第三章・第四話 嘉陽姉妹登☆場
新入生歓迎祭を満喫していた俺らは、何者かに監視されていた。その人物が誰だか特定するために俺は人で賑わうお祭りエリアから離れ、人が少ない祭祀神社へと向かった。
そこに付くと、堪忍した犯人はようやく姿を現す。その正体は報道部の浦和先輩だったのだ。
彼女はイザベラにいくつかのい質問をして、その音声を元に嘘の記事を書こうとした。
それを阻止しようとした俺だが、隙をつかれてまんまと浦和先輩に逃げられてしまう。
探すあてがない。落胆していると、お祭り通りの向こうから謎の生徒が近づいてくる。
彼女は『メイド喫茶を手伝って!』と言い、なんの説明もないまま俺らを連行した
そして今、三階にある調理室は戦場と化していた。六人の男子生徒が汗を流す。
高校二年生で、このクラスの出し物とは一切関係ない俺までなぜかここにいる。
しかも先輩方と肩を並べ、何も違和感なくフライパンを握っていた。
「何してんだ! 早く次のオムライスを作らないか! 遅いぞ新入り!!」
「はい!」
元気よく返事をする。なんだこの地獄は。なんで俺、料理なんてしてんだよ。
予定が狂ったどころの騒ぎではない。本当なら今頃はベッドで仮眠を……。
「新入り!! 考え事をする暇があったら手を動かせ!!」
「すいません!」
オムライス担当の俺はフライパンを巧みに操り、ケチャップをぶち込んでライスを炒める。
隣では三年の先輩と思われる男性が泣きながら卵を焼いている。
どうして人はこんな苦労してまで祭りを盛り上げるのか? 俺にはまったく理解できない。
いつも俺はメニューを頼む側の人間だから、作る人の苦労なんて知らなかった。
いや、そもそもなんでこんなに熱いんだよ。男熱なの? なんで湯気出てんの?
調理場のど真ん中には皆に指示を出しているゴリラのような体格の先輩がいる。
彼に見られていると、自然と体が熱きなり、頑張ろうって気になる。
「やぁああああああれんそうだんそうだん、はいはい!! おいそこ! 腕が止まってるぞ! 新入りで、尚且つ助っ人だからって手抜いたらしばくぞ! 最高の料理を提供するんだ!!
「はい! すいません」
「お客様を満足させる料理が作れれば、それだけでこのクラスの株が上がる。毎年行われている、三年生の最優秀出し物賞で金賞を取るぞ!!」
「「「「おぉおおおおおおおおおお!」」」」と先輩方が一致団結して叫ぶ。
俺も「おぉー」と小声で行った。三年の出し物賞、俺には一切かんけーねー。
それより、この地獄はいったい、いるになったら終わるのだろうか。……熱い。
× × ×
体力には自信がある方だ。だが、なれない運動をするとやはり疲れる。
ノルマであるオムライスつくりを終え、俺はコンロの火を消して一息つく。
「おい助っ人、ご苦労だったな。田中が戻ってきたから、お前はもうあがっていいぞ」
「そうですか。ありがとうございました。いやー、熱いですね」
「アァーハハハ! みんな本気だからな!!」
気付けばあれから二時間が経っていた。ガチコースかよ。ようやく解放されるのか。
まさに喜びだ。これほど生きていてよかったと思ったことはない。
今度からもっとちゃんと料理の練習をしておこうと心から思った。
「ところでお前、俺のクラスの生徒じゃないな。お前は誰だ?」
「俺は二年生の御影志樹です」
「二年だと? ……ちょっと待て二年生!?」
「はい」
