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異世界で真実の愛を  作者: ぬっすぃ~
第二章 戦乙女として
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109.妹3

コーヒーのことや言葉使いのことが落ち着いたので、ようやく私のことを教えはじめれると思ったのですが、最初はどのように説明するかで少し悩みました。


そもそも私はこちらの世界で生まれていないので、まずは異世界から転生したことを説明する必要があります。

そのことをアティに説明した時は、私とアティの境遇が近かったこともあり、違う世界から来たということも問題なく説明することが出来ました。

しかし、こちらの世界しか知らないディアに異世界のことをなんと説明したらいいかを最初は悩んだのです。


そうやって最初は悩んでいたのですが、そこでハッと気がつきました。

ディアは聖女として勇者祐也と共に魔王を討伐する旅をしていたことを思い出したのです。

ディアは『異世界から召喚された勇者』と共に旅をしていたのです。


今まで勇者として召喚された祐也のことを思い出せなかったのは不思議ですが、最初に私が祐也と同じ世界で生まれていて、テラ様の意向でこちらの世界に転生してきたことを説明することにしました。


「ディア、最初からちょっと驚かせるようなことを言うけど、落ち着いて聞いてね」


私がそう声をかけると、ディアはニコニコとした笑顔を真剣な面もちに変えて頷きました。


「私は勇者祐也と同じ世界の生まれなの。祐也がこちらの世界に召喚された後、私はテラ様の意向でこちらの世界に転生することになったのよ」


『えっ!』


私の説明を聞いたディアは思わず声をあげ、目を見開いてキョトンとしているので、本当に驚いたようです。

まあ、姉と慕っていた相手から異世界から来たと言われたらそれは驚くでしょう。

最初から驚くようなことを聞かせてしまい申し訳ないのですが、この後、ディアにとっては衝撃的な事実を告白しなくてはなりません。


「いきなりのことで驚いたと思うけど、異世界から転生して来た私が戦乙女として活動している理由で、1つだけディアに謝らなければならないことがあるの」


私が異世界から転生して来たということに驚いていたディアは、続けて言ったことに言葉を返さずに頷いてくれたのでそのことを告白します。


「私がディアの召喚に応じたのは祐也を守るためだったの。ディアの召喚に応じたのは私の個人的な理由があったからなのよ。そのことに関してはディアに怒る権利があると思うし、私のことを嫌ってくれてもかまわないわ」


私がそう告白するとディアは驚いた表情を浮かべ、そのままうつむいてしまいました。


(嫌われちゃったかな・・・)


ディアの戦乙女召喚に応じた理由を教えると嫌われてしまう可能性がありましたが、このことを黙ったままディアと姉妹になることなんて私には出来ませんでした。

ですから、このことを聞いたディアが私のことを嫌う可能性があってもちゃんと話しておこうと思ったのです。


しばらく思案している様子のディアですが、うつむいているため表情はわからず、どのように感じているのかが気になって仕方がありません。

私にも理由があって召喚に応じたことを受け止めて欲しいとは思いますが、ディアにとって複雑な心境なのがわかるのでどんな結果になっても受け入れるつもりです。


しばらくうつむいていたディアは、気持ちの折り合いがついたのか、私をまっすぐに見つめるように顔をあげました。

顔をあげたディアは怒っているようではないのですが、なんといっていいのか表現し難い複雑な表情をしています。


『姉様、最初に話を聞いた時、凄く憤りを感じました。なぜっ、どうしてっ、て思いましたし、私のことを見て召喚に応じてくれたわけではないことに悲しくも思いましたし、しばらくは憤りがおさまりませんでした。でも、よく考えると私が姉様のことを怒る資格はないのです』


やはり私の話を聞いてディアも最初は怒ったようですが、しばらく考えて気持ちが落ち着いたようです。

なぜディアが怒る資格はないと言うのかはわかりませんが、ディアの気持ちを受け止めるために続きを促します。


『私は戦乙女召喚をよこしまな考えでおこないました。ランシール家の1人娘だった私はどうしても姉妹が欲しくて戦乙女召喚をおこなうことにしたのです。建前の上では魔王討伐のためと言っていましたが、本当は妹欲しさに戦乙女召喚をおこなったのです。そんなよこしまな考えで戦乙女召喚をおこなった私に姉様を怒る資格はありません』


そう言われてみればディアは私を召喚した時、『かわいい妹が』って言っていましたし、ディアの言動に少し呆れてしまった覚えがあります。


「私を召喚した時に『かわいい妹が』って呟いていたわね」


『~っ!!』


私がそう返すと、ディアは当時のことを思い出したのか、恥ずかしそうに両手を頬に当てました。

そして、恥ずかしそうにしながらも私を召喚した時の気持ちを教えてくれます。


『最初に姉様から「かわいい妹でなくてごめんね』って言われた時、凄く格好いい姉様が優しくそう言ってくれたから、私はすぐにお姉様になって欲しいと思いました』


(これは私もちょっと恥ずかしいかも・・・)


