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第五章・第二話 正しい選択とは

 俺は始業式が始まる時間まで部屋で寝ていたかったが、イザベラが「朝練の時間よ」と言って俺を強引に家から連れ出す。彼女は朝っぱらから元気よく体を動かし、俺は無気力にそれを避ける。

 今朝の朝練は対人戦を想定したガチのタイマン勝負。しかし、俺に戦う意志はなかった。

 やがてイザベラも俺のやる気のない姿を見て、何かがおかしいことに気が付く。

 彼女はその理由を尋ねてくるが、俺は一切答えることはできなかった。


 そんな時だった。そばからは俺でも彼女でもない、第三者の声が耳に届く。

 声のした方向へと視線を向けると、そこには俺らと同じ二年生の郷間ウェイの姿が。

 彼がわざわざ俺らの前に現れた理由は、イザベラに俺の秘密を伝えるためだった。

 郷間は一枚の写真を取り出し、イザベラに渡す。

 そこに写っていた人物は黒い魔力をまとう怪物。それがイザベラが探している人物だ。

 イザベラが誰なのか問いただすと、郷間は素直に答える。

 写真の人物は御影志樹だ。御影志樹は神殺し一族の一人なんだ……と。


 俺の世界が凍り付いた。掛け替えのない存在であるイザベラに知られてしまった。

 絶望しかない。絶望以外の言葉が見つからない。

 彼女は写真を見つめ、眺め、凝視し――郷間に叩き返して自分を否定した。


「嘘! 嘘! 噓! ゼッタイに嘘! そんな嘘で私を取り巻きにしようなんて甘いのよ! シキはね、優しい人間なの。誰かを殺したりなんて絶対にしない! ありえないわ……ありえない……」


