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異世界で真実の愛を  作者: ぬっすぃ~
第二章 戦乙女として
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49.再会

私がディアに召喚されてから数日後、3度目になるディアの呼びかけがありました。


〔リーネお姉様、私の願いに応じてください〕


私はディアからの呼びかけを聞き、すぐさま装備を身につけてディアのもとへと跳びました。


* * * * *


私がディアのもとへ移動すると、そこは木々がまばらに立ち並ぶ森の浅いところのようでした。

私達の周りには男性3人と女性1人がおり、1人の男性以外はこちらをうかがっていたようで、私が移動してきたことで1人の大柄な男性は『ほお~』と声をあげました。

見たところ戦闘で呼ばれたわけではなさそうなので私はディアに声をかけます。


〔ディア、今日はなに?〕


私がそう聞くとディアは嬉しそうにこたえます。


『リーネお姉様をみんなに紹介しようと思いお呼びいたしました』


私はディアにそう言われ、心臓の鼓動が激しくなった気がします。

ディアは聖女として勇者に同行しているのだからディアがみんなと言うのは勇者パーティーのことだろう。

そう思うと自然と鼓動が激しくなったのです。


私はあらためて周りにいる人達を観察しました。

こちらを見ている3人のうちの1人は身長が190cmはありそうな男性で、がたいが良く大きな剣と分厚い鎧を身につけています。

私がディアのもとへ移動してきた時に声をあげたのはこの男性でした。


(体格や装備を見ると完全に近接専門か) 


2人目の男性は160cmぐらいの身長だが、ひょろっとした体格で全身に黒い装備を身につけていて独特な雰囲気があります。


(斥候か盗賊って感じの装備だわ)


3人目は綺麗な金髪の女性で赤い厚手のワンピースにブーツを身につけ、宝石の付いた杖を手にしています。


(いかにも魔法使いって感じね)


こちらを向いていない男性は170cmぐらいで、長い髪を後ろで無造作にまとめていて、革の鎧にブーツという普通といえる装備ですが剣を左右両方にさげています。


(背格好で言うなら彼が祐也なんだろうけど暗い雰囲気で祐也っぽくないわ)


私がそんなふうに観察しているとディアが後ろを向いている男性に声をかけます。


『ユーヤ様、戦乙女様を紹介しますのでこちらにお向きください』


そう、ディアは後ろ向きの男性のことを『ユーヤ』と呼んだのでした。


(あぁ、やっぱり祐也なんだ・・・)


『あぁっ?べつに紹介しなくていいぞ』


私は祐也に会えると思い少し緊張しているところでそんな返事が返ってきました。

私が聞いた声はたしかに祐也の声でした。

しかし、話す口調は私がいままでに一度も聞いたことのない話し方でした。


(えっ?)


私は耳を疑いました。

とても祐也が発するような話し方ではなかったからです。


『ユーヤ様、魔王討伐には戦乙女様のお力もお借りするのですからきちんとご挨拶なさってください』


『ちっ!』


ディアがあらためてそう言うと舌打ちが聞こえました。


私はもうパニック寸前です。


聞こえてくる声は祐也に間違いないはずなのに、話し方や態度はとても祐也がするように思えないからです。


私がそんなふうに思っていると祐也がこちらに振り向きました。

およそ半年ぶりに見た祐也は鋭い目つきをしていて無精ひげを生やしています。

私は以前に無精ひげを生やした祐也を見ていますがそれでも今の祐也は想像出来ない見た目でした。


『ではユーヤ様から自己紹介をお願いします』


私の気持ちを知らないディアは淡々と進めていきます。


『俺のことは知ってるだろ』


『ユーヤ様!』


『ちっ、勇者、祐也・・・』


ディアがいさめるように名を呼ぶと祐也はつぶやくように言いました。


『では、次はガーランド様、お願いします』


ディアが体格のいい男性にそう言います。


『ガーランドだ、主に前衛を担当している。魔法は生活魔法しか使えん』


ガーランドと名乗った男性はちらりと次を促すように黒ずくめの男性を見ます。


『ロインです。斥候および中衛を担当しています。魔法は風と土の属性魔法が少し使えます』


『最後は私ね。ルイナ・ベルモット、見てのとおり魔法使いよ。属性魔法はだいたい使えるわ』


4名の自己紹介が終わるとディアが私を紹介します。


『戦乙女のリーネお姉様です。私の願いに応じてくださったたいへんお優しいお方です』


ディアは私をそう紹介しました。

ディアが私をリーネお姉様と紹介したことは普段なら心の中でツッコんでいるところだが、今の心境では逆にありがたかった。

少し冷静になれる機会になったからです。


『なあ、ディア、戦乙女様の力を見せてもらえないか?』


私が冷静さを取り戻したころにガーランドがそう提案してきたのでディアが私にたずねます。


『リーネお姉様、よろしいですか?』


〔いいわよ〕


私はそう言って森の奥を見ます。


(力が見たいってのが純粋な興味なのか値踏みをしているのかわからないからハデに飛ばすかな)


私はそう考えて[物理的に槍が飛ぶ]戦乙女の槍を見せることにしました。

訓練の時にたまたま跳躍させずに槍を飛ばしたのを再現する感じです。

私は集中すると左手を前につき出してキーワードを発します。


「槍よ!」


私がキーワードを発すると手の前に短槍が現れて凄まじい風を起こしながら飛んでいきます。

風にあおられた彼らが『うおっ!』とか『きゃっ!』とか言って驚いているさなかに短槍は木々を貫き20mほど飛んで消えます。

私はこの時、違うことに気を取られていました。


(キーワードを発した時、声が出ていたわ?)


