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第五話 魔法使いになった俺は高位の存在の友達になった

35歳を童貞で迎えた俺は魔法使いになり異世界転移魔法でこの世界アーティファに

やって来た。最初は完全な旅行気分であったが異世界転移魔法では元の世界に帰れない

事を知り焦る俺。

しかし戦争に勝てば異世界への門を使う権利を得られると言う。

高い魔力に何故か美少女になってしまった俺だが分けの分からない魔法のおかげで

勝ってしまった。

このまま勝ち続けて元の世界に帰れるのか俺?

「ふーっ疲れた、疲れたわーっ」


言いながらベッドに倒れこむ俺。

戦争に勝ってから今日までの3日間凄まじいスケジュールで

お城に拝謁に行きそれから連合国家の国々のお偉いさんと会合と言う名の

お披露目をしてそれからパレードであった。

口に出すほど疲れた。人生でこれまで多くの衆人に見られる事など無かったし

偉い人の前で話をする事も殆ど無かったから精神的に凄まじく疲れたのだ。

まだ学園の学生寮で1ヶ月も住んでいないが唯一休めるこのベッドが

有り難くてしかたない。

体を大の字にしてくつろぎまくる。


「キキ、それはちょっとはしたないですよ。何て言うか休みの日のお父さん

見たいにだらしないです。」


相部屋のもう1人の住人である学生のサーシャに咎められる。

でもそれは仕方ないだろう?中身オッサンなんだから。

っと言いたいが今ではこの国いや連合国家全ての英雄、最強無敵の魔女なのだ。

パレードで俺に一生懸命手を振っていたこの学園の生徒のキラキラした

目を思い出したら居住まいを正すしかなかった。


そう言えばまだ戦争は終わっていないのでイロイとサーシャ、フィアナとアズメル

以外の生徒とは身の安全を顧慮して会っていなかった。

そんなに危険と思うなら他の所に住んだ方が良いだろう、と思うだろ?

実際王国から最高位魔女用に部屋を王宮内に用意してもらったし連合国家大統領から

もかなり豪華な部屋を用意してもらっていた。

では何故未だに学園の学生寮に住んでいるか?

答えはあの髭だ。そうフォージャイル学園長だ。

手放すと帰ってこないと思っているのか魔法の未修得を建前に全て断っているのだ。

妖精さんの言うように国家転覆を考えているなら切り札になる俺を手放さないのは

合点がいく話だ。

しかしそんな危険な事の片棒を背負いたくないし国王や大統領に近い方が

異世界への門の使用権利を要求し易くなるだろう。

だからと言って学園を勝手に飛び出しては学園長がどんな行動に出るか分からない

し何より怖い。


「生徒キキ、フォージャイル学園長から話があるそうです。私に触って下さい。」


色んな事を悶々と考えていたら入り口に立つゴーレムからフォージャイル学園長から

連絡が入ったことを知らされゴーレムに触り話を聞くことにした。


「キキか重要な話があるからわしの研究室まで来ておくれ。大至急じゃ。

ついでにサーシャも呼んでおくれ。」


嫌な予感しかしない。特に大至急の部分、猛烈に嫌な予感がする。

でも行かないと問題になるのでサーシャを連れて研究室に向かった。

研究室の前でイロイと会い一緒に入室する。

そこには学園長以外に珍しくフィアナとアズメルが居た。


「全員揃ったようじゃな、では早速本題を話そう。

最悪な事態になった。まず王国から一騎打ちの申し出があって明日

王国との緩衝地帯での観客動員の一騎打ちが確定した。

それと一騎打ちに勝てないと踏んだのであろう王国が伝説の暗殺者モサデグ

を雇いキキの暗殺を依頼した事が分かった。」


伝説の暗殺者!どんだけ凄いのか聞くと


「何処の国にも属さず足が付かぬように何重にも接触には人や魔法を

入れて実際の本人の姿は誰も知らん。名前も何十もの偽名を使い

モサデグと言う名も最初に使った物で仮にそう呼ばれているだけじゃ。

では何故今回暗殺が本人と分かったか?

