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異世界で真実の愛を  作者: ぬっすぃ~
第二章 戦乙女として
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52.戦乙女の正体

祐也達に同行することにした私はとりあえず馬車の上に陣取りました。

祐也達が使用している馬車は6人掛けの小さな馬車で、体格の良いガーランドが装備を身につけていることもあって4人で乗ってもあまり余裕はなさそうだったからです。


最初はディアが一緒に乗ると言って聞きませんでしたが私が戦乙女の立場もあるからと言ってなっとくしてもらいました。


ちなみに御者はロインが担当するようです。


(ロインってこれまでの様子を見てると万能執事って感じがするわ)


私がそんなことを考えながら警戒していると、街道に隣接する森の中からオーガが向かってきているのが見えました。

このオーガが魔王の配下なのか野生の魔物なのかはわかりませんが、こちらを襲撃しようとしているのはあきらかです。

今のところオーガに気がついているのは私だけのようでしたのでディアに伝えます。


〔ディア〕


『はい、リーネお姉様、なんでしょうか?』


〔森の中からオーガが集まってきてるけど、気にせずに馬車を進めて〕


『えっ?はい、わかりました』


私はディアにそう言うと、戦乙女の弓を取り出して森の中にいるオーガを射抜いていきます。

速度を変えずにそのまま進む馬車の上から森の中にいるオーガを射抜いていると、ちょっとしたやぶさめのような気分です。


私がオーガを射抜いているとガーランドは興味があったのか、馬車の窓から身を乗り出して外をうかがっています。

ガーランドの横ではディアが私のほうを見て『リーネお姉様、格好良いです』とつぶやいていました。


私が10体ほどオーガを倒したところでオーガは見えなくなったので、そのことをディアに伝えます。


〔ひとまずオーガは見えなくなったわ〕


『ありがとうございます、リーネお姉様』


私がそう言うと、ディアはお礼を言ってくれました。


『それにしても、リーネお姉様は私達に対してずいぶんとお優しいのですね』


〔えっ?〕


『ヒラリー様にお聞きした話とは違っていてたいへん驚きました』


(あれ?また、やっちゃった?)


ディアの言葉を聞いて私は焦ります。

ヒラリーに聞いたってことは最初に召喚された戦乙女のことだろうけど、私には人々に伝わっている内容がわからないからです。

だから私は適当な言葉でごまかすことにしました。


〔戦乙女もそれぞれの考えで行動しているの。私はディアのことが気に入っているから協力は惜しまないのよ〕


(ディアのことは妹みたいに思ってるし嘘は言ってないから大丈夫よね?)


私がそう言うとディアは照れたような顔をして言います。


『私もリーネお姉様が大好きです』


ディアは照れながらも力強くそう言いました。

私はディアの言葉を聞いて苦笑いを浮かべることしか出来ませんでした。


(それにしても、ディアが聞いたことってどんなことだろう?)


私はディアがヒラリーから聞いたことが気になりました。

もう遅いかもしれないけど、人々に伝わっている内容を知っていれば焦ることもないと思ったからです。


〔ディア、ヒラリーから聞いた話ってどんな内容?〕


『私がヒラリー様にお聞きしたのは、戦乙女様は戦闘以外のことには関心を示されず、戦闘が終わればすぐにお戻りになられるとのことでした。ですから、リーネお姉様は私が個人的なことでお呼びしたり、戦闘以外でも私達に同行していただけるお優しいお方だと思いました』


(それって現在進行形でやっちゃってるってことじゃない)


私はディアの言葉を聞いて頭を抱えたくなりました。

ラヴェルナ神殿でディアを助けたことはしょうがないとしても、今、祐也達に同行していること事態が伝手と違うなんて思っていませんでした。


〔なるほどね。でもさっき言ったように、私は私の考えで行動しているから伝手と違っても不思議じゃないのよ〕


私はもう伝手と違う行動をしても気にしないことにしました。

さきほどディアに説明したように、私個人の考えで行動しているなら少々伝手と違っても問題ないだろうと考えたからです。


(そもそも、戦闘ごとに戻ってたら何度も召喚することになって聖女の負担が大きくなるじゃない)


〔それに、戦闘になるたびに私を召喚していたらディアの負担も大きいでしょ?〕


私が続けてそう言うと、ディアは少し言いにくそうにしています。


『その・・・ヒラリー様のお話では、大きな戦闘でしかお呼びされなかった・・・とお聞きしました』


(普段の戦闘では呼ばなかったってことか。ディアが言いにくそうにしていたのはそれでね)


〔私は戦闘以外で呼ばれても気にしないから、ディアが必要と思ったら呼んでいいからね〕


『はい!』


私が優しくそう言うとディアは嬉しそうに返事をしました。


そうこうしているうちに馬車は順調に進み、祐也達は昼食を取ることにしました。

しかし、私は戦乙女という立場上、一緒になって食事をしてもいいのか悩みます。

一度、天界に戻ることも考えましたが、ディアの負担を考えると出来るだけ現世にいたほうがいいと思い、祐也達とは別に食事を取ることにしました。


幸いにもというか、自室に閉じこもっていた間に大量のピラフを作っていたので、ストレージの中にはすぐに食べれる物がありました。


祐也達が食事の準備を終えて食事を取り始めたので、私も食事をするために兜を外してストレージからピラフを取り出そうとした時にガーランドが大声を上げました。


『うおっ!お、お前、ダークエルフじゃねえか!』


ガーランドの叫ぶような声で他の4人も私のことを凝視します。

どうやら祐也達は、兜を被っていたためか私がダークエルフだと気づいていなかったみたいです。


(えっ?今更なの?肌の色を見れば私がダークエルフだってことはすぐにわかるじゃない)


『なんで戦乙女様にダークエルフが・・・』


ガーランドがそうつぶやくと同時にロインやルイナの視線が疑惑の眼差しになります。

どうやら彼らはダークエルフが邪悪だという認識でいるみたいでした。


(はぁ、戦乙女なんだからダークエルフでも問題ないでしょうに。戦乙女は女神様の眷属なのよ)


そんな中、どうしていいかわからないように視線を動かしていたディアに説明を頼みます。


〔ディア、私達ダークエルフはけっして邪悪な種族ではないの。女神様の眷属であり戦乙女の私がその証拠よ〕


私がそう言うと、ディアが彼らに説明してくれました。

ディアの説明を聞いた彼らは思い思いにつぶやきます。


『まさかダークエルフだとは・・・』


『どうりで肌が黒いわけね』


『認識をあらためないといけませんね』


彼らがそんなふうにつぶやいていると、ディアが私のそばにきて質問してきました。


『リーネお姉様のようなダークエルフの戦乙女様は他にもいらっしゃるのですか?』


ディアの質問に対して私はどう返事をするか少し悩みました。

戦乙女の活動内容のことはたとえディア相手でも話すことは出来ませんが、ディアが質問してきたことは戦乙女の活動内容とは関係ないと思い正直にこたえます。


〔私以外にダークエルフの戦乙女はいないわ〕


私がそうこたえると、ディアは嬉しそうな顔して言いました。


『では、私はとても恵まれているのですね。こんなに格好が良くてお優しいリーネお姉様に召喚に応じていただけたんですから』


(ほんと、ディアは素直で純粋な女性だわ)


ディアの言葉を聞いて私は笑顔で頷きました。

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