 彼女は自分を否定した。しかし後半になると徐々に声が小さくなる。

 きっと俺が昨晩伝えた話を思い出しているのだろう。

『封印された力』『暴走』『魔力に覆われた姿』『30人自主退学事件』

 郷間の言葉と、俺が隠していた真実が彼女の脳内で繋がっていく。

 彼女は気づいていた。気づいてしまったからこそ否定することをやめた。

 あの写真に写っている人物は間違いなく俺だ。そして事件を起こしたのも俺だ。

 イザベラの表情が絶望的な物へと変わっていく。彼女は俺の方へと視線を向ける。


「嘘……よね?」


「……」


 ここで否定しても、それはイザベラに対する裏切りだ。だから俺は黙り込んだ。


「シキ……なんで否定しないの……なんで、黙ってるのよ……!!」


 彼女が俺の体へと身を寄せ、力強く襟首を掴んでくる。俺は――目を背けた。


「ゴメン……。本当に……ゴメン……」


 俺の両親の命が奪われた理由は簡単だ。彼らは神殺しの一族を裏切って逃げ出した。

 そんな変わり者である両親の背中を見て育った俺は、神を殺そうなんて考えない。

 だからこそ、平然と祭祀学園に通っているんだ。俺も変わり者だからだ。

 俺は未来を、そして今を、こうして生きている。前向きに頑張っている。

 神殺しの一族とは完全に縁を切っている。俺にはもう関係ない組織だ。

 でも、過去は変えられない。どんなに前向きに努力しても過去が付きまとう。

 奪われてしまった命が返ってくることはない。だからひたすら謝るんだ。 


「シキは……私を騙していたの……?」


「違う! そんなつもりじゃなかった……そんなつもりじゃなかったんだ……」


 彼女は涙を流す。歯を食いしばり、今まで見せたことのないような表情を見せる。

 湧き上がる怒り、やるせない思い。彼女は俺を体を――投げ飛ばした。

 拳に力を入れる。俺は殴られることを覚悟したが、彼女はその場から動かない。


「おい、クソメイド。僕と一緒に来れば、そこの屑が隠している秘密を全部教えてあげるよ」


「……」


 黙り込むイザベラを横切り、郷間が方へと近づいてきた。

 彼は不気味な浮かべてしゃがむ。俺の方を生暖かい目で見つめていた。


「どうだい志樹君。君は僕から仲間を奪った。だから今度は僕が君からすべてを奪う」


「……」


「辛いよね~、悲しいよね~、痛いよね~、胸が痛むよね~」


「……」


「何か言えよこのゴミが!」


 彼は俺の髪を掴んで頭を持ち上げる。そして力強く地面に叩きつけた。

 痛みはもちろんあった。だが、なんだか痛みに反応する余裕はなかった。

 郷間が言っていることは分かる。仲間を失うことがどれほど辛いことか。

 俺は彼から29人の仲間を奪った。彼らは全員、心が折れて退学した。


「僕の魔装雅楽はね、僕を思う人間コマの数で強さが決まる。だから僕は金で僕を信じる人間を増やしてきた。人間なんて愚かな生き物だ。金さえちらつかせれば、全員が僕をあがめる」


 金で買ったものを友達と呼べるのだろうか。友達の価値観は人それぞれだ。


「なのにあの小此木なんて名前のゴミ女は僕の最高に笑えるジョークに噛みついてきた。君をゴミと呼んだのに『志樹はゴミじゃない~!』なんていうんだ。これはもう潰すしかないでしょ。まぁ、結果的に僕は大切なおもちゃを29人も失い、弱体化してしまった訳だけど……。って言っても所詮は29人か。29人のゴミが消えても僕にはまだ僕に尊敬の念を向ける人間こまが沢山いるからいっか」


 彼は話すことに飽きたのか、ケロッとした顔を浮かべて立ち上がる。


「僕は君が苦しむ顔が見たいだけなんだよ~~~。さて、クソメイド、行こうか?」


「行かない……」


「へぇ~まだ自分が見た物を否定するんだ。ほらさ~さっさと信じて楽になりなよー。僕に付いてくることを約束すれば、君が知りたがっている真実をすべて教えるからさ~」


「……」


 イザベラは唇を噛み締めた。彼女の性格は知っている。全てを知りたがる性格だ。

 それがどんなに残酷な秘密であろうと、彼女はそれを知りたいと願う。

 いいんだ。これでいいんだよ。イザベラ、君には全てを知る権利がある。

 彼女は申し訳なさそうな表情のまま、郷間ウェイの隣へと移動した。

 それが君の出した答えなら俺はそれを否定しない。けれど、それでも……。


「郷間ウェイ――」


「様を付けろこのゴミが!!」


 彼は力強く俺の顔を蹴った。痛みが駆け巡り、鼻から血が垂れるのを感じた。

 

「郷間ウェイ様、お願いだ……イザベラには真実を伝えないでくれ……」


 自分勝手な願いなのは分かる。それでも俺は、彼女の知られたくはないんだ。

 そんな俺の希望とは裏腹に、郷間は「はぁ?」と眉間に皺を寄せる。


「寝言は寝て言え。あ、そうだ! 最高のアイディアを思いついたよ!」


 彼は、おもちゃを買ってもらった時の子供のような無邪気で明るい笑みを浮かべる。


「チャンスタ~~~イム!! さぁ、志樹君、選んでいいよー。クソメイド一人に秘密を知られるか、全校生徒に君の秘密を知られる。君の弱みは僕が握ってんだ。僕は君の目的も知っている。さぁ、どっち?」


「……」


「クソメイドに知られれば、彼女がわざわざ学校に言う事はない。なぜなら彼女が君を殺すから~~~。君が逃げ惑えば、卒業まで生き続けられる確率は上がる。で~も、学校に知られれば――」


