44.訓練終了
それからの私は戦乙女になるための訓練をして日々を過ごします。
天界で戦乙女の訓練を始めてから5ヶ月もすると私はカティア様に同行して異世界の魔物を倒すことが出来るようになっていました。
そんなある日、私はロカに疑問をぶつけます。
「ロカ、私ってまだ見習いなのよね?」
『ええ、そうよ』
「どうして戦乙女達と同じように戦闘に参加することになってるの?」
『カティア様の意向だからかな?』
「私のことはロカに決定権があるんじゃなかったの?」
『う~ん、そうなんだけどカティア様の直感でリーネに参加させたほうがいいってなったのよ』
「どういうこと?」
『カティア様の直感は凄く当たるのよ。だからカティア様がリーネを参加させたほうがうまくいくって言われて、それでリーネを参加させることになったのよ』
「はぁ~そんな理由ならしょうがないか」
『カティア様もリーネが参加するようになってうまくいってるって言われてたよ』
「それなら頑張らないとね」
『それにしても、話し方もだいぶ変わったよね』
「そう?自分じゃあまりわからないんだけど?」
『前の話し方は子供っぽかったから今の話し方のほうがリーネには似合ってるよ』
「あまり意識してないんだけど、そんなに変わった?」
『ええ。でも、いいんじゃない?話し方が変わったってリーネはリーネだし』
「それっていい意味で言ってる?」
『どうかな?』
「ロカ、表情に出てるわよ」
『まあまあ、それで今日は?』
「今日は出撃の予定はないから、もう少し錬金術を覚えようかなって思ってるの」
私達がのんびり話をしているとカティア様が私を呼びにこられました。
『リーネ、出撃なの』
「カティア様、私は今日の出撃予定は無いですよ?」
『いいの、今日はリーネがいるほうがうまくいくの』
「もう、しょうがないですね。ロカ、そういうことだからちょっと出撃してくるわね」
『ええ、気をつけて』
私はカティア様の出撃要請を受け出撃することにしました。
「カティア様、それで、今日の魔物は特定出来ているんですか?」
『出来てるからリーネを呼んだの。今日はドラゴンなの』
「えっ?ドラゴンなんですか?私はまだ大型の魔物とは戦ったことがないですよ?」
『大丈夫なの、大剣を使えば余裕なの』
「カティア様、大剣の使用にはロカの許可が必要ですが?」
『大型の魔物との戦闘時には使っていいってなってるの』
「えっ?いつの間にそんな話になっていたんですか?」
『リーネが戦闘に参加するようになってすぐなの』
「はぁ、わかりました。それで、今日は何人で出撃するんですか?」
『2部隊10人なの』
「ドラゴン相手に2部隊は少なくないですか?」
『リーネがいるから余裕なの』
「本当ですか?」
『うん、余裕余裕なの』
私はカティア様についていき今日出撃するメンバーと合流します。
「戦乙女見習いのクエフリーネです。今日はカティア様の要請で出撃に参加することなりました。まだ経験が少ないのでご迷惑をかけないように頑張ります」
『リーネ、固いの。別に軍隊じゃないんだからもうちょっと普通でいいの』
「いえ、初めてお会いする方もおられますのであいさつはしっかりしておこうと思いまして」
『初めまして、第5部隊隊長のミレーよ。今日はよろしく』
私のあいさつに赤い髪色をした人族の戦乙女があいさつを返してくれました。
彼女の後に銀髪のエルフの戦乙女が声をかけてきます。
『クエフリーネ、ひさしぶりね、私のこと覚えてる?』
「おひさしぶりね、エミニエール。もちろん覚えていますよ、初参加させてもらった時以来ですね」
私に声をかけてきたのは私が初めて戦闘に参加した時に一緒だった第17部隊隊長のエミニエールでした。
エミニエールの第17部隊は後方支援部隊だったはずなので第5部隊と私の6人で突撃するのかと思いミレーに声をかけます。
「ミレーさん、今日は第5部隊と私の6人で突撃するのですか?」
『ミレーでいいわよ。私の第5部隊もエミニエールの第17部隊と同じ後方支援部隊よ』
「えっ?」
私は意味がわからずカティア様のほうを見ました。
