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異世界で真実の愛を  作者: ぬっすぃ~
第二章 戦乙女として
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46.戦乙女召喚

私が召喚陣に足を踏み入れると召喚陣が強く輝き出し視界が真っ白になります。

しばらく真っ白だった視界が徐々に見えてくるようになるとあちらこちらから『おおっ!召喚に成功したぞ!』とか『戦乙女様をお呼び出来たのですね!』と召喚の成功を喜ぶ声が聞こえてきます。

そんな召喚の成功を喜ぶ声の中、私のすぐ前から若い女性の声が聞こえてきます。


『ついにやりました!これで私にも可愛い妹が・・・』


私の耳に聞こえてきたのはそんな言葉でした。


(うわ~聖女ってそっち系の女性なのか)


私がそんなことを考えていると召喚陣の光が徐々におさまり、私は聖女と対面するようなかたちになりました。

私と対面している聖女と思われる女性は紫がかった銀髪とクリっとした大きめの青い目が特徴的な可愛らしい女性でした。


彼女は髪を頭上でお団子のようにまとめ、白い祭服を身に着けていて、ひざを折り祈りを捧げるポーズのまま私を見続けています。

祈りを捧げるポーズのままいつまでも反応が無いので私は念話で彼女に声をかけました。


〔可愛い妹っぽくなくてごめんね〕


私が声をかけると彼女は大きくまばたきを繰り返して返答してくれます。


『いいえ!格好いいお姉様でも大丈夫です!』


彼女は大きくそう断言しました。

それを聞いて私は苦笑いを浮かべることしか出来ませんでした。


今のやり取りで正気に戻った彼女は落ち着いた声で私に話しかけてきます。


『私の召喚に応じていただきありがとうございます。私の名はディアンヌ・ランシールと申します。私のことはディアとお呼びください。失礼ですが戦乙女様のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?』


彼女、ディアが私の名前を聞いてきたので私は毅然とした態度で名のります。


〔戦乙女のクエフリーネよ〕


『クエフリーネ様ですね。クエフリーネ様、あらためて召喚に応じていただいたことに感謝いたします』


ディアは一度言葉を切ると、小さな声であらためてこう言ってきました。


『あの・・・クエフリーネ様・・・お姉様と・・・お呼びしてもよろしいでしょうか?』


(戦乙女の私に対して最初にお願いすることがそれってどうなのよ?)


私は少々あきれながらもディアに愛称で呼ぶこと許します。


〔お姉様だけだと誰かわからないからリーネって呼んでいいわよ〕


『ありがとうございます。では、リーネお姉様、とお呼びさせていただきます』


ディアは満足そうにそう言いました。


(リーネお姉様ってお姉様は必要なのか。それにしてもこの後ってどうしたらいいんだろう?神託の間で儀式をしてるからすぐに戦闘に向かうなんてことも無いだろうし・・・)


私が思案していると大層な神官服を着た男性がディアに詰め寄り聞いてきます。

身なりの派手さや態度を見ていると、ラヴェルナ神殿の中でも相応の地位にいる男性のようです。


『それで、わしが女神様のもとにいくことは出来ないのか?わしはラヴェルナの神殿をこれだけ大きくしたんだぞ』


私が聞き耳をたてていると男性のそんな言葉が聞こえてきます。

ディアは戦乙女の私にそんなことを聞けないと思っているのか、男性と私の顔を交互にうかがっていました。


(はぁ、聖職者ってどうして偉くなるといろいろ勘違いするのかしら?そもそも、私に聞いてくるってことは神託を受けられないからよね?)


私はディアを見て否定をあらわすようにゆっくりと首を横に大きくふります。


(神託を受けられない人が女神様のもとに呼ばれるなんてありえないから)


私が否定をしたことで男性は声を荒げてディアの肩を掴み文句をいいます。


『なぜわしが女神様のもとにいけんのじゃ!きさまがなにか言ったのであろう!』


『いえ、私はなにも言っておりません』


『そんなはずはない!このわしが女神様に呼ばれぬはずがなかろう!』


『クライブ様、お止めください。私は本当になにも言っておりません』


私はクライブと呼ばれた男性とディアのやり取りを静観しつつ考えます。


(これってどうしたらいいの?しかも召喚した私をほったらかしてるなんて)


私が2人のやり取りを静観しているとクライブが手を振り上げてディアを叩こうとしました。

私はさすがに目をつむることが出来ずにテレポートでディアの横に移動してクライブの手を掴みます。


『なっ?!』


手を掴まれたクライブは驚愕の眼差しで私を見てきたので私はクライブを睨むようにみつめます。


(私を召喚したディアをほっておくわけにもいかないから止めたけど、この後どうしたらいいのよ?)