 当然選ぶべき答えはイザベラに知られるだ。学校に知られらたら俺は逮捕される。

 隠し通してきた秘密は世間には知られてはいけない事実だからだ。

 だが、答えることはできなかった。やっぱりイザベラにも知られたくはないんだ。

 考えろ。もう一度何が正しい選択か考えるんだ。

 俺の目的はあくまでも卒業することだ。現代魔闘士学園卒業証明書さえ手に入れば、この世界は俺のことを一人前の人間として認めてくれる。間違った選択をしてはいけない。

 この世界で生きていくためには、証明できるものが必要なんだ。


「早く答えろ! 僕は忙しいんだよ! 早くしないと始業式が始まってしまう!!」


「俺は……」


「お前は?」


「郷間様には逆らわない。……好きなようにしてくれ」


「フフフ、その表情だよ。僕は君のその顔が最高に好きだ。いい顔だよね~絶望って」


 満面の笑みを浮かべ、彼はその場で陽気なステップでスキップをし始める。


「今日からこのクソメイドは僕の私有物だ。ねぇ、志樹君。彼女を好きなようにしていいんだよね? 煮るなり、焼くなり、していいんだよね? いいんだよね?」


「それは彼女自身に聞いてくれ……」


「は~い! 分かりました~~~熱く燃える意志! ほとばしる復讐! まさに青春!!」


 郷間がイザベラの肩に触れようとした瞬間、彼女が「触らないで」と手を払いのける。

 拒絶された彼は、一瞬だけ嫌そうな顔をしたが、すぐに顔が笑いへと変わる。


「まぁ、いいさ。時期の僕に抗うことができないほど、惚れさせてあげるから」


 今のイザベラには、郷間の言葉など耳に届いてはいない。彼女は俺のことを見ていた。

 恨み。つらみ。憎しみ。殺意。の感情が入り乱れた目で俺を見下している。

 家族の仇かもしれない男が目の前にいるんだ。そんな顔をされるのは当然のこと。

 彼女は最後の最後まで俺を信じてくれた。だが結果的に俺は彼女を裏切った。

 申し訳ない。本当にゴメン。そんな言葉しか俺の頭の中には残ってはいなかった。


 やがて郷間ウェイとイザベラが仲良く歩き出し、学生寮の裏から遠ざかっていく。

 校舎の方からチャイムの音が聞こえてきたが、俺がその場から移動することはなかった。

 卒業するためにはたぶんこれが正しい選択だったのだと思う。これでいいんだ。

 二人が消えた後、俺も歩き出した。向かう先はもちろん自分の部屋だ。

 今日は妹たちの大事な入学式だが、俺がそこに行くことはない。そんな気分ではない。

 きっと式では祭祀学園魔装雅楽闘技祭の話もされるだろうけど、俺には関係ない。

 学校を無断で休んだら、先生に怒られるかもしれないが……もうどうでもいい。

 後先のことなんて考えられない。なんだか今日は疲れたよ。だから帰る……。


 ◆   ◆   ◆


 その後、俺は自分の部屋に戻った。今頃、イザベラはすべての真実を聞かされているだろう。

 とても辛いことだ。だが、これが現実なんだ。俺にはどうすることもできない。

 彼女はもう帰ってはこない。きっと俺が済むこの部屋に戻ってくることはないだろう。

 前の状態に戻っただけだ。孤独な生活が始まる。別に悲しむことはない。

 ベッドで横になり、上を見上げていた。考え込んでいると、やがて眠くなってくる。

 そうだ。寝よう。俺は瞳を閉じて、ゆっくりと眠りについた。


 ×   ×   ×


 外から聞こえてくる生徒の声で目が覚める。おそらく帰宅する生徒の声だと思う。

 上体を起こし、時計へと視線を向ける。時刻は夜の3時だ。やはりな。

 今日は初日だ。まだ部活に入っていない生徒が、学生寮に戻ってきたのだろう。

 まぁ、どんなに生徒が帰ってきても、俺には関係ない。何も関係ないんだ……。

 別に眠くはなかったが、俺は再び横になり、何も考えずに上を見上げる。


 ×   ×   ×


 たぶん三時間くらいが経ったのだろう。お腹が鳴ったので、そろそろ何かを食べるか。

 上位を起こしてカーテンの外へと視線を向ける。外はもう暗くなっていた。

 時刻は夜の六時だ。結局一日中寝ていたよなものだな。本当に情けない話だ。


 部屋を見回す。静かな部屋だ。台所や居間、どこにもイザベラの姿はない。

 俺は彼女を自分から遠ざけるために酷いことを言ってしまった。少しだけ後悔している。

 もっとうまいやり方はなかったのだろうか、もっと違う方法があったのではないだろうか。

 いくら考えてももう遅い。過去は変えられない。それが人生ってやつだから。

 

