24.食堂で
翌日、私は個人部屋のベットで目を覚ましました。
昨日は個人部屋のシャワーを使い、その後はベットでゴロゴロしていたはずだけど気が付いたら寝ていた様です。
「~あふっ、また知らないうちに寝てたみたい。昨日もいろいろあったしな~」
私は起き上がると日課のストレッチを始めます。
ストレッチをしながら昨日の事を思い出しました。
「あ~昨日は失敗した。シャワーの温度調節が魔力でするなんて思わなかったよ。ちゃんとロカに聞いとけば良かった」
昨日は浴場には行かずに個人部屋のシャワーを使用したが、温度調節のやり方が分からずにしばらく悩みました。
シャワーの根元に魔力を持つ石が付いてるのに気が付いて、その石に魔力を注いでみると熱湯になって大騒ぎしたのです。
「今日は、まだ少し眠いや。朝は体を動かすからしっかりストレッチしておこう」
私はいつもよりも長めにストレッチをおこないます。
すると、目もしっかり覚めてきました。
「今日の訓練は何をするんだろ?」
私が今日の訓練の事を考えていると扉がノックされました。
『リーネ?起きてる?』
今日もロカが迎えに来てくれました。
私は扉を開けて挨拶をします。
「ロカ、おはようございます」
『おはよう、リーネ。昨日はちゃんと眠れた?』
「はい、昨日も知らないうちに寝たみたい」
『初めのうちはしょうがないよ。じゃあ、朝食を食べに行くから着替えて』
「えっ?あっそっか、昨日はシャワーを浴びた後、手足に何も着けたくなかったから前の衣装だった」
『今朝はテラ様の様子が違ったから、昨日もらった衣装を着てないとややこしくなるよ』
「やっぱり、着なきゃダメ?」
『たぶん今日はテラ様がみんなの反応を見に来られると思うから、ちゃんと着なきゃダメ』
「わかった・・・換装」
私は昨日、テラ様にもらった衣装に着替えました。
『じゃあ、食堂に行って朝食を食べましょ』
私達は朝食を食べに食堂に向かいました。
食堂に着いた私達は順番に朝食をもらいます。
私達がもらった朝食は、白いパンに数切れの肉と薬草のサラダでした。
「ロカ、朝食って毎日同じなの?」
『朝食はだいたい同じね、この世界では一般的な朝食よ』
私達は朝食を食べながら話をします。
「まあ、そうだよね。ほんとはもう1品あって、それが毎日替わると良いんだけどな~」
『そうなの?』
「1品だけでも替わると、同じ物を食べてるイメージが付きにくいんだよ」
『へぇ~今度、エリザに提案したら?』
「ちょっとエリザリーナさんは苦手だし、ロカから言ってくれない?」
『私じゃ具体的な事を聞かれても分からないから、リーネが直接言わないとダメかな』
「そっか~お米の件もあるしな~」
私が悩んでいるとロカが小声で話掛けてきます。
『(リーネ、気付いてる?)』
「(ん?何が?)」
『(みんな、リーネの事を見てるよ)』
私が周りに意識を向けると、多くの天使や戦乙女が私を見ていました。
「(あ~やっぱりこの衣装は目立つよね)」
『(リーネだけ違うからしょうがないよ)』
私達が小声でコソコソ話しているとエリザリーナさんがやって来ました。
『おはようございます、ロカ、クエフリーネさん』
『おはよう、エリザ』
「おはようございます、エリザリーナさん」
『クエフリーネさん、昨日はどうされたのですか?』
「えっ?」
『一緒にお風呂を楽しめると思ってましたのに』
「昨日はちょっと・・・シャワーを使ってみようと思って・・・」
『でしたら今日はお風呂をご一緒出来ますね?』
「その・・・ちょっと・・・」
『ねえ、エリザ』
『ロカ、どうされました?』
『エリザはリーネの事が気になってるだけよね?』
『私はロカの様にクエフリーネさんと親しくなりたいと思っておりますわよ?』
「私と親しくですか?」
『エリザはなんでリーネと親しくなりたいの?』
『あら?ロカは気が付いてなさらないのですか?』
『えっ?何を?』
『ロカはクエフリーネさんとお知り合いになられてから、ずいぶんと表情が豊かになられましたわ。ですから、私もクエフリーネさんと親しくさせていただきたいのですわ』
『そんなに表情に出てた?』
『ええ、私達と話す時とは違い笑顔が多くなられたと思いますわ』
『そうか、それは確かにリーネのおかげよ』
「私のおかげ?」
『リーネは私に気兼ねなく話してくれるから、気が許せるのよ』
「私はつい気軽に話し掛けちゃうだけだけど」
『ですから、皆さんもお二人の様子が大変、気になられているのですよ』
エリザリーナさんの話しに因ると、私の衣装が目立つだけではなく、ロカの様子も違うって事で注目されている様でした。
私が改めて周りを見てみると、ほとんどの天使や戦乙女がこちらを窺っている様です。
『私達が注目されてるのは私にも原因があったのか。ごめんね、リーネ。リーネの衣装が目立っているからだと思ってたのよ』
「大丈夫だよ、私の衣装が目立っているのは事実だし、しょうがないよね」
『ところで、クエフリーネさんのその衣装はどうなされたのですか?』
「これは昨日、装備は違うけど衣装は同じだね、ってロカに話してたのをテラ様に聞かれちゃって・・・」
『リーネ!』
『クエフリーネさんは戦乙女の装備も違う物をご使用されているのですか?』
「ん?装備の事は話しちゃマズかった?」
『どこかのタイミングでみんなに話そうと思ってはいたけど、今はちょっとね』
『そんなワケでリーネはテラ様のお気に入りだから装備が違うのよ』
『訓練ではその装備を使われるのですか?』
『テラ様の意向なのでそうなるかな』
『なるほど、この後の訓練を楽しみにしておきますわ』
『別に見に来なくてもいいのよ?』
『見てはダメってわけではないでしょう?』
『少しはリーネにも気を遣いなさい』
『そうでしたわ。クエフリーネさん、お米の準備が出来ましたので、何時でも受け取りに来て頂いて結構ですわ』
「あっ、ほんとですか?じゃあ、今もらってもいいですか?」
『ええ、構いませんわ、ではお持ち致しますね』
そう言って、エリザリーナさんは食堂の奥へと移動されました。
『リーネ、ニマニマして気持ち悪いよ』
「別にいいじゃん、お米がもらえるし嬉しいの!』
『みんなに見られてるの忘れたの?』
「あっ、忘れてた・・・」
『思った通りね。ほんと、お米の事になると周りが見えないんだから』
「・・・うん、気を付けます・・・」
私達がそんなやり取りをしていると、エリザリーナさんが戻って来られました。
『お待ちどう様です、こちらがお米10kgになりますわ』
エリザリーナさんはそう言うと、テーブルの上に麻袋に入ったお米を置かれます。
私はつい、顔がニヤケてしまいそうになります。
「エリザリーナさん、ありがとうございます」
私はエリザリーナさんにお礼を言い、お米をストレージにしまいます。
『エリザ、用事は済んだよね?リーネ、そろそろ訓練をするよ』
「あっ、はい。じゃあ、エリザリーナさん、訓練に行ってきます」
『はい、では後ほど』
私達はみんなに見られながら食堂を後にして訓練場に向かいました。