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第二章・第四話 おかえりなさいませ

 神楽坂さんと校長代理を探していたが、結局見つからず部屋へと帰ることにした。

 寮の二階、自分の部屋のドアの前までたどり着くと、俺は立ち止まって耳を澄ませる。

 中から神楽坂さんと校長代理の声が聞こえてきたのだ。なんで二人が部屋にいるのか?

 玄関のドアに耳をあて、中の声を注意深く聞いてみる。二人は俺について話していた。

 神楽坂さんは俺を認めている。会話から察するに、どことなく同居を受け入れている。 

 これは大変だ。俺みたいなゴミとルームメイトになれば、神楽坂さんの未来はない。

 彼女は強者で、俺は弱者。俺が確実に彼女の評価を下げてしまうに決まっている。

 どうすれば部屋を変えてくれるだろうか、と考えていると、そばから幼女の声が聞こえた。


「志樹、どうして中に入らない? 挙玖きょくが探していたぞ! もちろんワタチもだ!」


「ここは俺の部屋だ。だが、神楽坂さんが中に居る」


「だからなんだ? 神楽坂が心配なら入ればいいじゃないか」


「いや。そういう話をしているんじゃない。ここは俺の部屋なんだ」


「神楽坂の部屋でもあるぞ」


「そのことについて話がしたいんだ」


「なんでだ?」


「なんでって言われても」


「じゃあ、神楽坂が心配じゃないのか?」


「いや、心配ではあるが……」


「心配だからここにいるんだろ?」


「んー。まぁ、それもあるが、やっぱり本当の理由は部屋について相談するため」


「うそだ!」


「いや、嘘じゃねーよ。ガチで部屋について校長代理と話がしたいんだよ」


「うそだうそだうそだ! うそ! うそうそ!」


「本当だよ。何度も言わせるなよ。俺は校長代理と話すためにここにいる」


 幼女といがみ合う。両者一歩も引かない。この幼女の性格は頑固だからな。


「プンスカ、プンスカ! アタチは激おこぷんぷんまる! どうして素直にならないの、志樹のそういうところ嫌い! 大っ嫌い! 嫌い嫌い嫌い! だぁあああいっきらい!!」