「案外この部屋も広かったんだな……」


 この数日間、誰かが隣にいることが当たり前だったから、一人だとなんだか寂しい。

 しかし、これも当然の結果だ。

 恨むなら暴走した自分を恨め。

 自分を制御できなかった自分を恨め。 

 ベッドに腰かける。悔しんでいる。これから俺はどうすればいいんだよ。

 考えていると、部屋のインターフォンが鳴らされる。

 もちろん無視した。俺を殺しに来たイザベラかもしれないから。

 ピンッポーン。ピンポンピンポンピンポンとしつこく何度も何度も鳴らされる。

 無視しているのしつこく押されるインターフォン。さすがにウザい。

 こんな幼稚な行動をイザベラは取らない。だとしたら誰だよ?

 可能性として考えられるのは妹たちかもしれない。

 ドアを開けたくはなかったが、妹たちだった場合、後々面倒なことになる。

 俺は重い腰を上げ、足を引きずりながら、無言で玄関先へと向かった。


 ドアを開けるとそこに立っていたのは首からカメラをかけた眼鏡の女子生徒だった。

 彼女の苗字は浦和うらわだ。名前は知らない。三年生で、報道部に所属している。

 俺は彼女に嘘の記事を書かれたことがある。つまり、少しだけ恨みを抱えている。

 このことに関して彼女も重々承知のはずだ。なら、どうして俺の前に現れたのか?


「浦和です」


「知ってる」


「感動の再会早々、無言で殴ってくるかと思いました」


「殴られると思うなら、恨みを買うような記事は書くなよ。用がないなら帰ってくれ」


「はて? なんだかテンションが低いですね」


「今は誰とも喋りたくはないんだよ」


「意味深ですね」


「どうでもいいから早く帰れよ」


 俺はドアを閉じようとしたが、彼女が自分の靴を挟んで閉じるドアを強引に止めた。

 

「っはぁー……早く要件を言え。俺は疲れてんだよ」


「その前に、一つだけ確認させてください」


 そういうと、彼女は玄関先で靴を脱ぎ、ガツガツと部屋に入り混んできた。


「なっ!? お前は何をしてんだよ!」


「情報を提供する前に、確認が必要なのです。見間違いである可能性もあるので」


「だから情報ってなんだよ! 何が見間違いなんだよ」


「神楽坂イザベラについてです」


「……え? なんでそこでイザベラの名前が出てくんだよ……?」


 彼女はある程度部屋を歩き回り「なるほど」と呟いた。何を納得したのか。

 浦和先輩は詳しい説明をしないまま玄関先へと戻り、靴を履いた。


「あのファッションメイドは部屋にいないんですね。何かあったのですか?」


「いろいろな。それより、早く用件を言え」


「はい。確信へと変わったので真実をお知らせいたします。神楽坂イザベラは――」


 彼女は瞳を閉じ、再び開いた。


「――魔女狩りにあっています」


「ハァ?」


 そして彼女の口から出た発言に俺は言葉を失った。

 魔女狩りについては以前本で読んだことがある。裏切り者を選び、その人物を殺すことだ。 

 だが、なんでイザベラがそんなめに? なぜ? どうして?

 あらゆる疑問が頭の中を飛び回る。どう考えてもこんなことはありえないことだ。

 

