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異世界で真実の愛を  作者: ぬっすぃ~
第二章 戦乙女として
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58.ソドン村

早めの昼食を取った私達はソドン村に向けて移動を開始しました。

ソドン村までの街道は比較的開けているため、奇襲の可能性は少ないですが、相手が魔王の可能性が高いので慎重に移動します。


ソドン村に向けておよそ30分移動すると、街道がかなり荒れていて、これ以上は馬車での移動が難しくなりました。

私達は仕方なく徒歩で移動することにします。


私達は前衛にガーランドとロイン、中衛に祐也とルイナ、後衛が私とディアという隊列で進みます。

移動時は斥候のロインが前を歩き、戦闘時はロインと祐也が入れ代わるということです。


私は後衛で、なおかつ後方からの奇襲の可能性が少ないので、あらかじめ戦乙女の弓を取り出しておきました。

私が戦闘する準備をしているとディアが声をかけてきます。


『リーネお姉様、あの・・・』


ディアの声を聞いて私がディアのほうを見ると、ディアは少し固い表情をしていました。


(ディアは緊張しているみたいね)


私はディアの緊張感が和らぐように、頭を優しく撫でながら言います。


〔大丈夫、勇者と戦乙女がいるのよ、魔王なんて目じゃないわ〕


私がそう言うと、ディアは笑顔を見せて頷きました。


しばらく移動していると前方にソドン村の入り口と思われる物が見えてきます。

村の周りには木製の柵があったようですが、今は木材が散らばっているようにしか見えず、入り口も原形を留めていません。

そんな村の様子を見てガーランドがなんでもないように言います。


『こりゃぁダメだな、たぶん1人も生きてねぇぞ』


私はガーランドの言葉を聞いて憤りを感じますが、よく考えると村が魔物に襲われることはこの世界では普通にあることなのです。

村の状態を考えると、ガーランドの言うとおり生存者はいないでしょう。


私達はこのまま村に近づくのは危険と判断して、今後の方針と魔王と対敵した時にどうするか相談します。


私達は相談して、まずはソドン村の様子を調べることになりました。

ソドン村に向かうのはロインと私です。

普段はロインが1人でおこなっていますが、状況が悪いので私もついていくことにしました。


もう1つ、魔王と対敵した時ですが、ここで私がディアに提案したことが採用されて、ディアは祐也達にプロテクションをかけた後、聖域を発動して魔王を弱体化させることになりました。

祐也には魔王と対峙してもらい、ロイン、ガーランド、ルイナには上位種の対処と祐也の援護に専念してもらいます。

その他のザコの対処とケガの回復が私の担当です。


今後の方針が決まったので、私とロインはソドン村に向かいます。

私達は隠密行動を取りながらソドン村に向かい、崩れた柵の間から村の中に入っていきました。

村の中はほとんどの家屋が原形を留めておらず、襲撃の激しさを物語っていて、地面のあちこちに血の痕跡が見られます。


(これじゃ生存者は見つかりそうにないか。それにしても死体が全く見られないわ)


村の中は酷いありさまで血の痕跡も多く見られるのに、人々の死体が1体も見つからないのです。

オーガは人を喰らうこともありますが、ある意味ここまで綺麗に死体を喰うのかと思うと疑問がわきます。


私はこの疑問をロインと相談しようとして気がつきます。

今の私はディアと念話でしか話せないのでした。

私はいろいろと思案しましたが、ジェスチャーで伝えるしかないとあきらめました。

戦乙女がジェスチャーなんかするところを人々に見せてもいいのかとは思いましたが、他に方法が思いつきません。


私は意を決してロインを血痕の残るところまで連れていこうとして手を掴みます。


(もうっ、話せないって本当に不便だわ)


私が心の中で強くそう思っているとロインが小さく声を上げました。


『えっ?今のは、戦乙女様ですか?』


(えっ?)


私はロインの言葉に驚きます。

そして、ある可能性に気がつきました。


〔ロイン、私の声が聞こえる?〕


『はい聞こえます。ですが、これはいったい・・・』


私がディアと話すように念話でロインに話しかけるとロインが返事をしてくれました。

なぜかはわかりませんが私の念話がロインに聞こえているようです。


〔これは私の念話です。これで不便なく話が出来ますね〕


私がロインにそうこたえつつステータスを確認すると、眷属スキルに接触念話というスキルがありました。


(接触念話か、どうしてこれを取得出来たのかはわからないけど、今はありがたいわ)


私はひとまず取得したことは棚上げして、さきほどの疑問をロインに伝えます。


〔ロイン、あまりにも人々の死体が無さ過ぎると思わない?〕


『そうですね、オーガは人肉を食べますが死体の痕跡が全く無いのは異常でしょう。普通であれば骨などがある程度は残っているはずです』


私がそう聞くとロインも私と同じ見解のようでした。

人々の死体が全く残っていない理由はわかりませんが、これはあきらかに異常であり、魔王の関与が疑われます。

私がそう思案しているとロインに声をかけられます。


『戦乙女様、少しよろしいでしょうか?』


〔いいわ、なにかしら?〕


私がそうこたえるとロインはお礼を言ってから提案してきます。


『ありがとうございます。それでは私の考えをお伝えします。ソドン村の襲撃には魔王の関与が疑われ、人々の死体がみられない異常さから、これ以上の調査は危険と考えます。ですから、一度祐也様のもとに戻り今後の方針を再度相談したいと思います』


〔私もそう考えていました。これは罠の可能性も捨て切れませんので慎重に行動しましょう〕


私はそう言ってロインの考えに同意し、私達は一度祐也達のもとに戻ります。


祐也達のもとに戻った私達はソドン村の惨状を話し、魔王の関与が疑われることと、罠の可能性があることを伝えて今後の方針を再度相談します。

私達はいろいろな可能性を検討してどうするか思案していると、ろくに参加していなかったガーランドが言いました。


『魔王を倒すならいくしかねぇだろ』


私達はいろいろと相談していましたが、結局のところそれしか無かったのです。


私達は意を決してソドン村に向かうことにします。

ソドン村に向かう前に、再度魔王と対敵した時の行動を確認してからソドン村に向かいました。


私達はさきほど中に入ったところから村の中に入り、慎重に村の中を調べていきます。

このソドン村はおよそ100人の人々が生活をしていて、辺境ではあるがそれなりに活気がある村だったそうですが、今はそのおもかげもありません。


私達はしばらく村の中を調べていますが、やはり人々の死体は1体も見つかりませんでした。

村の異様な状況を見ながら中心部辺りまで来ると、突然、大きな咆哮が聞こえてどこからともなくオーガが現れました。


(やっぱり罠だったわね)


私はそう思いつつ、現れたオーガを戦乙女の弓で射抜いていきます。

戦力を温存するために祐也達には警戒だけしてもらい、私がオーガを倒していると村の奥から何者かの声が聞こえてきます。


『やっと勇者が来てくれたよ。これで僕も使命を果たせそうだ』


そう言ったのは身長が180cmぐらいのしっかりした体格の男性でした。

その男性は額から大きな角が生えていることを除けば人と変わらない容姿をしていました。


(この男が魔王だわ。やっぱり、鬼族かそれに準ずる種族だったわ)


私はこの男を鑑定して魔王と断定しました。

それは私がこの男を鑑定した時、隠蔽で弾かれたわけでもないのに何も情報が見れなかったからです。


こうして私達は魔王と相対することになりました。

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