たしかに「槍よ!」と自分が発した声が聞こえていました。


(これはロカに聞いてもわからないかな~?)


私がそんなことを考えていると彼らの感想が聞こえてきます。


『すげー!』


『・・・まあまあね』


『想像以上でした』


『リーネお姉様、格好良かったです!』


最後にディアが私に対する感想を言っていましたが、彼らが感想を言い終えても祐也は一言も発することなく私のほうを見ていて、しばらくしてから私に向かってこう言ってきました。


『俺を呼ぶ必要があったのか?』


私は祐也にそう言われて返答に悩みます。

勇者召喚のことはある程度理解しているが、人々に教えていい内容ではないからです。


『お前たちでどうにかなったんじゃないのか?』


私が悩んでいると祐也は続けるようにそう言いました。

祐也は私の力を見て勇者召喚に疑問をいだいているようでした。

私は祐也に否定する意味で首を横にふり、ディアに頼みます。


〔ディア、魔王は異世界の勇者にしか倒せないと伝えて〕


ディアは私の言葉を聞き、祐也に説明してくれます。


『くそっ!なんで俺なんだよ!』


ディアの説明を聞いた祐也は吐き捨てるようにそう言いました。


私はその言葉を聞いて心が痛みます。


魔王が異世界の勇者にしか倒せないのは世界の法則を維持するためでしかなく、その気になれば私でも倒すことが出来るからです。


祐也は勇者としてこの世界に召喚されたが半年が経っても召喚されたことになっとく出来ないでいるようでした。

私は祐也のことが気になり、ディアにそれとなく祐也のことを聞きます。


〔ディア、異世界の勇者は初めからこうなの?〕


『私はユーヤ様が召喚されてすぐにお会いしましたが、初めは明るい男性という印象でした。ですが月日を重ねていくうちにだんだんと笑われなくなり、つねになにかを考えられているようになりました』


〔それで、笑わなくなった理由は聞いたの?〕


『詳しくはお聞きしていませんが、もとの世界に恋人を残されているからと言われていました』


〔ふ~ん、そうなんだ〕


私はそう言うと素知らぬ顔をして祐也から視線を外します。

ディアの説明を聞いて、祐也が私のことで苦しんでいると思うと祐也のことを見れなくなりました。

祐也を見ていると泣いてしまいそうだからです。


(祐也・・・ごめん、祐也はこんなに耐えてくれているのに私はすぐに自殺しちゃったよ)


『じゃあ、そろそろ魔王を倒しに向かおうぜ。戦乙女様も協力してもらえるならあまり行動していない今がチャンスだぜ』


ガーランドが空気を読まずにそう言いましたが、ルイナが同意するように言います。


『そうね、ここからなら30日もあれば魔王のところに着けるから今すぐに向かったほうがいいと思うわ』


『では、ユーヤ様とディア様はどうお考えですか?』


ガーランドとルイナの言葉を聞いてロインが祐也とディアに意見を聞きます。


『俺はいつでもいいと言ってるだろ』


『私はみなさまにおまかせします』


2人がそうこたえるとロインが今後の方針を話し始めます。


『では、明日から魔王討伐に向けて行動することにしましょう。まずはテラリベルからソドン村まで馬車で移動して、ソドン村で一度情報収集をおこなうということでよろしいですか?』


『スタック経由でも1日しか違わないからそっちのルートにして欲しいんだけど』


ロインの提案にルイナが意見を言いますが、他の3人は静観していて意見を言うつもりは無いようです。


『ではテラリベルからスタックを経由してソドン村に向かうことにします』


『ええ、そうして。さすがに9日も馬車での移動はしんどいもの』


どうやら勇者パーティーはロインが参謀を務めているようで、ロインの提案に他のメンバーが意見を言うかたちのようでした。

私は彼らのやり取りの間も祐也を見ることが出来ずにディアのほうを見ていると、ディアが声をかけてきます。


『リーネお姉様、どうかなされましたか?』


〔いいえ、なんでもないわ。それよりも私はもう戻ってもいいわね?〕


『あっ、はい。リーネお姉様、ありがとうございました』


〔じゃあ、私は戻るから〕


私はそう言って祐也から逃げるように天界へともどりました。

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