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異世界で真実の愛を  作者: ぬっすぃ~
第二章 戦乙女として
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53.お米の魔力

私の説明でダークエルフの認識をあらためた彼らは食事を再開しました。

私も落ち着いたので食事をしようと思い、ストレージからピラフを取り出して、さぁ食べようって時に今度は祐也が大声を上げました。


『おいっ!それ、米じゃないのか?!』


さきほどまで私がダークエルフだってみんなが騒いでいた時も、祐也は我関せずって感じで黙っていたのに、目ざとく米を見つけて騒ぐところは「やっぱり日本人だな~」って思ってしまいます。


『なあ、それ米だよな?』


私がそんなふうに思っていると、祐也は必死な形相で聞いてきました。

私は祐也にどう説明するか悩みましたが、もともと導入予定だったことを思い出し祐也にあげることにしました。

私が差し出すようにピラフを祐也の方に向けると、祐也は慌てて近づいてきます。


『もらっていいのか?』


祐也がそう聞いてきたので私が頷くと、祐也は強奪するようにピラフを受け取りました。

そしてスプーンでピラフをすくうと、つぶやくように言います。


『あぁ、米だ、日本米とは違うが、米は米だ』


祐也はそう言うとスプーンですくったピラフを感慨深く見ていました。


(気持ちはわかるけど、冷めないうちに食べなさいよ)


私がそう思っていると、祐也はスプーンのピラフを口にしました。

しっかりと味わうように時間をかけて食べた祐也はぽつりと口にします。


『懐かしい・・・燐子・・・』


私の耳にそんな言葉が聞こえてきて、祐也はとても寂しそうな顔をしていました。


そんな祐也を見て私は必死に涙をこらえます。


幸いなことにみんなは祐也の豹変ぶりを見て、祐也のほうを見ていたので私の表情の変化には気づいていませんでした。


(私はここにいるのに、祐也になにかをしてあげるどころか、名のることも出来ないなんて!)


私は祐也のそばにいるのに祐也を慰めるどころか、私だと名のることすら出来ない現状に苛立ちを覚えます。

祐也が私のことを想い苦しんでいるのに私は祐也を見ていることしか出来ません。


そんな祐也の様子を見て、みんなが言葉を発せずにいると、ルイナが祐也に声をかけました。


『そんなに辛いなら一度泣いてみたら?男が声に出して泣くなんて格好悪いと思ってるかもしれないけど、私は気にしないわよ』


ルイナの言葉を聞いた祐也は顔を引き締めてこたえます。


『俺は、泣かない』


『ほんとに強情ね』


祐也の言葉を聞いてルイナがあきれるように言っていたのを見て、私は祐也に対して申し訳ない気持ちがこみ上げてきます。


そして、私は初めて嫉妬しました。


ただ祐也に声をかけただけのルイナに嫉妬したのです。

私は嫉妬しながらも自分の心の狭さにあきれてしまいます。


(ただ声をかけただけのルイナに嫉妬するなんて思わなかった)


前世の私は祐也に依存していて、祐也も私のことを最優先してくれていました。

だから、祐也が私以外の女性といることは見たことが無かったし、嫉妬するようなことはありませんでした。

しかし、今の私は祐也と話すことさえ出来ないという状況のためか、ただ祐也と会話しているだけのルイナに嫉妬してしまいました。


私がそんなふうに自己嫌悪に陥っているうちに、祐也は気持ちを切り替えたのか、黙々とピラフを食べて完食していました。

そして、ピラフを完食した祐也は器とスプーンを私に差し出して言います。


『ありがとう、うまかったよ』


そう言って差し出された器とスプーンを私が受け取ると、祐也は続けるように言います。


『このあいだは当たるようなことを言って悪かった』


そう言った祐也の表情は、寂しげではあるが少し落ち着いたように感じました。

そんな祐也に対して、私は首を横に振り作り笑いをうかべることしか出来ませんでした。


そうこうしているうちにみんなは食事を終えて移動を再開することになりました。

私は再び馬車の上に陣取り、ぼんやりとさきほどのことを考えます。


私は祐也とは会話することが出来ない。

もちろん、私が転生者で燐子だと知られてはならない。

この制約がある状態で私が祐也にしてあげれることが無いか考えました。


(料理しかないか・・・)


私が1つだけ思いついたのは料理でした。

それも、ただの料理ではなく米を使った料理です。


しかし、米を使った料理と考えるとハードルが上がりました。

初めはおにぎりから試してみようかと思いましたが、よくよく考えると日本食はいろいろと疑惑を生みそうで怖かったのです。

日本食がダメとなるとチャーハンもラーメン屋などで馴染み深いので選択肢には入れれません。


(日本を連想させない米料理となると、後はパエリアとリゾットぐらいか・・・)


私がそんなふうに思案しているとディアが窓から顔を出して私を呼びました。


『リーネお姉様、ユーヤ様がお聞きしたいことがあるとおっしゃっています』


(えっ?)


私は少しだけ焦りました。

さきほどのやり取りで祐也になにか気づかれたのかと思いましたが、それならばその場で聞いているだろうと思い直し了承します。


〔いいわよ、なにかしら?〕


私がそうこたえると、ディアをとおして聞いた祐也が私を見て質問してきます。


『米はどうやったら手に入る?』


祐也は真剣な表情でそう言いました。


そんな祐也を見て私は少し気が紛れました。

戦乙女のことには気にもかけていなかったのに、戦乙女の私にお米のことを真剣に聞いてきたからです。


しかし、私は祐也の質問に対して返答に困ります。

確かに私はお米を持っていますが、入手方法は知りません。

そもそも、この世界に導入予定だったお米が予定どおりに導入されているかも知らないし、たとえ導入されていてもどこで入手出来るかも知らないのです。


そんなふうに私が思案していると祐也は表情を曇らせます。

私が思案しているのを見て、答えてもらえないと思ったようでした。

私はそんな祐也の様子を見て、知らないとは答えられず、ストレージから残っているお米を取り出して祐也に差し出します。


『えっ?いいのか?』


祐也は私が差し出したのがお米だとわかったようで、そう聞き返してきます。

私は頷くとディアに伝えてもらいます。


〔私の持っているのはこれだけ。入手方法は聞いておくわ〕


ディアにそう伝えてもらうと祐也は少し笑顔を見せてお礼を言います。


『すまん、ありがとう!』


その時の祐也の顔は、私が前世で見たことのある祐也の笑顔でした。


この世界で再会して初めて祐也の笑顔を見た私は、真剣にお米のことをテラ様に相談しようと思ったのでした。


その後の勇者パーティーの移動は、オーガの襲撃もなく順調に進み、今日の夜営予定地に到着することが出来ました。


私は一度天界に戻ることにしてディアに声をかけます。


〔ディア、私は一度天界に戻るから、明日の朝、移動の準備が出来たら呼んでもらえる?〕


『はい、リーネお姉様。今日はありがとうございました』


私がそう言うとディアは深々と頭を下げてそう答えてました。


〔じゃあ、また明日ね〕


私はそう言って天界へと跳びました。

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