私がどうしようか思案していると周りにいた神官達がクライブを止めにきてくれました。


『クライブ様、お止めください。戦乙女様がお怒りになられてはたいへんですのでここはお下がりください』


神官達はそう言ってクライブを連れて行きました。

クライブから開放されたディアは私にお礼を言ってきます。


『リーネお姉様、ありがとうございました』


〔状況がよくわからなかったけどディアが叩かれそうだったからね〕


『頼れるお姉様が出来て私は嬉しいです』


ディアは照れながらそう言いました。


(ふ~ん、最初は変な子かと思ったけど素直そうな子じゃない)


最初はどうなるかと思ったけど、とりあえず騒ぎは治まったので私は天界に戻ることにしました。


〔じゃあ、私は戻るけど、私の力が必要な時はいつでもいいから呼びかけなさい〕


『ありがとうございます、リーネお姉様』


ディアはそう言って深々と頭を下げました。

私はディアに微笑むと天界のゲートへと跳躍しました。


* * * * *


私がゲートに戻ってくるとロカがニヤリとしながら迎えてくれました。


『初めて召喚されてみて、どうだった?』


「どうって?」


私は装備を衣装に換装しつつ質問を質問で返しました。


『聖女のことよ』


「ああ、ディアのことね。話してみると素直そうな子だったわ」


『ガッカリされなかった?』


「格好いいお姉様でもいいんだって」


『あれ?そうだったの?彼女はいつも可愛い妹をって言っていたからてっきり妹が欲しくて戦乙女を召喚しようとしてるんだと思ってたよ』


「ディアっていつもそんなことを言ってたの?」


私は少し驚きました。

ディアは可愛らしい感じの女性で頻繁にそんなことを言うように見えなかったからです。


『そうよ、彼女はちょっと性格が変わってるから、それで召喚されればわかるって言ったのよ』


「性格が変わってると言われれば変わってるわね」


私はさきほどのディアとのやり取りを思い出しながらこたえます。


『なにかあったの?』


「ディアが最初にお願いしてきたことってなんだと思う?」


私はロカの質問に質問で返しました。

ロカがディアにいだいているイメージを確認したかったからです。


『最初にしてきたお願い?なんだろう?ちょっと思いつかないよ』


私が返した質問にロカは真剣に考えているようでした。

ロカはディアに対してそれほど明確なイメージを抱いているわけでは無いようです。


「お姉様と呼んでいいかって聞かれたの」


私がそう言うとロカは驚いたような表情をして聞き返してきます。


『本当に?リーネをお姉様って?』


「そうよ。なんだかかわいく思えてリーネって呼んでいいわよって言ったらリーネお姉様って呼ぶって言われたわ」


私がそうこたえると、ロカは笑いながらつぶやきました。


『リーネお姉様って・・・』


「ちょっとロカ、どうして笑うのよ」


『・・・見た目はアリだと思うよ、見た目は』


ロカがまだ笑いながらそうこたえるので私は少しムッとしながら聞き返します。


「見た目はってどういうことよ?」


『だって、リーネの性格じゃお姉様って感じじゃないでしょ?』


「ロカほどじゃないけど、私だってロカ以外の人といる時はちゃんとしてるわ」


『私は最初からリーネと一緒にいるからそんなリーネはぜんぜんイメージ出来ないよ』


「なによ、ロカだって最初のイメージ崩壊しちゃてるでしょ」


『それはリーネの前だけだからいいのよ』


私達はいつものようにくだらないやり取りをするのでした。


「あっ、そういえば召喚されてからのことって聞いてないけど次からはどうなるの?」


『一度召喚に応じたリーネには彼女との繋がりが出来ているから、次からは直接リーネに彼女の祈りが届くようになるはずよ』


「なるはずって、どうして断言しないのよ?」


『戦乙女召喚はリーネで2回目だし、私は召喚されたことがないからよ』


私はロカの言葉が意外だったため聞き直します。


「戦乙女召喚って私で2回目なの?」


『ええ、人々にとって戦乙女召喚はたいへんなことだから、そうそう召喚出来るわけじゃないのよ』


「そういえば勇者召喚も2回目だって言ってたわね。それも関係してるの?」


『明確な関係があるわけじゃないけど、戦乙女を召喚しようとするのにはそれなりの理由があるってことよ』


私はロカの説明で魔王出現と勇者召喚に戦乙女召喚が因果関係にあることを知りました。

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