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異世界で真実の愛を  作者: ぬっすぃ~
第二章 戦乙女として
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102.新たな日常4

この集落に少しだけ協力することにした私はリスティーニアにケガ人を集めてもらうことにしました。

ここで傷薬を渡すのは簡単ですが、ケガがすぐに治るわけではないので集落としても一時的に困ることになるでしょう。

それならば私が魔法でケガ人を治してしまったほうがいいと考えたのです。


「傷薬は持っているから譲るけど、その前にケガ人を集めてもらえる?」


私がそう返答すると、リスティーニアは怪訝な表情をしながらもケガ人を集めてくれます。

リスティーニアが集めてくれたケガ人は11人。

集落の総人数が32人ということを考えるとケガ人は結構な数になります。


リスティーニアに呼ばれて私の近くに集まったケガ人達はみな、困惑した表情をしていますが、気にせずにケガを治してしまいましょう。


「今からあなた達のケガを治しますので少しだけおとなしくしていてください」


私はそう言うと魔法の範囲を指定してヒールを発動させます。


実のところ、ヒールを範囲指定で発動させたことはないのですが、攻撃魔法で範囲指定は出来るのですから、ヒールでも範囲指定で発動させられると考えていました。

ただ、今まではヒールを範囲指定で発動する機会がなかったので確認は出来ていませんでしたが、ちょうど良い機会なので確認する意味でも範囲指定で発動させたのです。


私がヒールを発動すると集まっていたケガ人のケガが治っていきます。

もちろんケガの深さによって治る速度は違いますが、私が指定した範囲内にいる人のケガは無事に治りました。


(やっぱり思っていたとおり、ヒールでも範囲指定で発動させられるわ)


私が考えていたことが想定どおりになったので内心で喜んでいると、リスティーニアが困惑した表情で話しかけてきます。


『あなた、いったい何者なの?ヒールが使えるダークエルフなんて聞いたことがないわ』


リスティーニアの言葉を聞いて私は焦りました。

もしかしなくてもやらかしてしまったようなのです。


(そういえば、ダークエルフが神聖魔法を使えるのは珍しいってロカが言っていたような・・・)


今更になってそのことを思い出しましたが後の祭りです。


私はやらかしてしまったことをどうごまかすか考えましたが、私はなにも見ていない=集落には来ていない、ということでなかったことにすることにしました。


「私はなにも見ていないから、集落のことも知らないし、集落で起こったことにも関係していないわ」


かなり苦しい言い分ですが、詳しく説明するわけにもいかないので仕方がないのです。

私がそう言うと、リスティーニアは大きくため息をついてから言います。


『確かに、あなたはこの集落には来ていないし、なにも関与していないわ』


私が言ったことは『詳しい話はしない』という意図があったのですが、リスティーニアはそれを察してくれたようです。

とりあえずケガ人も治しましたし、後は傷薬を渡して帰ればいいでしょう。


そういうことで、リスティーニアに傷薬を30個ほど渡して、怪訝な表情のダークエルフ達に見送られながら集落を後にしました。


ダークエルフの集落を出た私は、アティと合流するべく薬草を採集していたところまで戻ることにしましたが、少し移動したところでアティが近くにいることに気づきました。


「アティ、もしかして、見てたの?」


私がそう声をかけると、アティは姿を現して少し笑いながら言います。


『さすがリーネって感じかな。ほんとにダークエルフの自覚ある?』


これは完全にやらかしたところを見られていたようですが、それにしても『さすが』って、どういうことでしょう?


「もちろん私はダークエルフだと思っているわよ。それよりも、なにが『さすが』なの?」


私がそう言うと、アティは意味深に笑いながら言います。


『ふふ、私の予想どおりにリーネが天然を発揮したってことかな』


「えっ?」


どうやらアティは、私がダークエルフの集落でやらかすと思っていたらしく、私が予想どおりにやらかしたから『さすが』と言ったようです。

しかし、アティの言い分だと私が凄い天然ってことになってしまう気がしますが、私が実際にやらかしてしまっているので反論しようがありません。


このままアティとこの話を続けても私の天然説はくつがえせそうにないので、薬草採集のことを聞いて話をそらすことにしました。


「それよりも、薬草は見つかったの?」


『さっきのグレイルベアの縄張りっぽいところに行ってみたら結構あったかな。人族の冒険者の死体もあったけど』


あきらかに話をそらしたとわかる質問でしたが、アティはそのことには突っ込まずに流してくれました。

アティが私のことを天然というのは、親しい間柄でのちょっとしたイタズラのようなものなのでしょう。


それにしても、アティの話だと、先ほどの人族の冒険者のうちの2人はグレイルベアに殺されてしまっていたようです。

まあ、人族の冒険者達は通常サイズのグレイルベアでも倒せるかどうかが怪しかったので、先ほどのグレイルベアに襲われたらひとたまりもないでしょう。


「死体は?」


『もちろん触ってないかな』


そのへんはアティもちゃんと理解してくれているようで安心しました。


普通の冒険者なら見つけた死体は持ち物をあさるのでしょうけど、私達にはそのようなことをする必要もありませんし、基本的に現世の人々には関わらないようにしているので、たとえ死体を見つけても私達は見なかったことにするのです。


