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異世界で真実の愛を  作者: ぬっすぃ~
第二章 戦乙女として
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57.おにぎり

翌日、私は昨日のようにディアに呼ばれて現世に移動します。


〔おはよう、ディア。昨日はちゃんと眠れた?〕


『おはようございます、リーネお姉様。私はちゃんと眠れてます』


〔そう、ならよかったわ。今日はたいへんかもしれないからね〕


私は今日起こりえることを考えてそうこたえます。

今日はソドン村に到着する予定ですが、ソドン村が襲撃されていた場合、魔王と対敵する可能性が高いのです。

私の言葉を聞いてディアは少し不安そうに言います。


『魔王、のことですよね』


(ディアもちゃんと理解しているのね)


ディアも魔王と対敵する可能性があることを理解していて不安があるようでした。

だから私はディアが不安をとりのぞけるようにこたえます。


〔ええ、でも大丈夫、私がついているわ〕


『はい!』


私がそう言うとディアは嬉しそうに返事をしました。


(本当にディアって16歳とは思えないぐらいしっかりしているわ。私が16歳だった頃と比べるとヘコみそう)


私がそんなことを考えていると祐也達は移動し始めました。

私はすでに定位置になりつつある馬車の上に陣取り、気持ちを切り替えて魔王のことに集中します。


魔王は異世界の魔物なので詳細はわかりませんが、オーガを操っていることから鬼族やそれに類似する魔物だと思われます。

そう考えると魔王との戦いは魔法にも注意しなければなりません。

鬼族は身体能力が高いだけでなく、知性も比較的高いので魔法を使える可能性が高いのです。


(ディアの聖域でどれだけ魔王を弱体化させられるかしら)


私は魔王との戦いはディアがカギを握っていると考えていました。

ディアの聖域で魔王を弱体化させることと、プロテクションによる防御力の引き上げが戦闘を優位に進めるためには必要だからです。


私はそう考えて、ディアに魔力を回復させておくように提案します。


〔ディア、マジックポーションで魔力を回復させておいたほうがいいわ〕


『えっ、そう、ですね。やっぱり魔力を回復しておいたほうがいいですか?』


私がそう言うと、ディアは少しどもりながらそう返事を返してきます。

私はディアの反応を見て、マジックポーションを飲みたくないのがわかりました。


(マジックポーションは苦いからディアの気持ちはよくわかるわ)


〔ええ、魔力をちゃんと回復しておいて。魔王との戦闘ではディアの働きが重要になるわ〕


私がそう言うとディアは不思議そうに聞いてきます。


『私がですか?』


〔そうよ、魔王と戦闘になった場合、ディアには聖域を発動して維持してもらいたいの〕


『私が聖域を発動すると維持することしか出来ませんが、みなさんがケガをされた場合はどうしたらいいのでしょうか?』


〔祐也達のケガは私が治すわ。私は聖域が使えないからディアにしてもらわないとダメなの〕


『わかりました。リーネお姉様の言うとおりにします』


ディアは少し考えてそうこたえてくれました。


私達がそんな話をしている間も馬車は順調に進み、2時間ほど移動したところで街道やその周辺に異常がみられました。


『オーガが移動した形跡がありますね。街道の痛み方がおかしいですし、周辺にも足跡が見られます』


『やっぱ昨日襲撃してきたヤツらはこっちから移動して来やがったんだな』


『そうなるとソドン村は絶望的ね』


私達が危惧していたとおり、ソドン村はオーガに襲撃されているのが濃厚になってしまいました。

ここからソドン村まではおよそ1時間ほどで、この先は今以上に警戒して進まないと危険です。


そこで私は早めの昼食にすることをディアに提案して伝えてもらいます。


『そうですね。戦乙女様のおっしゃるとおり、早めに食事をしてから進むのが無難かと思われます』


私の提案を聞いたロインは同意するようにそう言い、祐也達も同意して早めの昼食をとることになりました。


私は軽い食事の用意をしてきていることを伝えてストレージから昨日作った物を出しました。


それは、おにぎりです。


昨日、天界に戻ってからロカにもらった日本のお米を炊いておにぎりを作っておいたのです。

本当ならいろんな具材の入ったおにぎりを作りたかったのですが、定番の梅干しやツナは準備出来なかったので、サケに似た魚の塩焼きと煮豚ならぬ煮オークの2種類だけです。


私がストレージからおにぎりを出すと予想どうり祐也が1番に反応します。


『それって、もしかしておにぎりか?』


祐也はそう言うと凄い勢いで私のそばまで来て、おにぎりを観察して言いました。


『これって日本米じゃないのか?』


(私が予想したとおりの反応で笑ってしまうわ)


私は祐也の反応があまりにも予想どおりだったため、おかしくて笑ってしまいそうになります。

そんな私に気づかずに祐也は必死に聞いてきます。


『なあ、なんで日本の米があるんだ?』


(ロカの予想も当たってるわ。祐也が日本のお米のことを聞いてくるって思ってないとあんな建て前は言わないものね)


私はそう思いながら、昨日ロカに聞いた建て前の理由を祐也に伝えてもらいます。


『じゃあ、今後は日本の米が食えるってことだな?』


建て前の理由を聞いた祐也は嬉しそうにそう言いました。

祐也の質問に対して私が頷くと祐也は『よっしゃ!』と大きな声で叫び、凄く嬉しそうにしています。


(前世でもあまり見たことがない笑顔で喜んでいるから本当に嬉しいのね)


私はそんな祐也の様子を見て、ロカに頭が下がる思いでした。


私がおにぎりを配り終えてから祐也の様子を見ると、祐也は目に涙に浮かべながら食べていました。

涙を浮かべているといっても辛い表情ではありませんので嬉し泣きでしょう。

そんな祐也を見て、私も嬉しく思いながら自分の作ったおにぎりを食べます。


(自分で作ったおにぎりを食べるなんて何年ぶりかしら?)


そういえば、長い間おにぎりなんて作ってなかったことに気がつきました。

前世のことを思い出していくと、祐也が剣道の大会に出場した時にお弁当を作ったことが思い出せます。


(今も昔も、私は祐也のためにおにぎりを作っているわ)


私と祐也の関係は前世と違い大きく変わってしまったけど、今も祐也のためにおにぎりを作っている私の気持ちは前世から変わらない。

そう思うと、祐也のこと、そして自分のことを少しは信じれる気がしました。

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