「沙代の野郎、助っ人を連れてくるって言うから、てっきり三年の違うクラスの奴を連れてくるかと思ったが……まさか後輩を捕まえてくるとはな。君、すまないことをしたな」
「いえいえ、今更謝れれても困ります。それに、貴重な経験ができたので」
「そうかそうか! じゃあ午後も手伝ってくれるか?」
いいともー! なんて言うわけねーだろ。俺は今すぐ妹を迎えに行くんだよ。
「できればそれは遠慮したいです」
「アハハそうかそうか! じゃあ、俺が魔装雅楽であるポンゴを演奏してやろう」
「できればそれも遠慮していただきたい」
ゴリラっぽい顔の先輩がポンゴなんて叩いたら次からゴリラにしか見えなくなる。
間違って先輩のことを『ゴリラ』と呼んでしまったら怒られることは確実だ。
彼は高校三年生の先輩だ。きっと俺よりも強いに決まっている。
「なぁ、御影よ。お前が二年と言うことは、お前と一緒に来たあのメイドも二年生か?」
「はい。そうですけど」
「実に助かる。彼女が来てからメイド喫茶はさらに大繁盛だ。名はなんと言うのだ?」
「彼女の名前は神楽坂イザベラです」
「ほう。神楽坂かー……ん。神楽坂? ……御影志樹……どこかで聞いたような……あ!」
彼はズボンのポケットの中から一枚の記事を取り出した。
その右上には『報道部新聞』と書かれている。
悪い予感が押し寄せる。記事のライターの名前は浦和だ。
「見せてください!!」
ゴリラ先輩から記事を奪い取り、即座に目を通す。何々、あの女、何を書きやがった。
『御影志樹と神楽坂イザベラ、夜のオールナイト。メイドと主人の共同作業? ポッ』
記事の上には俺とイザベラが見合う写真や射的エリアで体を密着させたときの写真が載せられる。
顔はモザイクで隠され、目の部分には黒い棒がある。肖像権の侵害にはなっていないのか。
この写真からではこの二人が誰なのか分からないが、俺が今のように自分の名前を名乗った場合、この写真の人物が俺だと知られてしまう。なんとも迷惑でゴミ屑のような記事だ。
しかも下の方には『衝撃の生音声! → URL https://』と書かれている。
きっとさっき浦和先生がテープレコーダーで録音した音声が聞けるのだろう。
生徒が動画のリンクをスマホに打ち込んで飛べば、それだけで再生数がかせげてお金が入る。
報道部。さすがは非公式の部活だ。やることがゲスの極だな……。マスゴミ過ぎる。
俺はその記事を手で切り刻み、厨房のゴミへとぶち込んだ。あの女、やりやがったな。
「御影志樹君と言ったか」
ゴリラ先輩がいきなり姿勢をよく背筋を伸ばしていた。なんだコイツ。
「最近の高校生活は刺激的なんだな……ゴリッ。共同作業って具体的にはどんなことだね?」
「誤解ですよ。俺とイザベラはそんな関係じゃありません。ただのルームメイトです」
「安心しろ。俺は分かっている。とりあえず教室のテーブルに座ってリラックスしたまえ。俺が君のために特性ニンニク入りのオムライスを作ってあげる」
彼は俺の背中を押して調理室からホールと化した教室へと誘導する。
「先輩、なんでニンニク入りなんですか? 臭くないですか?」
「ふふふっ、夜は何かと体力を使うだろ。今夜も神楽坂君との共同作業を頑張りたまえ!」
「なんだこの人、全然、分かってないじゃないか!」
先輩の優しい笑みが憎い。やめて、そんな汚らわしい目で俺を見ないで。
本当に誤解なんだよ。俺をイザベラはクリーンで健全な関係なんだよぉおおおお!