『突撃するのはリーネだけなの』
「ええ~?!どうして私だけなんですか?!」
『大剣を使うリーネと一緒だと危ないの。だから突撃するのはリーネだけなの』
「じゃあ、大剣を使わないでみんなで突撃したほうが・・・」
『大剣の物理無効がドラゴンに超有効なの。だから大剣は必要なの』
「え~!そんな~」
こうして私はドラゴンにたいして1人で突撃することなりました。
今回の討伐で出撃するメンバーが集まったので私達はドラゴンを討伐するためのミーティングをおこないます。
ミーティングではドラゴンを囲むように戦乙女が展開して一斉に弓で攻撃し、その隙に私が接近して大剣を叩き込むという大まかなプランが決まります。
展開した戦乙女は各自弓で攻撃してドラゴンを空へと逃がさないようにするのにとどめて、積極的に戦闘に参加はしない方針になりました。
「これってほとんど私とドラゴンのタイマンじゃないの?」
私がボヤいているとエミニエールが気楽そうに声をかけてきます。
『クエフリーネなら大丈夫でしょ?』
「私、大型の魔物は初めてなの。だからうまく立ち回れるか心配なのよ」
『大丈夫だって、私達も援護するんだからあまり気負っちゃっダメよ』
「さすがにドラゴンとなると緊張するわ」
『ドラゴンなんて大きいだけでファイアリザードみたいなものよ』
「そう思うのはエミニエールが後方支援だからでしょ?」
『そうかもね』
エミニエールは笑いながらそう言います。
「もう、私の気も知らないで」
私は溜め息混じりにそう返しました。
『じゃあ、そろそろ出撃なの』
カティア様の合図で出撃するみんなが集まります。
『じゃあ、跳ぶの』
カティア様はそう言って私達と一緒に現世へと跳躍されます。
私達が移動したさきは荒れはてた大地が続く荒野と呼べるようなところでした。
荒れはてた大地には大きく穴が空いているところが多く見られ、この場所が普通ではないことが感じとれます。
私が大地を見渡すと穴の空いたところに1体の赤いドラゴンが見つかりました。
「今回の相手はあのドラゴンですか?」
『そうなの。じゃあ、作戦開始なの』
カティア様の合図で戦乙女達はドラゴンから100mぐらいの距離を囲むように移動していきます。
私もストレージから大剣を取り出し突撃する準備をしていると、私達に気づいたかのようにドラゴンが穴から這い出てきました。
這い出てきたドラゴンが大きく咆哮をあげたのを合図にするように戦乙女達が水属性を付与した矢を一斉にドラゴンに向けて放ちました。
私は戦乙女達の矢がドラゴンに当たると同時にドラゴンの右前足までテレポートで移動して大剣を横なぎに振るいます。
私が振るった大剣はなんの抵抗も感じさせることなくドラゴンの右前足を切り裂きました。
私が右前足を切り裂いたことでドラゴンは再び咆哮をあげて私に喰らいつこうとしてきたので、私は空中を駆け上がり喰らいつこうするドラゴンとすれ違うように移動して大剣で左目を切り裂きます。
左目を切り裂かれたドラゴンが首を大きく振り回してきたので私がテレポートで距離を取るとドラゴンは大きく息を吸い込みだしました。
「やばっ!」
私はブレスが来ると思い身体を覆うように障壁を作り出します。
その直後、ドラゴンがブレスを吹きました。
ドラゴンが吹き出したブレスが私を覆い尽くしますが障壁のおかげで私の身体まではとどいていません。
「危なかったわ、息を吸い込んでからブレスを吹くまでがこんなに速いなんて思わなかったわ」
私はブレスがおさまるまでその場にとどまります。
ブレスがおさまるとドラゴンはすでに私を攻撃しようと左前足を振り上げていました。
私は臆することなく前に出て振り下ろしてくる左前足を大剣を合わせるように切り裂き、そのまま空中を駆け上がってドラゴンの首に大剣を振り下ろしました。
私が振り下ろした大剣はドラゴンの首を大きく切り裂きドラゴンが咆哮をあげます。
首を切り裂かれたドラゴンは身体を大きく動かして尾を振り回すように暴れだしたので私が再び距離を取るとドラゴンは翼をはばたかせて逃げようとしだしました。
