105.近況報告
私がこの世界にやって来てから早くも40年が経ちました。
40年と言えば人族の感覚ならば人生の半分以上といったところなのですが、ダークエルフとしての自覚を持った私にはまだ40年という感覚でしかありません。
しかし、1000年以上生きているロカやアティが言うには、年数を意識しているうちは不老であることを理解していないというのです。
そう言われてみれば、私はテラ様の眷属で不老なので寿命は存在しません。
ですから、特別なことが無い限り、今の生活が変わることは無く、年数を意識する意味が無いということのようです。
私の場合、戦乙女として現世に召喚されているので、多少は年数を意識する意味はあるのですが、それも私を召喚したディアが生きている間だけのことで、基本的には年数を意識しても意味は無いと言われてなんとなくですが納得出来ました。
そんなわけで、こちらの世界にすっかり馴染んだ私ですが、この40年で制限されていた能力をいくつか覚醒させてしまいました。
当初、ディアに召喚されることで取得してしまう千里眼によって神眼を覚醒させてしまうと言われていましたが、千里眼を取得する前に魔力を視認出来る魔力視を取得してしまい、それによって神眼を覚醒させてしまいました。
魔力視は、魔法の集束が思ったように上達しなかったので、魔力の流れを意識して練習していたらいつの間にか取得していました。
ちなみに千里眼は、ディアの孫が生まれ、祝福するために召喚された時に取得しています。
また、魔法の集束を練習している過程で以前から聞いていたもう1つの能力、神力操作を取得しました。
魔法の集束は元々神の御業であり、魔力だけでは成し得ない技術だったのです。
当初、私が魔法の集束だと思っていたのは魔力だけで疑似的に集束させていた感じで、本当の魔法の集束ではなかったのです。
私が取得した神力操作は、本来ならば神力感知を取得している状態から取得するらしいのですが、私が無駄に魔法の集束を練習していたためか、神力操作を取得してから神力感知を取得するという有り得ない取得のし方になってしまい、女神様達やロカに呆れられてしまいました。
神力感知を取得すると、自分の中に魔力とは違う力、神力を感じられるようになったのですが、魔力以上に大きな力を自分の中に感じるようになり、少し驚きました。
そして、神力感知を取得してから女神様達にお会いすると、今まで感じられなかった神力を女神様達から感じられるようになり、女神様達の本当の力の一端を感じられた気がします。
なんだかんだで私はこの40年で4つの能力を覚醒させているのですが、10年で1つと考えると、かなり早いペースで能力を覚醒させてしまっているように感じてしまい凄く不安になりました。
しかし、イニティニーニ様のお話では、私が覚醒させてしまっている能力は、魔法に関係がある能力ばかりなので、それは当初から折り込み済みだそうです。
私が能力を覚醒させて不安に思っていると、『クエフリーネちゃんが魔法絡みの能力をすぐに覚醒させることはわかってました』とイニティニーニ様に言われてしまいました。
イニティニーニ様とお会いする機会はあまりないのですが、イニティニーニ様は私のことをよく理解されているようで、さすがは知識の女神様といったところでしょうか。
制限されている能力に関しては以上ですが、通常のスキルも多少は上達しています。
個人的には錬金術のレベルが上がっているのがちょっとした自慢ですがステータスを見れば一目瞭然ですね。
名前:クエフリーネ
性別:女性
年齢:58歳〈不老〉
種族:ダークエルフ〈創造の女神テラの眷属〉
加護:ー
スキル:
戦闘スキル/格闘術7・剣術7・槍術5・弓術8・盾術5・索敵8・隠密9
一般スキル/多言語5・料理7・薬学7・調合7・医学1・一般教養6・解体6・追跡7・魔物学6・隠蔽10・偽装6・錬金術6
永続スキル/空間認識
眷属スキル/ストレージ・テレポート・戦乙女の槍・微小回復・微小再生・念話(並列思考・神力感知・神力操作・神眼〈鑑定・暗視・精霊眼・魔力眼・千里眼〉)
魔法:
生活魔法/種火・造水・クリーン・ライト・乾燥
属性魔法・火3/ファイアアロー・ファイアボール
・水9/ウォーターボール・アイスアロー・ウォーターウォール・レイン