それはやつの流儀、暗殺予告があったからじゃよ。

当たり前じゃが暗殺予告をすれば皆護りに入るから普通はそんな事は

せん。

しかしこの者はそれを楽しんでいるかのように暗殺を行う。

そして今までの暗殺予告で一度も失敗をしておらん。」


そこまで話して深く息をしてまた話し出す。


「それからわしの情報網から上がってきた話は他の連合国家からも暗殺者

がキキを狙っているそうじゃ。

キキの膨大な魔力と連合国家に見せたキキの魔法、これがあれば単独国家での

連合の支配、そう新しい国が出来上がってしまう事を恐れているのじゃ。

伝説の暗殺者が暗殺予告を出した事で成功度が跳ね上がり更に保険として

何人も送って来るようじゃのう。」


とんでもなく大変な事態になっているぞ!

しかし幾つか理解できない事があるから確認する。


「今の話を聞いて疑問に思ったんだけど何故その暗殺者は私を殺す事を

決めたの?それに連合国が私を殺したら折角勝てる戦が台無しだよ?」


「当然の疑問じゃな。モサデグを雇うにはとても高い金が掛かる上に

交渉も困難でその上気難しい。

しかし今回は本人から王国側にアプローチがあったようですんなり

依頼できたようじゃ。

ワシが思うに自分の腕を見せびらかすのが好きな者の様で相手が

最強の誉れ高い魔女なら子供であっても殺して名を上げたいロクデナシじゃ。

連合国の国々は今回の戦争で負けても幾つかの国が王国領にされるだけ

と分かっている。

しかし最悪な場合我々が属するレーゲン王国が覇権を握り他の国を解体し

王国に吸収されたら全ての国の王や貴族などが既得権益を全てを失う。

どちらかを天秤に掛ければ当たり前のように戦争の敗北を選ぶじゃろう。」


話は理解出来るが世知辛い世の中の裏の顔を見せられたようで嫌な

気分になる。

モサデグは置いておいて他の国が暗殺者を送って来たのは王国や連合国が

用意した部屋を使わなかった事を俺が従わない事と判断したと思われる。

すると自分が属する国からも刺客が来てるかも知れない。

それとレーゲン王国による支配ではなくではなく学園長による新帝国にでは

ないか?


「じゃが今まで接してきてキキの魔法は超一流である事をワシは知っておる。

どうじゃ何か良い魔法は無いか?」


くっ!今回も俺の魔法頼りかよ。・・・対人対物レーダーに危険物感知その他

セキュリティー系の魔法か。

確かにこれだけ有れば問題ないだろう。


出てきた魔法を話すと分かっていたと言わんばかりに頷き今出てきた魔法を

軸にセキュリティー網を構築すると言う学園長。

それと引き換えにフィアナとアズメルが浮かない顔で何か話している。

何か問題でも有るか確認すると


「アズメルが嫌な予感がするって言うの。出来ればキキちゃんの危険物感知の

魔法を確かめてみたいの。」


フィアナが不安そうにこちらを見ながら言う。


「うーむっキキの魔法はこれまでに問題があった試しは無いしそれより

我々の予想を覆す性能の物が殆どであった心配はないと思うが。

しかし予感を無視するのは愚か者のする事であり時間があるときは

魔法の試験運用は欠かしてはならんのう。

少し事を急ぎ過ぎて当たり前の事を見落とすところであった。

ありがとう二人とも。

では先にキキの魔法の確認を行おうか。」


二人の先輩は手際良く箱を用意して何かを詰め出した。

学園長に俺とイロイが離れた所でこちらを見ないように指示してきた。

準備が終わり机の上を見ると5つの箱が置いてあり、俺とイロイに

どの箱が危険か、危険な箱はどのように危険か紙に書くよう言われる。

もう慣れてしまった機械的な声に従って箱に手をかざすと調べた内容を

教えてくれる。


1つめの箱は・・・女神の像が入っている。これは問題なしか。

2つめの箱は・・・空?いや違う、神経系の毒ガスが入っている!