「嫌いなら勝手に嫌え! 幼女に俺の何が分かる。弱者の気持ちがお前に分かるかよ!」


「難しいこと分かんない! ワタチは簡単な足し算しか分からない!」


「引き算もできるだろ!」


「できる! でも掛け算は苦手」


「足し算以外できるじゃねーか」


「ぐぬぬぬぬ!」「グギギギギ」と火花が散る。


 今回ばかりは俺も引くわけにはいかない。この学校の未来のためにな。


「だいたい。なんで挙玖と話すの? 何を言うつもりなの!」


「さっきから言ってんだろ。神楽坂さんとのルームシェアを白紙に戻してほしいからだよ」


「別々の部屋に移せと言うことか?」


「そうだ」


「ダメ! ダメダメダメダメェエエエ!」


 彼女が全力で首を横に振っている。三輪車から降り、床で横になり地団太を踏む。


「イヤだイヤだイヤだイヤだぁああああ。今更白紙に戻すのはイヤダァア!」


「お前はおもちゃを買ってもらえなかったスーパーの通路にいる小学生か!?」


 中身は大人なのに、これじゃ本物のガキだ。大人げないなんてレベルではない。

 知らない人間は騙せるかもしれないが、残念ながら俺は騙せないぜ。

 幼女が寮の通路で駄々をこねていても俺は自分の意見を曲げる気はない。


「……志樹、もしかして、そこにいるの!?」


「――!?」


 玄関のドアが勢いよく開けられ、室内にいた神楽坂さんが姿を現してしまった。


「あ、いや。たまたま通りかかっただけで……ごめんなさい!!」


 俺はその場から逃げようとした。だが、幼女校長にに足を掴まれてしまう。


「志樹、逃がさない。神楽坂と話せ!」


 幼女を強引に振りほどき、逃げることはできない。それじゃガチの屑だ。

 逃げることは不可能か……。

 俺は顔を俯かせ、振り返る。玄関先には全身を包帯で巻かれ神楽坂さんの姿が見える。


「……」


「志樹、どうして私から逃げようとするの?」


「神楽坂さん。俺は最下位闘士ヴィヴァリオだ。そして君は強撃乙女リアモーレ。俺たちは最初から住む世界が違うんだよ。俺と一緒にいれば君の今後の評価にも傷がつく。俺と一緒にいてもいいことなんて何もない。だから俺を、前みたいに一人にしてくれ」


「しない」


「……え?」


「だから一人にはしない」


「なんでだよ!? 神楽坂さんは強さを求めてこの学校に来たんだろ!」


「そう。だから私はアナタを一人にはしない。実際にアナタと戦って、校長代理から話を聞いて、アナタに興味がわいたわ」


「だがなぁー、俺といたら君までダメになるぞ。君はもっと高みへを目指せる逸材だ」


「それを決めるのは私。私は誰の指図も受けないって、そう言ったでしょ?」


「まぁ、そうだが……」


 なんだコイツ。神楽坂さんも幼女校長と同じで引き下がらない頑固人間タイプかよ。

 しかも神楽坂さんに続き、校長代理も俺の部屋から出てきてしまった。

 この際、どうとでもなれ。ある意味好都合だ。俺は彼と話がしたいからな。


「校長代理。アナタなら分かるよな。この学校のために何が正しい選択か?」


「正しい選択? ねぇ、美琴様、分かりますか~?」


「難しいことは分からない! だが、神楽坂と志樹のルームメイトは面白いから、この選択が正しい!」


「ですよね~。ほらー志樹君、人生楽しいのが一番よ」


 ここにいる人間は全員愚かだ。学園の未来を何も考えていない。

 年々入学希望者が減っているの現状にも納得がいってしまう。

 まずは冷静になれ、彼女は最強、俺は最弱。生きる世界が違う。

 

「なぁ、神楽坂さん。君はもっと強くなりたくないのか?」


「なりたい。だからアナタとルームシェアをするの」


 分からず屋だなー。仕方ない、ここはいったん冷静になり、状況を整理しよう。

 今までの会話の中でこの彼女を言い負かす何かがあるはずだ。

 そうだな。ある。一つだけ、神楽坂さんをこの部屋から出す方法が。

 