◆ ◆ ◆
ホールは生徒で賑わっていた。ホールと言っても元は教室だ。
机はどこか違う部屋へと移されていたが、それの代わりに四人くらいの生徒が囲める丸いテーブルが八つほど置かれていた。椅子は授業用の奴をそのまま使っているので木製の堅いヤツだ。
俺は窓際の席に座り、リックスしながらここで働く三年生のメイドさんたちを眺めていた。
「シキ、なんで他のメイドばかり見ているのよ……」
「なんていうか、イザベラよりもメイドっぽいなって」
「それ、どういう意味?」
俺の向かいの席には、仕事を終わらせたイザベラが座っている。かなり疲れた様子だ。
「言葉通りだよ。だってイザベラってメイドのコスチュームを着ているだけで、あまりメイドの作法とか知らないでしょ? なんていうかファッションメイドなんだよね」
「それは……そうだけど……」
イザベラは「んー」と喉を鳴らし、難しい顔をし始めた。何かを考えているのだろう。
そんな中、隣のテーブルに座っていた男子が手をあげてとあるメイドさんを呼ぶ。
「すいませーん。メイドと一緒に座るサービス、俺も頼みたいです」
だが、呼ばれた先輩メイドは苦笑いをしながら、頭を軽く下げる。
「すいません。当店ではそのようなサービスは行っておりません」
「えぇーでもあの男のテーブルにはメイドがいるじゃん」
「あの子はメイド喫茶のメイドではなく、あの方のメイドなので」
「ちぇー、そうなのかよ」
この数分間、俺は何度もこの質問を耳にした。ほぼ全男子がいちいちこのクラスの先輩メイドさんたちに同じ質問をしている。客が入ってくるたびに訊かれるメイドも大変だよな。
「イザベラ。メイド喫茶でメイド服だとなんかあれだな。メイド喫茶の人に迷惑っぽいな」
「それはそうだけど、そんなこと言われても困るわよ。私の唯一の制服はシキが初日の試合でビリビリに粉砕してしまったし、新しい制服が届くまでメイド服しかないのよ」
「お、おう。それは申し訳ない」
「っはぁー、メイド喫茶って大変ね。もう一生やりたくないわ」
「アハハ、俺も料理は自分のペースでやりたいな。急がされるのは苦手だ……」
二人同時に机に突っ伏した。人付き合いって大変なんだな。部屋に帰りたい。
「あっ」
何かを思い出したのか、彼女は勢いよく顔をあげた。
「なんだよ?」
「何か忘れているような気がするんだけど」
「奇遇だな。実は俺も何かとても大事なことを忘れているような気がする」
なんだったかな。数分前までは覚えていたような気がするんだが……。
そんなとき、スマホが鳴った。何かを思い、画面を見て見ると――
「うわっ!? 着信120件!?」
履歴が半端ない。厨房が音がうるさかったから着信音が聞こえなかったのか。
電話の相手は日和と比奈乃。まさに姉妹たちのダブルパンチ状態だった。
そういえば迎えに行くといったきり、そのまま放置だったんだよな……。
どうする。今から電話をかけて探しに行くか? そうだな、そうしよう。
立ち上がろうとした瞬間、チャリンッと言う自転車のベルの音が聞こえる。
「いたぞ。ワタチの鼻にかかればたやすいことだ!」
「この声は!?」
後ろの出入り口りにいたのは三輪車に乗る幼女校長だった。彼女が俺を指さす。
鼻にかかればとはどういう意味なのだろうか。まさか俺を探していたのか?
