その3 基本を学ぼう
基本は大切です
「議論の前に、基本を押さえたほうがいいんじゃない?」
クラス委員長・木葉咲夜の提言により、そもそもマヨネーズとは何か、のおさらいからとなった。
「じゃ、優香ちゃん、よろしく!」
「了解!」
お姉ちゃん・高橋に指名され、親友であるお料理大好き・平山が立ち上がった。
「マヨネーズとは、油、卵、酢から作られたソースです」
基本レシピとしては 油 七十:卵 十五:酢 十二:その他調味料 三 の比率。具体的には、油 三百ccであれば、卵黄一個、酢 大さじ一杯、お好みで塩、胡椒、砂糖などととなる。
日本の規格では「食用植物油脂が六十五%以上のもの」となっており、これに該当しない場合はマヨネーズと呼ぶことはできず、「半固体状ドレッシング」となる。
マヨネーズの発祥は明確ではないが、地中海のメノルカ島のマオンで作られた、という説が有力。日本では大正時代に発売が開始されている。
なお、成分の大半が油であることからカロリーは高く、食べ過ぎればカロリー過多となる。
世界最大の消費量を誇るのはロシアで、「マヨネーズをかけないのは紅茶だけ」と言われているようである。
「……以上、ウィキペディアからでした!」
「さすがお料理大好き優香ちゃん。勉強になりますねー」
お姉ちゃん・高橋が拍手し、クラスの皆も続く。「ウィキペディアから引用なら平山でなくてもいいんじゃね?」と大半の者が思ったが、あえて突っ込まないのが友情を長続きさせるコツだ。
「てゆーか、油が大半って……カロリーやばいね」
「登山の遭難者が、マヨネーズで生き延びた、とか書いてるし」
「だから寒い国で消費量が高いみたい」
「あー、体温保つのにエネルギー使うから?」
「うちらが食べ過ぎたら、太るんじゃね?」
なお、女子の注目を浴びたのはそこだった。マヨラー愛好会(仮称)のメンバーも「え、そんなにカロリー高いん?」という顔で少々青ざめている。乙女的にはとても大事なことだが、時間もないので先に進めることとする。
「では、マヨネーズに合わない食べ物について議論していきたいと思いまーす」
「あー、ちょっと待て」
お姉ちゃん・高橋の言葉に、クラス副委員長・荻野透が口を挟む。
「荻野くん、挙手するよーに!」
「……すまん」
どうやらお姉ちゃんはよほど議長役をやりたかったようである。注意する高橋の顔は実に楽しそうだ。
「で、なんでしょう?」
「いや、まともに議論してたら時間ないぞ」
全員が手元のスマホあるいは時計を見る。十二時四十五分。お昼休みは十三時十分までだから、あと二十五分しかない。いつものノリで議論していてはとても時間が足りないだろう。
「んじゃ、こうしたら?」
大さじ1で約100kcal