3つめの箱は・・・火薬の反応有り、爆弾だ。

4つめの箱は・・・紙が入っているだけか、問題なし。

5つめの箱は・・・機械式の射出装置が入っている。


結果をイロイと一緒に学園長に渡すとイロイの回答を見て軽く頷き

俺の回答を見た瞬間目を見開き動かなくなった。

顔を何度か手で擦ると考えを纏めたように話し出す。


「フィアナ達の話を聞いて良かったわい。

まさかこんな所に落とし穴があったとはのう。

キキよもう一度この箱全てを調べてもらえるかの?」


どうやら間違えたらしい。魔法にもう一度調べるように命令すると

全ての検査を行ったからもう調べる必要は無いと答えて来た。

それをそのまま学園長に話すとかなり渋い顔になり


「キキとイロイよ、この中には問題の無い安全な物は無いんじゃ。

イロイが毒ガスを検知出来なかったのは想定済みじゃ。

しかしキキが暗殺人形と呪いの書を検知出来なかったのは盲点じゃった。

暗殺人形とは箱を開けて最初に認識した顔の人間を人形の体を魔法的な

凶器に変化させて殺そうとするんじゃ。

呪いの書は見た者に呪いを掛けその者を支配したり殺したりする物じゃ。

2つとも薄っすらと魔力が出ているから得意魔法であれば確実に検知

出来るレベルのものじゃがな。」


学園長が何が問題だったか髭を擦りながら考えていると


「もしかしたら魔力や魔法を検知、いえそもそも反応しないのではないですか?」


アズメルが学園長に意見を言う。


「はははっ高レベルの魔法が低レベル魔法に反応しない?そんな事が・・・・

あっ!」


叫んだ学園長が目を見開いてこっちを見てる。怖過ぎだわ!

学園長が言いたい事は分かる。俺も今気付いたのだ。

そう俺の魔法は科学やエセ科学で出来ることを魔法で実行しているのだ。

いくら考えても魔法を検知出来る技術は現実でもエセでも存在しなかったよ。

今まで俺の魔法が素晴らし過ぎる働きをしたせいでまったく問題ないものと

思っていた。

過信し過ぎていた。まったくもって盲点であった。

しかし魔法が魔法を分からないと言う珍事を誰が予測できただろうか?


「キキよ魔法を使わぬ者の技術では魔法を認識する事は出来ぬのか?」


俺を見続けて学園長が確認するように聞いてくる。

俺は頷いた。

顔を手で覆いそのまま後ろの椅子に力なく座り込む学園長。

その状態で何かブツブツ独り言を言っている。

耳を傾けると自動で集音の魔法が発動し何を言っているか良く聞こえる。


(どうするんじゃーキキの魔法が役に立たたんとはのー計算外じゃー

アズメル等の協力者と学園の戦力さえあれば並みの暗殺者は凌げるが

モサデグは国の上級魔法使いでも太刀打ち出来んのに応援が殆ど来ない上に

逆に他の国々が暗殺者を送ってくるんじゃ。

この状態ではキキの魔法無しでは対処仕切れんのに肝心要のキキの魔法が

これではのー。

!キキは魔力と戦力はあるから一番強固な研究室に入れて防御魔法を張らせて

おればいけるか?・・・相手が呪いの系統で来たら良い的にしかならんか。

ではどうすれば良いのかのう・・・)