・風7/ウインドカッター・サイレンス・エアウォール・トルネード
・土5/ストーンブレット・アースウォール・ピット・アースニードル・ショットガン
・光5/フラッシュ・ミラージュ・ライトニング
・闇7/ダークネス・ダークネスアロー・影縛り・影移動
神聖魔法7/ヒール・キュア・浄化・聖光
時空魔法5/時空庫・スクワッシュ・換装・サイコキネシス・空間跳躍
複合魔法9/光属性魔法×時空魔法/マイクロウェーブ
称号:愛を求めし者・孤高の戦乙女・恋愛の女神
上達しているスキルは少ないですが、これはある程度仕方がないでしょう。
基本的に戦乙女の活動をしているだけで、魔王と戦った以後は強敵といえる相手と戦ったわけではないので、上達しているスキルがあるだけでも御の字でしょう。
魔法に関しても同じように、変化の無い生活を繰り返しているため、新たな思いつきも無く、新たに覚えた魔法はほとんどありません。
唯一新たに覚えた魔法はアティに教えてもらった影移動だけです。
影移動を覚えようと思ったのは、アティが潜伏するのに使用していたのを見て、便利そうと思ったのがきっかけです。
影移動は魔法名とは裏腹に、影の中に空間を作り出し、繋がっている影の中を移動する魔法ですので、影の中に潜伏することが出来たのです。
欠点は影の中にいる間は魔力を消費するということですが、膨大な魔力を持つ私やアティ的には気にするほどの消費魔力ではないので欠点は無いようなものです。
その他にステータスで気になる点としては、覚醒させた能力が表示されていることですが、これは神力を使って鑑定しないと見れない仕様になっているそうで、イニティニーニ様から気にしなくていいと言われています。
そんな感じで私自身の変化は以上なのですが、困ったことに現世では私に関係のあるちょっとした変化があります。
それは、恋愛の女神様の存在が信じられ信仰されはじめている、ということです。
これは、主にディアとロインの仕業なのですが、現世で大きな影響力のある聖女のディアが恋愛の女神様の存在を肯定したために、私が恋愛の女神様として信仰されはじめているのです。
ディアとロインが私のことを恋愛の女神として布教しているのを知った私は、テラ様にそのことを相談したのですが、テラ様は『現世の人々がどのような者を信仰しようが、世界に悪影響が無い限り、私達は介入するつもりはありません』と笑顔で言われてしまいました。
そういったわけで、現世では私のことをテラ様の眷属神の『恋愛の女神クエフリーネ』として信仰されはじめているのです。
私は現世で活動する時にクエフリーネと真名を名乗っていたので、『恋愛の女神クエフリーネ』の名が人々に知られるようになったことで、私がおおっぴらに現世で活動することが出来なくなりました。
戦乙女の活動自体は調査部隊の活動もあり、私が直接人々と接触することはなくなっているので問題は無いのですが、今までに接触したことのある人々の反応が少し気になります。
まあ、私が接触したことのある人々はほとんどが人族なので、後数10年もすれば問題はなくなるでしょう。
寿命の長いダークエルフとも接触していますが、私が接触したことのあるダークエルフ達は魔の森で人々と関わらないように生活していたので、『恋愛の女神クエフリーネ』のことは聞いていない可能性のほうが高いと思いますのでこちらも問題はないのではないでしょうか。
ディアとロインが私のことを『恋愛の女神』として布教していることに気がつかなかったのが今回のことに繋がっていますが、2人とも本当に私のことを信仰してくれているので、布教を止めるように言うことも出来ず、最終的に現状を受け入れるしかありませんでした。
現世の人々が私のことを『恋愛の女神クエフリーネ』と認識していることはもうどうしようもないので諦めましたが、そのことを私が知ってからというもの、ロカとアティはなにかあると私のことをからかってくるのです。
ロカは近々女神となることが決まっていますが、『私よりも先に女神になるなんてさすがリーネ!』とか言って爆笑していましたし、アティも『知らない間に女神になるなんて、さすがリーネかな!』って言ってニヤニヤしてました。
そんな2人にはいつか仕返しするつもりで、ロカが女神となった時になにを言おうか考えつつ、テラ様にそれとなくアティを女神にするように進言しましょう。