テラ様に回復の処置はしていただいたけど、完全に回復しているかはわからないってことか)


『リーネが天界に強制送還されてきて、私はすぐに処置をおこないましたが、それから7日間リーネは意識を取り戻しませんでした。また、魂の損傷による影響がどの程度あるのかもわかりませんでした』


(それで、ロカのあの質問攻めになったわけか。それにしても7日間も意識が無かったなんて実感がないわ)


『ですから、しばらくは天界で経過観察をおこないます。私も初めてのケースですので慎重に様子を見ようと思います』


(しばらく経過観察か、そういえば祐也達はどうなったんだろう?)


私は祐也達のことが気になり、質問の許可を取ります。


「テラ様、質問をしてもよろしいでしょうか?」


『はい、ひとまず説明するべきことは説明しましたので質問をしてもいいですよ』


「ありがとうございます、では祐也達と魔王がどうなったか教えていただけますか?」


『祐也さん達は無事に魔王を討伐することが出来ました。召喚された魔神族はリーネの攻撃で時空の彼方へと追いやられたようです』


私は祐也達が無事に魔王を討伐出来たと聞いて安堵しました。

私は魔神族の攻撃を受けて一時的に危ない状態だったみたいだけど今はなんともないし、祐也達も魔王を討伐出来ているから今回の戦乙女召喚も面目を保てたと考えると、すべてうまくいったという気持ちになります。


「では、結果としては勇者召喚も戦乙女召喚もうまくいったと考えていいのですね」


私がそうこたえるとテラ様は複雑な表情をされて言われます。


『それが、1つだけ問題があります』


「問題ですか?」


私は少し疑問がわきました。

魔王を討伐したことで勇者召喚も戦乙女召喚も問題はないはずなのに、テラ様は問題があると言われたからです。


『それは祐也さんのことです。祐也さんは現世をこの世界で過ごしてもらい、来世は記憶を引き継いで転生していただく予定でした。これはリーネも理解していますよね』


テラ様にそう言われて私は頷きます。


『ところがかんじんの祐也さんが、転生する時は記憶の引き継ぎをしないで欲しいと言われたのです。リーネのことは祐也さんに話すことは出来ませんので、どのように説明して記憶を引き継ぐことを了承してもらうかが問題になっています』


私はテラ様の説明を聞いて問題になる理由がわかりませんでした。


「それなら祐也の希望どおりに記憶を引き継がなければ問題はないと思います」


私がそう言うとテラ様とロカは驚いたような表情をされました。


(あれ?私なにか変なこと言ったかな?祐也がそう希望しているなら希望どおりにしてあげれば問題ないはずよね?)


『リーネ、あなた、まさか・・・』


「ロカ、私がどうかした?」


ロカがなぜか動揺しているみたいですが私にはその理由がわかりません。


『リーネ、祐也さんはあなたとどういう関係?』


私はロカの質問の意図がわかりませんでしたが正直にこたえます。


「祐也は私の前世の幼なじみで、この世界の勇者で魔王討伐に協力した戦友?って感じかな」


『本当にそれだけ?』


「本当にそれだけよ。他になにかある?」


『じゃあ、リーネが転生せずに戦乙女になっているのはどういうこと?』


またロカが意図のわからない質問をしてきますが、これも経過観察の一環だろうと考えてこたえます。


「私が前世で自殺してしまっていたから転生するために不都合が生じて、テラ様のはからいで戦乙女として転生するための善行をおこなっているってことでしょ?」


『本当にそれだけ?他になかった?』


私はロカにそう言われて他に理由がなかったか考えますが他の理由はまったく思いつきません。


「よく考えたけど他の理由は思いつかないわ」


私がそうこたえるとロカだけでなくテラ様も悲しそうな表情をされました。


『わかりました。ではリーネには天界で経過観察をおこなってもらいます』


こうして私は天界で経過観察をおこなうことになりました。

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