疑問を浮かべていると、廊下から二人の女子生徒が姿を現す。
彼女らはメイド喫茶に飛び込んでくる。一人はセミロングともう一人はロングだ。
「ようやく見つけたぜ兄ちゃああああああん!」
「お兄ちゃん。もう逃がさない。離さない。そして離れない」
聞き覚えのある声が耳に届く。入ってきた二人の女子は、何を隠そう俺の妹たちだ。
無駄に声の大きいセミロングの方が長女の日和だ。髪の長い方が妹の比奈乃だ。
日和が俺にドロップキックをくらわし、俺は後方へと倒れる。
「嘉陽姉妹!!」「登☆場。おー」
日和に四の字固めをお見舞いされる。なんでいきなりプロレスごっこなんだよ。
「ギギギギ、ギブギブ。再会早々プロレス技はダメ。腕が折れる!!」
「アハハハ、さすが兄ちゃん。今日もナイス関節だぜ!」
「うぎゃぁあああああああ!」
「私を待たせておいて一人でメイド喫茶なんて生意気だぞ兄ちゃん!」
「あ、謝るよ!。ごめん!!」
「お兄ちゃん。比奈乃を待たせた罰……体で払って」
比奈乃がロープを取り出し、なてた手つきで俺を縛りあげる。
この動き、腕を上げたな。数年前とはまるで別人のような手際の良さだ。
お兄ちゃんは嬉しいよ。成長した妹たちを体で感じることができて。
「……」
イザベラは何も言わず、襲撃を受ける俺を無言&無表情で見ていた。
「……」
四の字固めをされると、どうしても相手の胸が俺の手の甲にあたってしまう。
「日和、お前少し胸が大きくなったか? よい美乳だと兄ちゃんは思うぞ」
「さすが兄ちゃんだぜ。私の成長に誰よりも早く気付くとはさすがだな!」
「お兄ちゃん。比奈乃の胸も確かめて。比奈乃も頑張って牛乳飲んだ」
髪が長すぎるせいで顔が見えない妹が、俺の腕を掴んで自分の胸に押し当てる。
「ほう。比奈乃も大きくなったか。姉を超えている。姉妹揃って成長したな」
「ありがとうな兄ちゃん!」
「フフッ、嬉しい」
「……」
俺の笑顔とは裏腹に、イザベラの冷たい視線と絶句の感じが見ていて痛い。
お客である周りの男性陣も羨ましそうね殺意を俺の方へと向けている。
それを見ていたひとりの男子が手をあげて、高三メイドを読んだ。
「メイドさん。僕にもあの妹二人と密着できるサービスをください!」
「申し訳ないですが、当店ではあのようなサービスはございません」
「そうですか……そうですよね……クソォガッ!」
男性陣が一斉に肩を落とす。周りの殺意が先ほどよりも強烈なモノに変わる。
俺は見られるのが嫌いな人間だ。これ以上見られたら蒸発してしまう。
「ところで兄ちゃん。そこで私たちのことをじっと見ているメイドは誰だ?」
「比奈乃、女に見られるのはとっても不愉快……ねぇ、あのメイドを潰していい?」
「潰すのは良くない。アイツは俺のかけがえのない大切なルームメイトの神楽坂イザベラだ」
「神楽坂イザベラ? ……どこかで聞いたことあるような名前だな」
「日和お姉ちゃん。たぶん神楽坂財閥、奇跡の生き残りだと思う」
「あ! 思い出した。パパが話していた手術費を出した人か!」
手術費? なんの話だ? 今、俺の知らない会話が行われたような気がする。
「日和お姉ちゃん、ズレてるよ。出したのは彼女の母親の手術費だよ」
「アハハハハハハ、まぁまぁ、細かいことはいいじゃないか!」
気がするではなく、確実にしていた。イザベラの母親の手術費ってなんの話だ?
そのことを聞こうとしたとき、今まで無言だったイザベラが立ち上がる。
イザベラは俺らの元まで歩き、蔑みのまなざしを俺の方へとむけてくる。
「なんなのアナタたち、いきなり来たと思ったらシキに飛びついて、しまいには四の字固め?」
「アハハ、姉妹だけにしまいにはってか!」
「面白くない。で、何? ロープ、緊縛? 校内で密着しすぎでしょ!!!」
「あぁん? 文句あんのかいメイドさん!」
「お兄ちゃんと比奈乃の邪魔は誰にもさせない。パパが許しても比奈乃が許さない」
妹二人も立ち上がり、イザベラとガンを飛ばしあう。火花が眩しいんですけど。
これは誰が見てもよくない展開だ。このままでは喧嘩するに決まっている。