完全にシンキングモードに突入している。

命を狙われる事をいまいち実感できないが何かしないとヤバイだろ。

とりあえず学園長の言ってた協力者とは何かフィアナ達に聞いて見る。


「実を言うと私達は反帝国戦線と言う組織に属しているの。

私達は元帝国民だったけど家族と供にこの国に逃げてきてその組織に

合流したわ。

でも今回の戦争で負け続けていれば私達はヘクトール王国に連れて行かれ

それから帝国に逆戻り。

何をされたか分からなかったわ。

でもそれを阻止して私達を助けてくれたのは貴女キキちゃんなのよ。

今度は私達が命を掛けて貴女を守るわ!大丈夫、殆どの事は反帝国戦線の

協力者の腕利き魔女が片付けてくれるから!」


前は悪いようにはされないと言っていたが俺に心配をさせない為に

嘘を言ってたのか。

今まで命に関わるレベルの仕事をした事がないし命の心配をされ事が

なかったので新鮮に感じた。

それから二人は話してくれた事と同じ内容を学園長に話して大丈夫である

ことを説得しだした。

渋々了承する学園長。まあ今の時点ではその協力者に丸投げするしか

ないからな。


そう言えば殺された人の遺体は残るんだよな?どんな手口か分かるかも

しれないから死因を学園長に聞いてみる。


「どう殺されたか?鈍器で殴打・ナイフで胸を一突き・崖から落とされる

首を吊る・心臓発作などまったく統一性が無い。

他殺ではないのまであるんじゃ。残念じゃが手口は皆目検討がつかんぞ。」


逆に謎が深まっただけだった。


それからは動きが速くモサデグは標的と妨害者以外には害を与えない

ようで一般生徒と戦闘に不慣れな先生は学生寮から出ないようにして

研究室の中でも一番壁の厚い破壊魔法の実験室に俺だけを篭城させる

事にした。正確に言うと凶器になるような物を排除する為横になる

ベッドと床に固定したトイレ以外何も無い状態であった。


それから少し経ちフィアナ達が言う協力者達がやって来た。

とりあえず実験室の中で会う。

皆長いローブを着て三角帽を深く被っている為容姿は殆ど分からない。

その中でシルエットから女性と思われる人が近寄ってきた。


「おおっ貴女が同士アズメルとフィアナを助けて頂いた最強と名高い

魔女キキ様ですね。この度は同士を護って頂きまことにありがとう

ございます。

私はヴィアンダ、魔法障壁の使い手で今回の指揮を執ります。

貴女の様に強い味方が出来ると聞いて皆喜んでいたのです。

しかし貴女を狙う者が居ると言う事で急いで駆けつけました。」


うん?俺が味方になった?気になって協力者の一団の後ろに居るフィアナと

アズメルを見るとゴメン!とジェスチャーをしている。

学園長だけでも困り者なのに変な団体に勝手に入れないでほしい。

と言うかこの団体学園長とは知り合いなのだろうか?


「出来れば我々のアジトにある防御障壁の結界の中で護らせて頂きたかった

のですが学園長殿が学園からキキを連れ出す事に難色を示されたので

この部屋自体に結界を張ります。

安全性は数段落ちますがここには魔法のエキスパートである先生方が

居られますので共鳴詠唱魔法を使うことで防御力を上げてみます。

我々は全力を出しますが相手は超一流の暗殺者、油断は出来ません。

もしも我々全てが突破されたら最後は自分でご自身をお守り下さい。」


言われなくても最初から自分で防御するつもりだったからな。

しかし改めて念を入れられると流石に怖くなってきた。


説明を終えた一団がゾロゾロ部屋の外に出て行く。

最後にイロイとサーシャが残っていて


「僕らも残って魔法で支援したいんだけど殺される虞と他の魔法使いの

足を引っ張らないよう学園長に寮で待機を言われたんだ。

ゴメン、でも出来るだけ無事であるように祈るから!」


「私も祈っているから!キキ無事でいてね!」


「大丈夫だから2人とも心配せずに寝ていてくれ。」


2人を元気付けて送り出すが益々不安になってきました。

皆が心配心配言うから本当に俺まで心配になってきたよ!

いや人のせいにしてはいけないな。反省する。


俺が色々考えているとドアの外で幾重にもロックを掛けているのが

魔法の詠唱とガチャガチャ鍵を掛ける音で分かる。

魔法の明かりで照らされる何も無いに近い部屋で一晩過ごすのか。

とりあえず武器でも出して戦闘準備をした方が良いのかな?

いやっ、もし相手を自由に操る魔法であるなら武器を持っていた方が

危ないな。

ではビームシールドを張っているのはどうか?

これもダメだな。体を操られてビームシールドにぶつかるだけで

死んでしまう。

やはりいい案が出ないな。

下手な考え休むに似たりか、このまま寝てしまった方が得策か?

そう言えばパレードから帰ってきて疲れていたんだっけか。

ちょうどベッドに腰掛けていたし・・・ヤバイ!本格的に眠くなって

きた。命を狙われているんだぞ俺!