「そういえば、賭けで勝ったのは俺だ。だから、神楽坂さんは速やかに出て行ってくれ」


「イヤよ」


「この学園では勝者が全て。敗者に口なし。そういうことだから」


 神楽坂さんは眉間に皺を寄せ、幼女校長も校長代理も口を噤んだ。

 そんな中、俺は幼女を横切り、階段の方へと歩み始めた。

 どこに行く訳でもなく、適当に夜でもドンチキやる祭りの方へと向かう。

 これが正しい選択だ。俺は何も間違ってはいない。これも学校にためだ。

 神楽坂さんに部屋を出る準備をする時間を与えるためにあの場から離れた。


 ▼   ▼   ▼


 夜遅く。出店は既にたたまれ、いつものランニングルートが開放されていた。

 走りながら、校庭の方へと視線を向ける。

 学園の中心には、キャンプファイヤーが設けられ、在校生たちが楽しそうにしている。

 男子と女子が手を組んで踊ったり、火から少し離れたところで仲良く会話したり。

 みんなが笑顔で、学園生活を謳歌している。人生……楽しそうだな。

 俺は足を止め、遠目からファイヤーを眺めていた。俺は向こうにはいけない。


「これでいいんだよな。俺の目的は、学園生活を楽しむことではない……」


 キャンプファイヤーの向こう側、遠くのベンチには一人の男が座っていた。

 全方向女の子に囲まれ、楽しそうに金をバラまいている男だ。

 顔も格好良くて金もある。この学園において誰もが尊敬するあの男。

 俺とは生きている世界が違う。やっぱり俺は、向こうにはいけないな。


「……これからどうしようかなぁー」


 そろそろ戻ろうかな。

 元々神楽坂さんの荷物はまだあの部屋にない訳だし、彼女が部屋を出れば済む話だ。

 そうなれば、彼女とはもう会わない。数時間前みたいに他人になるだけだ。

 出会いとは一期一会。……なのだが、同じ学園にいる限りそううまくはいかない。

 もし廊下とかですれ違ったりしたら、どうしよう。挨拶ぐらい――ダメだよな。

 きっとこれから始まる彼女の学園生活は強者のコミュニティで形成される。

 俺みたいなゴミ虫が近寄っていい訳がない。周りから蔑まれるに違いない。


「それにしても綺麗な裸だったなぁ……ポニーテールも長かったし……」


 心残りはある。彼女の裸体が脳内に焼き付いて離れない。

 裸姿を一回、下着姿を一回見てしまった。

 忘れようと意識すればするほど鮮明に思い出されてしまう。


「絶世の美女との同棲生活か。少し残念な気もする」


 俺がもっと強ければ、一緒に住めたのに。……全ては弱い自分が悪いんだ。


「あぁああ悶々する。俺だって女の子と一緒に住みたいよ! エロいこととかしたいよ! ポニーテール大好きだよ! だって男だから!!」


 夜空に向かって叫んだ。周りの生徒が俺の声に反応し、痛い視線をこちらに向ける。


「あ。すいません……なんでもないです……」


 デジャブだな。そういえば中学の時、今と全く同じことをした記憶がある。

 あれは、俺の親友だった(・・・)鼓此木ここのぎと一緒に住むことが決まったときだったな。

 アイツは明るくて、バカで、とにかく全力で……エロい体をしていた。 

 煩悩まみれな男でごめんなさい。だが、叫ばずにはいられない。

 神楽坂さんには小此木のような胸はないけど、いい尻と曲線美なんだよな……。

 いやぁー。エロいことしか考えられない自分が情けない。最低なケダモノ野郎だな。


「さて、このままランニングを続けていても疲れるだけだ」


 よし、帰ろう。面倒だから晩ご飯はカップラーメンでいいよな。

 ご飯食べて、風呂入って、寝れば、理論上は計算通りうまくいく。

 明日も新入生歓迎祭で朝からうるさくて八時には目が覚めてしまう。

 身体にベストの八時間睡眠をするためには、11時くらいには眠りにつくか。


 ×   ×   ×


 本来はしない夜のランニングを終え、俺は一人で寮の部屋へと向かった。

 ガラス戸を見て中に誰かいないか確認する。部屋の電気は消えている。

 これは神楽坂さんが部屋にいないということを意味していた。

 幼女校長と校長代理が俺の話を聞き入れてくれたのか。正しい選択だ。

 学校の未来を考えた場合、この選択が最もふさわしい。


 安心しきり、ガチャリ――とドアを開けて電気をつけた。


「……ん? ……んんん?」 


 俺は目を疑った。そして自分を否定する。確実に見間違いだな。

 咄嗟に電気を消し、再びつけた。幽霊なら消えているはず。

 なのだが、その存在は消えてはいない。夢ではない……。

 