「シキを返して」
「イヤだ」「拒否する」
「シキは私のご主人様なのよ!」
「いいや、兄ちゃんは兄ちゃんだ」「お兄ちゃんは比奈乃達のお兄ちゃんだから」
両者一歩も引かない。あぁ言えばこういう。終わりなき見にくい言い争うだ。
だいたい俺は俺の物だ。どちらかのモノになった覚えはないぞ。
「いいわ。貴女たちがそこまで言うなら、勝負で決着をつけましょ」
まずは落ち着け。これだから戦うことしか脳みそのない人間は嫌いなんだ。
この学園において、確かに勝者が全てだ。だが、アレがまだないだろ。
「戦う気満々なところ悪いんだが、三人ともマラ武器の許可が出ていないことを忘れるなよ。許可なく使えば問題になる。それと試合をする場合は、必ず幼女高校の許可を得ないと――」
「許可しゅる! 喧嘩祭りは楽しいからな!!」
あぁ、終わった。なんでこんなところに一番いてほしくない人物がいるんだよ。
「校長権限で特別に試合を許可しゅる! 今日は新入生歓迎祭だ! 日和、比奈乃、思いぞんぶん戦え! イザベラも先輩としての強さを後輩たちに教えてあげるのだ!!」
「幼女校長、ありがとうございます。覚悟しなさい、シスターズ」
「言っておくけど、私らはガチで強いぜ。妹×妹=超絶ハイパー妹パワーだ」
「比奈乃も試合をがんばるぞい。二対一なら絶対に負けない」
三人は廊下へと出ていく。無益な争いと止めようとしたが、足はロープで縛られていた。
ロープの結び目を必死に解こうとするが――かなりきつく縛られているので解けない。
これは幼女校長が許可を出した試合だ。つまり正式な試合。誰も邪魔する人間はいない。
邪魔なんかしたら幼女校長が怒って理不尽な制裁を生徒に行うからな……。
思いっきり職権濫用な気が宇sる。
悩んでいると、廊下の方からイザベラの呪文を唱える声が聞こえてきてしまう。
「【我の意志に名を示せ・魂を刻まれし魔装雅楽】 全てを砕け多照魅火槌!」
こんな狭い廊下であの大きなハンマーを出すなよ。常識的に考えて壁や天井が壊れるだろ。
「兄ちゃんは渡さない。【我の意志に名を示せ・魂に刻まれし魔装雅楽】 毒の元に全てを貫け、亜螺視虎召☆還!」
「【意志の元に名を、雷鳴と轟かせ――銅鑼俱狸】 お兄ちゃんのために負けない」
芋虫のように動いて廊下へと向かった。出入り口のところから三人を見つめる。
イザベラの巨大なハンマーに対し、日和の武器は小さな吹き矢だった。
だが、見た目に騙されてはいけない。彼女の放つ魔道砲は破壊力抜群でなおかつ毒がある。
比奈乃の武器は銅鑼だ。それは打撃武器にも盾にもなる楽器。音で相手を麻痺にできる。
この試合。大体の結果は見えている。予想しよう。はい、未来が見えました。
イザベラと妹たちが暴れて校舎を壊す。そして校長に呼び出しをくらう。
完璧な推理だと思う。これ以外のエンディングが俺には見えない。
「試合、はじめだ!! 戦え!!」
「行くわよ!」
「どこからでも!!」
三人の力がぶつかる。イザベラのハンマーが比奈乃のどらに直撃する。
その衝撃、風圧、反響した音により周囲のガラスが次々と割れていく。
器物だけではなく、そばで見ていた生徒たちも風圧に巻き込まれて窓から放り投げられる。
この高校は一応、現代魔闘士の高校だ。三階から落ちても死ぬ人間は少ない。
でも、だからと言って生徒を傷つけていいという理由にはならない。
「ひどいなぁー」
多くの生徒が三人の戦闘を見ている。隠蔽することはほぼ不可能に近い。
幼女校長は楽しそうに手を叩き、無邪気に爆笑していた。何も面白くない。
誰も三人の試合を止めることはできない。はぁー、鬱だ。
校長代理がこの廊下の被害総額を知ったら頭を抱えて困るんだろうな。
誠に申し訳ございません。三人をとめられなくて心からお詫び申し上げます。
「アハハハ! イザベラ! 日和! 比奈乃! もっとやれー!」
この人は本当に校長なのだろうか。祀られの巫女だからってなんでもできると思うなよ。
あとでこっぴどく校長代理に叱られなさい。お子様には教育が必要だからな。