ダメだ意識が・・・



目の前に何時もの居酒屋兼食堂の見慣れてしまった入り口が見える。

どうやら寝てしまった上に夢まで見ているようだ。

夢なんて見ている場合ではないので急いで起きようにも起きれない。

この前大将の襟首掴んで怒ってしまったからバツも悪いし何しろ大将か

どうか怪しいし会いたくないけど選択肢が他に無いしとりあえず入ってみる。


ガラガラッと音を立てて店に入ってみると何時もは数人居れば多いと思える

この店で殆どの席が埋まる程客が入っていた。

でも客の格好があまり見かけない作業着でなお且つ目つきの鋭い堅気の

仕事をしてるとは思えない異様な雰囲気の人達だった。

カウンターの向こうに大将が居て俺に気付くと手招きをしてくる。


・・・この前の事もあるし行きたくないが夢から醒める事も出来ないし

周りの客が襲ってこないか警戒しながら近寄る。


「この前きーさんが疑ってきたのは分かるよ。今日はそれについて話す

つもりだよ。

その前に他の人に聞かれたくないから出て行ってもらおう。

皆ーっ食事休憩終わりだよー持ち場に戻って!」


周りの客に呼びかけると皆だるそうに店を出て行く。

んっ会計は?と言うか誰?と思うが後で聞こう。


大将に促されて何時ものカウンター席ではなく4つ椅子があるテーブルで

向かい合う形で座る。


「きーさんが疑うのも無理無いと思う。

実はきーさんが魔法で異世界に行き出してから店に来なくなって3ヶ月

位たって死んで居たんだ。

日ごろの不摂生で心筋梗塞だった。

それで薄暗い世界に浮いていると鬼みたいなのが寄ってきて

『お前は生前行いが悪かったから地獄に連れて行く。』って言われたんだ。

店を出す前に家族や友達に悪い事をしてきたからね、観念して着いて

行こうとしたらあの方が現れて止めてくれたんだ。

その代わりきーさんが遠い世界で難儀しているから励まして欲しいって

言われて生前と同じこの店をまかされてそれからきーさんが来る度店で

接待していたんだ。

きーさんが多分不思議と思っていた異世界アーティファの情報を提供

できたのは暇な時に食材と一緒にこの世界についての新聞や雑誌を貰って

読んでテレビで番組を見ていたからさ。

それからオカルトは怖かったけど死んだ今では自分が幽霊だからね怖く

なくなったんだよ。」


かなり衝撃的な事実を知らされて驚くしかない!

店も大将も前と何ら変わらず応対も自然だったので気付かなかったが

幽霊だったとは・・・

じゃあ話に出ていたあの方と今まで居た客とこの店は何だ?

聞いてみよう。


「あの方はあの方、多分自分から姿を現すから待っていて。

さっきの客はこの世界できーさんを暗殺しようとした悪い奴ららしい。

あの方が暗殺を止めて今働きながら更正させているんだ。

幽霊とは違うみたいで食事が必要らしくついでで食事を出しているんだ。

この店は地獄の一部を間借りしているらしくさっきの客が地獄で

働かされて近くにあるこの店で食事をとる事になったみたいだね。」


何が何だか分からんぞ!頭が今までの情報を処理しきれずパニックに

なっているよ!

でも速やかに片付けなければいけない事案である暗殺は回避出来た事に

なる。

嬉しい情報だがどうやって止めたんだ?としか思えない。

それに大将の地獄行きを免除したり暗殺者を更正させるとかあの方とやらは

神仏の類なのだろうか?

今まで人より信心深いと言う事もないしこれと言って崇める神様も居ないし

俗に言う無宗教だったから助けてくれた心当たりが見つからない。

・・・いや1つだけあった。異世界旅行中に天使を助けた事があったな。

あいつか?あいつなのか?嬉しい反面もう関わり合いたくないので憂鬱に

なる。

軽くうな垂れてテーブルを見ているとフワフワと変な形のぬいぐるみが

テーブルの上に降りてきた。


「どうやら話も終わってだいたい理解してもらえたかな?

私があの方と呼ばれる者Dだ。

今回の事は気にしないでくれ。私が助けたくてやった事だ。

きーさん、本名で呼ぶのは魔法的に良くなくキキと呼ぶのは適切ではないので

便宜上きーさんと呼ばしてもらう。

実はきーさんには今まで知らない所で借りがあるのでこの位の事

は助けた内に入らないと思っているのさ。」


突然現れた妙な物体が突然妙な事を話し出し更に話が分からなくなる。

大将が腰を90度以上曲げて最敬礼をしているからあの方である事は

まちがいないようだが問題はその見た目である。

先ほどぬいぐるみと言ったがまんまぬいぐるみだ。

丸い体に手と足がおまけ程度付いていて背中には蝙蝠の翼と先の尖った尻尾

が生えていて体に顔があり顔の下辺りにDの文字がある。

そのディフォルメされている体を赤と黒で彩っている。

・・・何か違うな。神仏かなと思っていたが色的に形的に悪魔だわこれ!

悪魔に関わりがあるかと言うとやはり異世界旅行時の追っかけてきた悪魔

しか思いつかない。

俺を殺しに来ていたとしても驚かないが助けに来たとは到底思えない。

正直分からない事だらけだよ!

