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異世界で真実の愛を  作者: ぬっすぃ~
第二章 戦乙女として
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47.予想外の呼び出し

私が初めて戦乙女として召喚された日の翌日、私は天界でロカと訓練をしていました。


「さすがに昨日の今日で呼び出しはないみたいね」


訓練の合間で取った休憩中に私はそう口にしました。


『基本的に戦乙女召喚は魔物と戦う時以外ではおこなわないからね』


ロカがそう説明してくれたことを聞いて、私は気になったことをロカに質問します。


「私を召喚するのに凄く魔力を使うんでしょ?」


『最初の召喚が1番魔力を使うけど、それでも戦乙女の槍1回分ぐらいじゃないかな』


私はロカの返答が意外でした。

天界から戦乙女を召喚するのだから凄く魔力を使うと思っていたのに、ロカの返答だと私なら20回はおこなえるぐらいの魔力しか使わないということだからです。


「思ってたよりも魔力を使わないのね」


『それは私達が眷属だからそう思うのよ。人々の基準だと戦乙女の槍1回分の魔力はかなり凄い魔力量よ』


私はロカに言われて気がつきました。

転生する前にテラ様の眷属になった私には人々の基準がわからないのです。


「私って転生する前に眷属になったから人々の基準がまったくわからないわ」


私が真剣に考えてそう言うと、ロカは軽い口調で言います。


『まあ、その辺は召喚されているうちにわかってくると思うよ』


「どうしてそんなに問題なさそうに言うのよ?」


『戦乙女のうちは問題無いでしょ?』


「う~ん、そうなのかな?」


私はロカの返答に納得がいかずに悩みます。


『それよりも、訓練はまだ続けるの?私もちょっとやることがあるから出来れば終わりたいんだけど』


「あ、それなら終わりでいいわ、私の訓練につき合わせてごめんね」


ロカの申し出に私は訓練を終えることにしました。


『最後までつき合えなくてごめんね、私も女神になるためにやらなきゃいけないことがあるのよ』


「ううん、ロカはそっちを優先してくれていいわ。私は自分でなんとかするから」


『ありがとう、リーネ。じゃあ、また明日ね』


「ええ、ロカ、またね」


私はロカと別れて訓練場を後にします。


「ちょっと早いけどもうお風呂にしようかな?」


私がそんなことを考えているとディアからの念話が聞こえてきました。


〔お姉様、リーネお姉様、私の願いに応じてください〕


「えっ?こんな時間に?」


私は少し困惑しますがディアからの念話は続いています。

ディアからの念話が聞こえてから、私の頭にはディアのいるところがイメージとして流れてきていて、このイメージのところへ跳躍すればディアのもとに行けることがわかります。

私は戦乙女の装備を身に着けてイメージのところへと跳びました。


* * * * *


私が跳躍して移動してきたところはラヴェルナ神殿の裏手に位置するところのようでした。

現世はすでに日が暮れてきて周りは薄暗くなっています。

私の前には神官服を着た3人の男達がこちらの様子をうかがっていたので私は男達から目を離さずにディアに声をかけます。


〔ディア、おまたせ〕


『ごめんなさい、リーネお姉様』


ディアは謝ってきますが私は状況がわからないのでディアに聞きます。


〔それで、今はどういう状況なの?〕


『それが・・・』


ディアが言いにくそうにしているので私は思ったことを口にします。


〔こいつらに襲われそうになったのね〕


そう言ってディアを見ると、ディアは部屋着と思われる簡素な服を着ていて髪もまとめられていませんでした。

私があらためて男達を見ると驚愕の表情をしています。


(昨日のオッサンの嫌がらせか・・・セクハラって感じかな?まったく、聖女もたいへんね)


私はそんなことを思いながら男達の動向を探ります。

私がディアの横で睨みを効かせていると男達はきびすを返し神殿へと戻っていきました。

その様子を見た私はため息をつき、ディアに話すように促します。


〔はぁ、ディア、話してくれる?〕


私がそう言うと、ディアは話し難そうにしながらも話し始めます。


『私はリーネお姉様を召喚するためにラヴェルナ神殿の神託の間をお借りしたのですが、そのことに対しての対価を払うようにとクライブ様がおっしゃいまして・・・』


〔それで?〕


『あの・・・』


〔身体を要求されたのね?〕


私がそう聞くとディアは小さく頷きました。

私はディアの話を聞いて頭が痛くなってきました。

魔物相手なら討伐してしまえばいいが、人々のしがらみとなると私がどうこう出来ることではないからです。


(それにしても、対価で身体を要求してくるなんて。もう神罰って言って関係者を処罰してしまいたいわ)


私がそんなことを考えているとディアが謝罪してきます。


『戦乙女のリーネお姉様を個人的なことでお呼びして申しわけございません』


私はディアの謝罪を聞いて、どう返答するか少し考えました。

戦乙女としての立場を優先して毅然とした態度で接するか、私個人の気持ちを優先して優しく接するか悩みます。


〔ディア、私はあなたの召喚に応じたことであなたとの繋がりが出来ているの。だから、困ったことがあったらいつでも呼んでいいわ〕


私はけっきょく自分の気持ちを優先しました。

いくら戦乙女と言っても感情が無い戦闘マシーンではないのだから、自分の出来る範囲内のことはなんとかしたかったからです。

私がそうこたえるとディアは涙を見せながらお礼の言葉を口にします。


『ありがとうございます、リーネお姉様』


(さてと、この後はどうしたものか・・・とりあえずディアをラヴェルナ神殿に残すことは出来ないし・・・)