ただ、人々と関わらないというのはあくまでも基本的にということで、私達が自己判断で人々に関わることはテラ様から許可されています。

要は、女神様の眷属としての力を使わず、普通の人々に見えるようにすればいいということです。


そういうことで、私はなんやかんやでダークエルフ達に関わりましたが、ダークエルフの集落は閉鎖的な環境下ですし、私が女神様の眷属だとバレていなければ問題はないのです。


ヒールを使ってダークエルフ達のケガを治していたから女神様の眷属だとバレバレって思うかもしれませんが、『ダークエルフはほとんど神聖魔法が使えない』ということは、『多少は神聖魔法を使えるダークエルフがいる』ということなので、ヒールが使えたからといってすぐに女神様の眷属に繋がることはないでしょう。


そもそも、ダークエルフのイメージ的に女神様の眷属とは繋がらないはずですから、多少やらかしているといっても問題はないレベルだと思います。


それよりも、アティの話で少し気になったのが、さっきのグレイルベアの縄張りに薬草があったということです。

グレイルベアの生態はあまり知らないのですが、もしかすると薬草があるところを縄張りにしているのかもしれません。

以前に倒したグレイルベアの縄張りにも薬草がありましたし、種族的な何かか、エサを確保するためかはわかりませんが、薬草があるところを縄張りにしている可能性は高そうです。


今後もこの辺で薬草を探すならグレイルベアを探したほうが早いのかもしれませんし、少し生態を調べてみたほうがいいのかもしれません。


魔物のことなので、本当ならカルティリーナ様にお聞きするのが確実なのでしょうけど、女神様に気軽にお聞きするのはためらわれます。


そんなことを考えているとアティが話しかけてきます。


『それにしても、ほんとにダークエルフが邪悪じゃないからちょっと違和感あるかな』


そういえば、私も初めてダークエルフを見ましたが、アティもこの世界に来てからは、私以外のダークエルフを見るのは初めてのはずです。

アティはダークエルフの集落の様子を見ていたのでしょうけれど、集落に住むダークエルフが普通の生活を営んでいることに違和感があったようです。


「前も言ったけど、ダークエルフは邪悪な種族じゃないわ」


『理解はしてるけど、まだ慣れない感じかな』


アティはこの世界のダークエルフが邪悪ではないことは理解しているけど、ハーティ様の世界にいた経験からか、感覚的にまだ違和感があるようなのです。

しかし、アティがこの世界に来てからはまだ数ヶ月しか経っていませんし、感覚的なことはなかなか変えられないと思いますけど、何年かすればその違和感もなくなるでしょう。


そんなことはさておき、目的の薬草採集はアティがしてくれているのでこれ以上面倒事が起きるまえに天界に戻りましょう。


「それはおいおい慣れればいいと思うわ。それじゃあ、薬草採集はアティがしてくれてるみたいだし、天界に戻りましょう」


『そうだね、ちょっとしたイベントもあってたのしめたし薬草採集はもういいかな』


私が天界に戻るように提案すると、アティは同意してくれましたが、先ほどのことをイベントと言うのはどうかと思います。

まあ、アティ的には、自分にはまったく関係のないことで第3者として見ていたからイベントと言ったのでしょうけど。


それにしても、ダークエルフの集落のことを見ていて本当に必要な数の薬草採集を出来たのでしょうか?


「アティ、本当に必要な数だけ薬草採集出来たの?」


『大丈夫かな。たぶん・・・』


アティはそう返答しますが、最後が尻つぼみになってるのでちゃんと採集出来ているかあやしいです。


「アティ、本当よね?」


『うっ・・・』


私があやしんで聞き返すと、返答に困っているような様子になったので、無言でジッとみつめていると、アティは観念したように言います。


『ごめん、途中から数えてないからいくつ取ったかわかんないかな・・・』


私が思ったとおり、アティは採集の途中から数えていなかったようです。

薬草採集は思ったよりも手間がかかりますし、たぶん採集している途中で取れた数がわからなくなったのでしょうけど、こういう時、アティはすぐにごまかそうとするクセがあります。


「アティ、私は別に怒ってないわ。でも、数がわからなくなったからってごまかそうとはしないで。アティの悪いクセよ」


『ごめん、リーネ』


アティも自覚があるのか、ごまかすことを指摘するとシュンとしてあやまりました。

私としては、アティにあやまってもらおうとか思っていたわけではないのですが、ちょっと言い方がキツかったでしょうか。


「もうっ、あやまらないで。そもそも私は薬草採集していないんだから、数が少なくても文句を言ったりしないわよ」


『ありがと、リーネ』


私がそう言うと、アティは少し笑顔に戻りそう答えました。


とりあえず、これ以上面倒事があっても困るので、今日は薬草採集を終えて天界に戻ったのでした。

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