そこへ戦乙女達の矢が飛んできてドラゴンの翼を撃ち抜いていきます。
私は翼を撃ち抜かれたドラゴンが大きくバランスを崩したのを見逃さずに近づき、さきほど切り裂いた首を再び大剣で切り裂きドラゴンの首を切り落としました。
私は距離を取り様子をうかがいますがドラゴンは息絶えたようでした。
「ふぅ、ドラゴンが相手だったけどなんとかなったわ」
私がドラゴンを倒してひと息ついているとカティア様がやってきました。
『リーネ、やったの、完璧なの』
「ええ、なんとか無事に討伐することが出来ました」
『じゃあ、ドラゴンはリーネがストレージに入れておいてなの』
「私が持っていてもいいのですか?」
『地上に残さなかったら誰でもいいの』
「わかりました」
私はカティア様が言われたとおりにドラゴンをストレージに入れておきます。
そうこうしてると戦乙女達も戻ってきました。
『クエフリーネ、やったね。ほんとに1人でドラゴンを倒すなんて凄いじゃない!』
私に駆けよってきたエミニエールがそう声をかけてきます。
「ブレスを吹かれた時は焦ったけどなんとか倒せたわ。みんなの援護もあったから私1人で倒したわけじゃないわよ」
『謙遜しなくていいって。空中をあれだけ動けるのはクエフリーネだけだからうまくいったのよ』
「とにかく無事に倒せて良かったわ」
私達がそんな話をしているとカティア様が言われます。
『じゃあ、帰還するの』
私達はカティア様に集まります。
集まった戦乙女達は作戦が無事成功してみんな笑顔でした。
『じゃあ、跳ぶの』
カティア様がそう言われ私達は天界へと戻りました。
天界に戻った私達はそれぞれあいさつをして別れていきます。
私はとりあえず食堂で休憩をとることにしました。
私が食堂のテーブルに突っ伏しているとロカがやってきました。
『どんな格好で休憩してるのよ』
「今日はもう動きたくない格好」
『ふふ、話し方は変わってもやってることは変わらないよね』
「性格はそうそう変わらないと思うわ」
私はテーブルに突っ伏したまま返事をします。
『それで、どうだったの?』
「そうだ!ロカ、聞いて」
私は起き上がりそう言います。
『なに?』
「今日、討伐する魔物はドラゴンだったんだけど、カティア様ったら私1人で突撃させたのよ」
『大剣を使ったんじゃないの?』
「そうだけど、私以外は後方支援部隊が2部隊だけだったのよ。初めから私1人で突撃させるつもりだったんだわ」
『でもうまくいったんでしょ?』
「なんとか無事には倒せたけど、ちょっとヒドくない?」
『カティア様は直感で行動されるからしょうがないよ』
「もうっ、納得いかないわ」
『それで、この後は錬金術の勉強をするの?』
「今日はもうぐうたらする」
『本当にリーネはリーネね。まあ、好きなようにしたらいいよ』
「えっ?好きにしていいの?」
『ええ、そろそろ召喚されそうなのよ。だから戦乙女の出撃以外は好きにしていいから』
「召喚って戦乙女召喚のことよね?」
『そうよ、だから今日でリーネも見習いは卒業よ』
「うそっ、まだ半年も経ってないわよ?」
『訓練は期間で決まってるわけじゃないからね。今日、ドラゴンと戦ったのが卒業試験みたいなものよ』
「今日の出撃のこと、ロカは知ってたの?」
『もちろんよ、リーネのことは私が責任を持ってるんだから知ってるに決まってるじゃない』
「今日のロカはそんな表情はしてなかったわ」
『当然でしょ、今日は大事な日だから気をつけていたしね。とにかくこれでリーネも立派な戦乙女の1人よ。まだ先は長いけど、リーネ、ひとまずお疲れさま、よく頑張ったよ』
「ロカ、ありがとう」
私はこの日、ひさしぶりに嬉し涙を流しました。
今回で第一章が終了となります。
妄想を勢いで書き殴っただけの酷い出来ですが、ここまでお読み頂いた方にお礼を申し上げます。
次話からはもう少し描写を入れていますが、個人的に長い描写は読み難いと感じるので期待はしないで下さい。
今後、時間が取れたら第一章の修正も考えていますが、会話中の描写が難しい(会話の流れは切りたくない)のでこちらも期待はしないで下さい。