私がこの後のことを考えているとディアが私の顔色をうかがうようにみつめていました。

私はディアの様子を見て声をかけます。


〔ディア、どうかした?〕


『リーネお姉様が難しいお顔をされていましたので、本当によろしかったのかと思いまして・・・』


〔この後のことを考えていただけよ、このままラヴェルナ神殿に泊まることは難しいでしょ?〕


『ですが神託の間をお借りしたことは事実ですから、なにかしらの対価は必要ではないかと』


〔対価って貨幣的なものでいいんでしょう?〕


『私はそれほどお金を持っているわけではありませんので、それも難しいと思います』


私はディアの言うことを聞いて対価に相応する物を持っていないか考えました。

私のストレージの中にはこれまでに倒した異世界の魔物の死体が入っていますが、これらはこちらの世界とは根本的に違うため世に出すことは出来ません。


(こんなことになるならストレージの中をちゃんと整理しておけばよかった)


私は後でストレージの整理をすることにして、ひとまずディアに部屋に戻ることを提案します。


〔ディア、神殿から出るにしても衣服や荷物を取りに戻る必要があるでしょ?私がついててあげるから一度部屋まで戻ってくれる?〕


私がそう言うとディアは頷き、小さな声で言います。


『手をおつなぎしても、よろしいでしょうか?』


(さすがに襲ってきた相手がいるところに戻るのは勇気がいるわよね)


私はそう思って、盾と左手の籠手をストレージにしまってから手を差し出すと、ディアは嬉しそうな表情をして私の手を掴みます。

手を掴まれた私はディアの手がかすかに震えていることに気づきました。


〔大丈夫よ、私がついているわ〕


私は少しでもディアの不安が取り除けるようにとそう声をかけてから神殿の裏口に向かいました。

私達が裏口から神殿の中に入ると、そこでは騒然とした雰囲気で人々が行き交っています。

そんな中、1人の女性が私達の方へとやってきました。

その女性は年齢が40代ぐらいの凛とした雰囲気のある女性でした。


『戦乙女様、お怒りを鎮めてくださいますようにお願いいたします』


私の前にやってきた女性はそう言うと深々と頭を下げました。


(声にして話せないって、こんな時は不便でしかたがないわ)


私は心の中でぼやきます。

ディアとは念話でやり取りが出来るので問題は無いが、それ以外の人とは声が発せないため会話することが出来ません。

しかたなく私がディアのほうを見ると、私の様子を見てディアが紹介してくれます。


『司教のヒラリー様です』


ディアがそう言うと、ヒラリーと紹介された女性があらためて自己紹介をします。


『ラヴェルナ神殿で司教を勤めさせていただいているヒラリー・クーラントと申します。このたびは聖職者にあるまじき不祥事を起こしてしまい申しわけございません。当事者に代わり司教の私から謝罪させていただきます』


ヒラリーはそう言うと私に再び深々と頭を下げました。


(私に謝られてもねぇ。ちゃんとはされているんだろうけど、ディアのことよりも戦乙女の私のことのほうが重要視されてて違和感しかないわ)


私はヒラリーがディアにではなく私に謝罪してきたことに違和感を持ちました。

そこで私はディアをヒラリーの前に立たせてディアに私の言葉を伝えるように言います。


〔ディア、私が謝罪する相手が違うって言ってるように伝えて〕


私がそう言うとディアは少しとまどいながらヒラリーに言います。


『ヒラリー様、戦乙女様が、謝罪する相手が違う、とおっしゃっています』


ディアがそう言うとヒラリーは少し驚いた様子を見せ、あらためてディアに言います。


『ディア、いいえ、ディアンヌ。ラヴェルナ神殿の者達があなたに対して聖職者にあるまじきことをしようとしたことに当事者に代わり謝罪します』


ヒラリーはそうディアに謝罪しました。

私はとりあえず納得したことを現す意味で大きく頷きます。

私が頷いたことを見ていたヒラリーは独り言を言うようにつぶやきます。


『ラヴェルナ様の文献とはずいぶんと違うようですね』


ヒラリーのつぶやきを聞いたディアがヒラリーに疑問をなげかけます。


『ヒラリー様、そうなのですか?』


『はい、ラヴェルナ様の文献では人々のことにはあまり関心を示されないとありました。ラヴェルナ様に心を開かれたのもずいぶんと時間を要したと記されています』


ヒラリーの言葉を聞いて私は少し焦ります。


(あれ?もしかして私、やっちゃった?)


私がそんなことを思っているとヒラリーがディアに言います。


『ディア、あなたは戦乙女様に認められたようですね』


ディアはヒラリーにそう言われ、私のほうを見て聞いてきます。


『そうなのですか?リーネお姉様?』


私はディアにそう聞かれて一瞬とまどいました。


(戦乙女が認めるとかそんなことが伝わってるなんて知らなかったけど、もう認めちゃってるみたいなものよね)


私はそう思い、ディアの頭を優しく撫でながら言います。


〔そうよ、だから安心して〕


『はい!』


するとディアは嬉しそうに返事をしました。


この後のことはヒラリーが責任を持ってディアを神殿に泊めると言われたので私は天界に戻ることにします。


〔じゃあ、私は戻るから、ディア、頑張ってね〕


『はい、ありがとうございます、リーネお姉様』


私はディアにそう言うと天界へと跳躍しました。

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