その2 開幕の音が鳴る
またお前か
新聞部所属、桜田ジョン。
なかなかのイケメンだが、つい先月片思いしていた女の子に彼氏ができ、涙を流しつつ盛大に祝福するという挫折を味わったばかりの男である。
「マヨネーズに……」
「……合わない食べ物?」
マヨラー愛好会(仮称)の四人がお互いの顔を見る。ちなみに文芸部・相沢以外の三人とは、
バイト大好き帰宅部・宇田皐月
ゲーム大好き帰宅部・河合杏里
お料理大好き帰宅部・平山優香
である。
「んー、なんだろね?」
「パンとかご飯は合うしね」
「麺類もいけるよね」
「ないんじゃない?」
その会話を聞いて、クラスのあちこちでひそひそと声が上がる。
「漬物は?」「浅漬けとかならいけるんじゃない?」「お肉は?」「全然いけるって」「魚は?」「いやそれもオーケー」「野菜全般は合うよね」「チャーハン」「油代わりに使える」「まんじゅう」「きついか?」「いやいけそうな気も」「フルーツ?」「あー、それ微妙やね」「甘いお菓子系NG?」「そうかも」「タピオカは?」「あれデンプンだろ、いけるんじゃね?」
そんな風にざわつく教室の中、一人の少女が立ち上がった。
それは、学校一モテると言われる、この二年三組の「お姉ちゃん」高橋由紀。つい先月彼氏ができたというのに、未だに一日一回は告られているというモンスター級のモテ女である。
その、クラスのお姉ちゃん・高橋が、実に楽しそうな笑顔を浮かべて「るんたった♪」と教卓へ向かうと、教卓内の棚に入れっ放しになっていた、あの悪魔的最終兵器を取り出した。
そう、ハンマーとガベルである。
「お、おい、高橋。叩くな。やめろ」
お姉ちゃん・高橋がやらんとしていることを察し、最弱ヤンキー・藤原樹が制止する。
だが、「えっへへー♪」とさらに一段上の楽しそうな笑顔を浮かべた高橋は、クラスの全員が見守る中、えいや、とガベルを叩いた。
ガンッ、ガンッ、ガンッ。
「あは、これやってみたかったんだよねー」
ニコニコ笑う高橋を見て、「それなら」と席を立ちホワイトボードに向かったのは書道部・武久由美。きゅぽん、とペンの蓋を取ると、実にのびのびとして、実に楽しげな、踊るような文字をホワイトボードいっぱいに書き上げた。
議題
マヨーネズに合わない食べ物は何か?
「それでは、議論を始めまーす!」
「「「イェーッ!」」」
お姉ちゃん、暴走




