その5 試食開始
はじまるよ
「では、窓際の席の方から、一人づつ言ってもらいまーす!」
「議長、質問なり」
挙手したのは、フランス人ハーフ・桜田ランである。
「食べ物ならなんでもよいのでありんす?」
「えー、うーん、それだとウケ狙い出そうだねー」
高橋の言葉に、男子の数名がギクリと体を震わせた。まあ、いるわな、そういうやつ。
「それじゃあ、今日のお弁当に入っている物で。オッケー?」
「了解なり」
「では全員、投票アプリ起動」
新聞部・桜田の言葉に、全員がスマホを起動した。
投票アプリ。それは新聞部・桜田が開発した採決用のアプリである。議長役が「議場」を開設、そこへログインすることで参加者のイエス・ノーが瞬時に把握できるという優れものだ。これを開発していたため新聞部・桜田は中間で赤点三つという偉業を成し遂げたのであるが、それは黒歴史なので封印しておく。
「発言者があげた食べ物がマヨネーズには合わない、と思ったらイエスな」
「よーし、いくよー」
ガンッ、ガンッ、ガンッ。
「はい、荻野 透くん」
「たくあん」
イエス・22、ノー・11。
「ん? 意外にいけるぞ」
「え、まじ?」
早速試す者がいたが、これがわりといけるとの評判である。ざわつくクラスメイトに、マヨラーが告げる。
「野菜だからね。基本合うよ」
「ううむ、たくあんでこんなに合うのか」
「マヨネーズに合わないもの、本当にあるのか?」
「では次行くよー!」
ここからはダイジェストで。
バスケ部・植村 啓介
卵焼き。イエス・0、ノー・33。
「やる気あんのか!?」
「仕方ねえだろ、今日はチキン南蛮なんだよ!」
新聞部・桜田 ジョン
リンゴ。イエス・21、ノー・12。
「……意外にうまい」
「まじか?」
演劇部・坂藤 海斗
稲荷寿司。イエス・3、ノー・30。
「まあな、うまい、て言っちまったしな」
委員長・木葉 咲夜
カニシューマイ。イエス・0、ノー・33。
「うっはー、私もやっちゃった」
フランス人・桜田 ラン
いちご大福。イエス・29、ノー・4。
「だれだよ、合うって答えたの」
「マヨラーの四人だろ」
「……意外においしいでありんす」
「まじ!?」
ギャル・岸本 麻衣
大学芋。イエス・5、ノー・28。
「芋だからなー。合いそう」
相撲部・綾小路 京介
カツ丼。イエス・8、ノー・25。
「マヨネーズって、元々はお肉用のソースだからねえ」
「肉系は基本いける、てことか」
吹奏楽部・橘 さおり
カツ丼。イエス・8、ノー・25。
「あー、橘ちゃんの手作りお弁当ですか。そうですか」
体操部・岡部 美也
おにぎり(おかか)。イエス・3、ノー・30。
「岡部、今日もおにぎり一個?」
お嬢様・佐々岡 陽菜
きんぴらごぼう。イエス・0、ノー・33。
「ごぼうサラダって、基本マヨだよね」
「くっ……屈辱です」
書道部・武久 由美
梅干。イエス・10、ノー・23。
「梅マヨって売ってるよね」
「あ、知らなかった」
漫画部部長・海老澤 菜月
肉じゃが。イエス・6、ノー・27。
「ポテサラとほぼ同じ材料じゃん」
「ぬかったわ!」
乙女ゲーマー・加賀 理恵
クリームパン。イエス・29、ノー・4。
「え、うそ……カスタードと合うかも」
「マジ!?」
残り、十九名。
よければお試しあれ