「えっと……。出て行ったんじゃねーのかよ……?」


 玄関にはつつましく三本指を床につけ、頭を下げるメイド姿の神楽坂さんがいた。

 もう一度言う、メイド姿の神楽坂さんがいた。その状況に俺は困惑を隠せない。


「お待ちしておりました。おかえりなさいませ旦那様。お風呂にします? カップラーメンにします? それと、わ・た・しにします?」


「できれば、出て行ってくれます?」


「ダメです。旦那様であろうとその命令は受け入れられません」


「あとさ、そこはできれば『旦那様』ではなく『ご主人様』と言ってほしいのだが……」


「承知いたしました」


「あと一ついいかな?」


「なんでしょうか? ご主人様?」


「すいません。お部屋を間違えました。失礼します!!」


「逃がしませんよ!」


 玄関から逃げようとしたが、神楽坂さんに腕を掴まれる。

 逃げようとしたが、ガッシリ掴まれていたので逃げられない。

 神楽坂さん、ハンマー使いだからか握力がかなり強い。


「なぜ引きとめる! 今日からここが神楽坂さんの部屋なんだろ! つまり俺の部屋が変更されたんだよな? なぁ、そうなんだろ!?」


 幼女校長め。確かに部屋を変えろとは言ったが、まさか俺をこの部屋から追い出すなんて。


「いいえ、ここが正真正銘アナタの部屋よ!」


「なんだと!?」


「旦那様?」


「だからその呼び方やめろ! ご主人様だ! お前はメイドだろ!」


「ご主人様?」


「うん。そっちの方がいいな……ってそうじゃない!!」


 神楽坂さんのメイド姿が似合いすぎていてつい本題を見失っていた。

 相手のペースに乗せられてはダメだ。ここは俺のターンで行く。


「俺は逃げる!」


「何よ! なんでさっきから逃げようとするのよ! 私に不満でもあるの!?」


「神楽坂さんにはないが、学校のやり方には不満がある!」


「私に不満がないなら、ちゃんとこっちを見なさいよ!」


 頭を掴まれ、強引に彼女の方へと向けられる。


「アナタの望むことをなんでもしてあげるから」


 神楽坂さんは空いた方の手でスカートを掴み、自らたくし上げた。

 なに、君は痴女なの? メイド+露出狂かよ。――ありだな。


「ちゃんと見てよぉ……アナタの好きなガーターベルトもちゃんと穿いたんだから」


 コイツ。俺の趣味を完全に把握してやがる。その秘密は誰も知らないはずなのに。


「まさかお前、脳を読む能力者か?」


「違うわよ。ベッドの下にあったエロ本を読んだのよ。志樹って、結構ハードな趣味してるのね」


「元は男一人の部屋だからな。隠さずに置いてあったかも。見つかっても文句は言えない」


 抵抗するのをやめた。俺は神楽坂さんの肩を掴み、真剣な眼差しで見つめる。


「何よ? そ、そんなに見つめられたら私、感じちゃうじゃない……」


「真剣に聞いてほしい。俺は」


「志樹は?」


「俺は――」


「志樹は」


「――逃げる!!」


 隙をついて玄関を出ようとした。俺の身体的能力なら逃げきれる。


「甘いわね御影志樹! アナタの行動パターンは把握済みよ! 玄関を塞げ田照魅火槌たてみかづち !」


「なっ!?」


 彼女のハンマーが玄関のドアをぶっ壊し、スッポリと収まり、行く手を阻んだ。

 魔装雅楽をこんなしょうもないことに使うなんてどうかしている。

 神楽坂さんは俺に抱き着き、そこそこ豊満な胸を俺の背中に押し付ける。

 抵抗したが、彼女の体がなかなか離れない。完全に両手でロックされた。


「離せ! 俺を一人にしてくれよ!」


「イヤよ! 私はアナタと一緒に住む。もう決めたことなの!」


「なんでだよ!」


「私はアナタの力の秘密を知るまでこの部屋から出ないから!」


「俺の秘密? そんなこと校長代理か幼女に聞けよ」


「二人が教えてくれないから、私は知るために必死なんじゃない!」


「なら、全てを教えたら帰ってくれるのか?」


「いや、帰らない」


「なんでだよ」


「同居すると決めたから」


「この人、言っていることが支離滅裂なんですけどー!」


「と・に・か・く、逃げ場なんてないのよ!」


 彼女は俺の胴回りに腕を回し、俺の体を力強く持ち上げる。

 徐々に足が浮き――まさか……マジかよ!?