ディアの召喚に応じた時はテンションが高かったのか、最初に話したのが『かわいい妹でなくてごめんね』だったことを思い出したので少し恥ずかしいです。

本当ならば女神様の眷属として威厳のある態度をとるべきだったとは思いますが、召喚に応じた当時は聖女にたいしてどのように接するかも考えていませんでしたから、ディアにたいして素の対応をしてしまったのです。


「ディアが『かわいい妹が』って呟いていたから、ついそう言ってしまったのよ」


私がそう返すとディアは笑顔で言います。


『最初に姉様がそう言われたことには驚きましたよ。まさか戦乙女様からそんな言葉をもらうなんて思ってませんでしたし。後でラヴェルナ様の手記を読ませてもらいましたが、姉様は手記に書かれていた戦乙女様とは全然違ったんでさらに驚いたんですよ』


ディアが言うように私は最初に召喚された戦乙女とはまるで違う態度をとっていたので、聖女ラヴェルナの手記を読んで、最初に召喚された戦乙女のことを知ったディアが驚くのも仕方がないでしょう。

でも、言い訳をさせてもらうと、人々に戦乙女のことがどのように伝わっているのかは当時は知るすべがありませんでしたし、テラ様からは聖女にたいしてどのような態度で接すればいいのかも聞いていませんでした。


「私がディアの戦乙女召喚に応じることは決まっていたんだけど、私を召喚した聖女にたいしてどのように接するかは教えてもらっていなかったのよ。まあ、それに関しては聞かなかった私が悪いのだけどね」


私がそう返すとディアは一瞬驚いたような表情になりましたが、すぐに穏やかな笑顔になって言います。


『姉様でもそんな失敗をするんですね』


(あ、そうか・・・)


私はどちらかというと失敗することも多いのですが、ディアの前ではこれといった大きな失敗をしていません。

最初に召喚された戦乙女と態度が違うことは『私個人の考えで行動している』という建前が功を奏して失敗したとは思われていませんし、それ以外で失敗したような覚えはないので、ディアの中では私のことは『優秀な女神様の眷属』となっているのでしょう。

そんな『優秀な女神様の眷属』の私が失敗したことを話したから先ほどの言葉が出て来たのだと思います。


「ディアには失敗したところはほとんど見られていないけど、私はディアが思っているほど優秀ではないわ」


私がそう言ったことが意外だったのか、ディアはキョトンとして『まさか・・・』と呟きました。

やはりディアの中では私は『優秀な女神様の眷属』という認識だったようですが、私が優秀だと勘違いされているといろいろと困ることがありそうなので、ここはしっかり訂正しておきましょう。


「先ほど言ったように私は異世界から転生して来ているから、こちらの世界のことは知識不足なところがあるの。それが原因で失敗することもあるから私はけっして優秀ではないのよ」


私がそう説明すると、ディアはなぜか納得したように頷いてから言います。


『姉様は異世界からこちらの世界に来てまだ40年ほどなんですよね?それで今はこちらの世界を勉強中ってことですか。それならまだ女神様にならないのも仕方がないですね』


(あ~・・・)


どうやらこちらの世界に転生して来た説明の仕方が悪かったようで、ディアは先ほどテラ様が強調して言われたことをテラ様の思惑通りに受け止めてしまっているようです。

私は先ほど『テラ様の意向で転生してきた』と説明しましたが、この説明だと『テラ様の意向で[こちらの世界の女神になるために]転生してきた』と捉えることが出来てしまいます。


また、普通ではありえないと思われる『異世界からテラ様の意向で転生した』ということもあって、私は元いた世界でも女神もしくは女神様の眷属だった、というようにディアは思い込んでいる気がします。

このままだとディアは私が女神候補の戦乙女と認識してしまいそうなので、もともとの私は女神でも女神様の眷属でもないことを教えましょう。


「ディア、違うの、私は異世界では女神でもなければ女神様の眷属でもなかったし、女神になるためにこちらの世界に転生したわけでもないのよ」


ディアが勘違いしていそうなので私の立場を明確にするようにそう説明すると、ディアは思わずといった感じで声を上げます。


『えっ?でも先ほどテラ様の意向で転生することになったって言われましたよね?』


ディアの反応を見るかぎり、やはり私のことを元女神かなにかと勘違いしていそうです。


「テラ様の意向で転生して来たって説明したけど、私が転生してきた理由は、こちらの世界の安定を促すためで、私を含めて10人が転生して来たのよ」


私がこちらの世界に転生することになったもともとの理由を説明すると、ディアは不思議そうな顔をして悩みだしました。

異世界から来たことをわかりやすく説明しようと思って少しずつ言葉にしましたが、今の時点でディアに理解し辛いことがあったでしょうか?

ディアの反応に不思議に思いながらもディアの考えがまとまるのを待ちます。


しばらく悩んでいたディアは一応納得したって雰囲気で話します。


『今現在、6柱の女神様で管理されているこちらの世界に10人の神様候補が転生して来られたってことですよね?』


(そうじゃないから!)


どうやら、私=女神、という考えは捨てれないようです。


(本当に今日1日かかりそう・・・)


私のことを教えるだけなのに、ディアが言っていたように今日1日かかってしまいそうでした。

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