「神楽坂イザベラは校庭に設けられた十字架に縛り付けられ、郷間の炎により燃やされています」


「なんでだよ!!」


 さらに訳が分からない。郷間ウェイとイザベラは仲間になったんじゃないのかよ。


「詳しい理由は残念ながら分かりませんが、郷間はイザベラのことを神殺しの一族と主張しています」


「ハァ!? バッカじゃねーの!!」


 神楽坂イザベラが神殺しの一族な訳がない。そんなことは誰が見ても当然のことだ。


「証拠はあんのかよ」


「いいえ、神楽坂イザベラが神殺しの一族と言う情報は何もありません。だからこそ、私は証拠すらないのに嘘の情報をバラまく人間が大っ嫌いなんです」


 浦和先輩がそんなことを言ってもなんの説得力もない。アナタだって嘘の記事を書くだろ。

 証拠や資料なんて、会話の一部を切り取って嘘に聞こえるようにするだけ……。

 この人もひどい人間だとは思っているが、それよりも郷間は何千倍もひどい人間だ。


「多くの生徒が彼の言葉を信じています。沢山の生徒が見る中、彼は宣言していました。6時半になったら全員で一斉に攻撃を開始する。神殺しの一族は俺ら全員の敵だ!!」


 共通の敵を作ることによって団結力が高まる。それがどんな形であろうと。

 クソッ、あと15分で一斉攻撃が始まるのか。なんでこんなことになってんだよ。


「誰も彼女を助けないのかよ?」


「はい。皆、この学園の生徒も口には出しませんが、神殺しに恨みを抱えている生徒が多く存在します。郷間ウェイは有名人、対してイザベラは二年生で転入してきた未知の存在。彼が神楽坂イザベラのことを神殺しの一族の人間だ! と言えば『そうかもー』と信じてしまう生徒もいます。だからこそ、神殺しの一族の人間を助けようとする人間などそもそもいないのですよ」


 酷い。どうして郷間ウェイは突然そんな狂気的な行動に出たんだよ? ――まさか。


「そういえば」

 

 郷間ウェイは確かに言っていた。イザベラを煮たり燃やしたりすると。

 あれは言葉のあやではなく、本当のことだったんだ。

 アイツは本当に恐ろしい男だ。自分を偉大に見せるために共通の敵を作り上げたのか。

 彼が皆の代表として魔女を狩れば、周りはそれだけで彼を尊敬する。

 向けられた尊敬や崇敬の分だけ、彼の魔装雅楽は強くなっていく……。

 あの男の目的は二つ。俺を苦しめることと他人を利用して強くなること。

 

「私は戦闘向きではないので戦えない。……だから、誰かにあのゴミ野郎を倒してほしいのです」


 誰かに倒してほしい? そんな必要は本当にあるのだろうか?

 だってイザベラは強い。きっと格下である郷間にだった勝てる。

 それにこの学園には強いやヤツなんて沢山――はいないのか。全員、転校してしまったから。

 この学園には俺よりも強いヤツが少しだけ残っているはずだ。

 そうだよ。ゴリラ先輩や紗代先輩だって高三なんだから強いはず。

 俺みたいな魔力も能力値もゼロなヤツに出る幕なんてない。


 本当か?


 イザベラの置かれている状況を知っても尚、知らないフリをして部屋にこもれるか?

 浦和先輩が俺に何を求めているのかは分からない。だが、俺には無理なんだよ。

 俺はそんなに強くはないし、そんなに意志の強い人間ではない。

 祭祀学園に通う理由だって、卒業証書を手に入れるためだ。それ以外は関係ない。

 誰が死のうが、誰が闘技祭に出ようが、誰が祭囃子になろうが俺には関係ない。


「……」


 関係ない。関係ないんだ。彼女は復讐に燃える生徒。そしてターゲットは俺。

 彼女は俺を殺そうとしてんだぞ。わざわざ助けに行くこともない。

 このままイザベラが燃やされれば、俺は晴れて自由になる。

 郷間ウェイに頭の中を下げ続けていれば、どうにか卒業までは生き残れる。

 

 本当にそれでいいのか?


 良い訳がない。自分でとんでもない酷いことを言っていることは分かる。

 だが、俺は死にたくはない。俺の命には両親の願いが込められてんだよ。

 卒業することが優先事項だ。助けることは二の次……。


「……」


 何が正しい選択なのか分からない。頭の中をぐるぐると単語が飛び回る。

 見て見ぬふりをすることが正しい選択なのか? それとも行くことが?

 眉間に皺を寄せて考えたが、この問の答えはそう簡単には出なかった。

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