 神楽坂さんは強烈なジャーマンスープレックスを行うつもりだ。

 もちろん俺に逃げ場なんてないので、痛みに備えるだけだ。


 そして――


「ぐふっ!」


 ――木製の床に頭部を打ち付けた。


「お……俺に、秘密なんてない。俺はただの能力値【零】の最弱野郎だよ」


「ありえない。アナタの体には絶対に秘密がある! 身体的能力は尋常じゃないわ。きっと体に秘密がるのよね。だから全身の筋肉を見せなさい!」


 彼女はジャーマンから体勢を変え、ぐったりする俺の体の上で馬乗り状態になる。


「脱げ、脱げ! 私の裸を見たんだから、アナタも公平に裸を見せなさい!!」


「筋肉関係ねーじゃん!? あと、今朝、風呂で俺の裸を見たじゃん」


「一回だけね! アナタは私の裸を二回見たけど、私はアナタの裸を一度しか見ていない」


「異議あり、俺は君に裸を一回、下着姿を一回見たが正しい!!」


「確かに……。じゃあ、アナタの下着を見せなさい!! 私は公平じゃなきゃイヤなの」


「なんでそうなるの!?」


「アナタが恥じらうまで思う存分下着姿を見てあげるわ!」


 神楽坂さんが力づくで俺のズボンを下ろそうとする。

 最初は真面目な表情をしていた神楽坂さんだが、徐々に彼女の顔が真っ赤に染まる。

 次第に目を回し、冷静な判断ができない状態へとなっていく。


「ぐへへ、服を脱がせてやる。志樹の腹筋に触れるまで私はあきらめない。ふふふふふ」


「変態だぁああああ! この人変態です! 俺以上の変態です!!」

 

 どんだけ俺の下半身が見たいんだよこの女。俺は意地でもズボンだけは脱がされないぞ。

 彼女は自分の体から突き放すため、両手を前に突き出した――ポヨンッ……。


「ヒッ!」


 ポヨン、ポヨヨン。俺の手の中に彼女の柔らかいバストの感触が広がった。

 そこそこなバストなんて言ってバカにしていたが、これはこれでいいな。


「OH……ぱい……」


「ゆ。ゆゆゆ許さない! 私の体を見るだけでは飽き足らず、手を出すなんて重罪!!」


「ちがっ! これは俺の意志ではない。事故だ! 不可抗力なんだよ!」


 正気を取り戻した彼女の目に光が戻る。恥ずかしさが頂点に達して怒りへと変わる。

 彼女が手を振り上げると、神楽坂さんの肘が靴棚にぶつかる。

 ガタッと棚の上に置かれていた花瓶が倒れてくる。

 

 ピチャッ! 


 花瓶の中に入っていた水が勢いよく彼女にかかる。

 神楽坂さんの髪は濡れ、俯き「クシュンッ……」と可愛らしいくしゃみをする。


「だから言わんこっちゃない。このままじゃ風邪ひくぞ……」


 彼女を俺の上からどかす。震える彼女の姿はいつもより小さく見えた。


「私はアナタの秘密が知りたいのよ……」


「はいはい。分かったから」


 このまま玄関に放置しておく訳にはいかない。しょうがないなー。

 俺は立ち上がり、脱衣場へと向かう。タイルを手に取り、彼女の方へと投げた。


「し、き?」


「濡れたままだと風邪ひくだろ。ドライヤーを探すから、その間に風呂にでも入れ」


「でも、私に出ていけって言ったじゃん……」


「風呂は入った方がいい。体が温まる」


「……うん」


 彼女は小さく頷く。立ち上がり、俯いたまま俺を横切って脱衣所にへと入る。

 さて、ドライヤーはどこにしまってあったかな。クローゼットのどこかだった気がする。

 俺はやれやれ、と小さくため息をつき、ドライヤーを探し始めた。

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