かなり頭が混乱しているが今の段階で分かる事を聞いてみよう。

まずDが何者でどうやって暗殺者を止めたか。

ここは何処で大将をどうする気か。

借りとは何で何故助けてくれるのか、これらを聞いてみよう。


「質問はそれだけでいいかな?まず暗殺者だが日頃の行いを指摘して

更正する事を勧めたよ。

更正する気の無い人には徹底して説明したさ。

強制?強制かどうかは認識の違いの為何とも言えないな。

元の世界の事も知っているがきーさん達とは根本的に常識が違うから

認識さえも基準が違い過ぎるだろう。

話が逸れたがきーさんの魔法ならサイコメトリーを使って暗殺者を特定して

洗脳すれば出来ただろうが気付かないから手を貸した。

んっ?追加の質問か。本来は答えないのだがきーさんが相手だからね。

元の世界にきーさんの魔法に似た力を持つ者がいたからそこから推察

したまでさ。

きーさん自身の魔法は分からない所が多くて正確な説明は出来ないな。

きーさんが大将と呼んでいるこの人物は若い頃犯罪を多く行ったから

死後は地獄での責め苦を延々と味合わされる所だったけれどきーさんの

知人と言うことで生前と同じ仕事をする事で免除した。

アーティファについての記事や報道を見たと思うが彼らも生前悪い行いを

した者で死後マスメディアの仕事をさせている。

彼らの仕事場だが何処にも空いた場所が無く地獄の一部をこの居酒屋と一緒に

借りて働かせている。

きーさんからの借りと私の正体については素敵な場所を用意するからそこで

食事でも食べながら話そうじゃないか。

最後に何故助けるかだが答えは簡単、死なれると私が困るからさ。

それから明日の一騎打ちも手を貸すよ。

何故なら相手はフェアな戦いをしないからさ。

本来はシックでありながらゴージャスな姿をしている私だがこのぬいぐるみの

ような姿はその為のものだ。

ふふふっ魔法少女には可愛いお供が居るのが常だからな。」


ここまで一気に説明的な会話をしてくるD。

情報の混乱に次ぐ混乱に更に大量の情報を投入!

こういう時に頭の良い人は順序だてて情報を処理出来るのだろうな。

だが俺は自慢じゃないが利口じゃない。むしろ馬鹿だ。

それでも脳をフル回転する事で分かった事はDは俺の魔法の謎の声には

関わりが無い事。

高レベルの魔法使いを拘束し連れてくる力がある事。

死者の管理をする高位の存在である事。

俺を知っていて俺に借りがある事。

それから明日の一騎打ちの助太刀にやる気マンマンである事。

色々思うところがあるが何故か最後の魔法少女のマスコットが引っかかる。

普通マスコットって丸くて明るい色使いで可愛い者だよな?

丸い体は良いが鋭い目つきと鋭い翼と尻尾、色が黒と血の様な赤と言う

可愛さの要素が無いに等しいデザイン。

本人は満足げだが俺からしたら美的センスが狂っているレベルだ。

いやっだからと言って可愛いマスコットが欲しい訳じゃないんですよ!


「あのーDさんはその格好で一騎打ちの助太刀に出るのですか?」


「ああそうだよ。ところでDさんと言う呼び方は止めてくれ。

きーさんは覚えていないと思うが幼い頃からの付き合いだぞ?

運命共同体と言うには仰々しいか、ここは友達いや親友と言うべきか。

だから親愛の情を込めてDと呼び捨てで呼んでくれ。

それから私がきーさんと呼ぶのは先ほどのような諸事情であって決して

他人行儀に呼んでいる訳ではないから気にしないでくれ。

話が変るがきーさんの瞬きの回数、目の動き顔の筋肉のつり方。

私の格好にかなり否定的なシグナルを発している。

分かった、一騎打ちまでにデザインを変えておこう。

話はここまでだが大船に乗った気でいてくれ。

もっとも私はアンフェアな部分を解消するだけで一騎打ちには

参戦しない。安心しろきーさんは強力な魔法力を持つ魔法使いなのだから。」


Dがまた長く説明的な話を一方的にすると大将に俺を店の入り口まで

見送るように命令している。


ここで俺はDはかなりの実力者と理解でき、だったら色々聞いたりお願い

出来るだろと言う事に気がついた。

何を聞く?この世界と少女になった訳だよ!

何をお願いする?元の世界に戻してもらうのだ!


・・・しかし時既に遅し、Dの姿はもう無く何故か俺は店の入り口に立っていて

横から大将が引き戸を引いていてその先に目が行く。

おいおいおいっ店の前が真っ暗で何も無いぞ!

店から出たら落ちちゃうよ。

俺が慌てているのに気にもせず俺の背中を押す大将。

よくある夢で落下する感じがした後尻が床にぶつかり目が覚める。

そう言えばベッドに腰掛ける様に寝て居たんだよな。


いやいやそれより俺は命を狙われていたんだな。

体を確認するが外傷は一切無い。

本当に暗殺者を片付けてくれていた事を実感し感謝する。

安堵していると急に外がうるさくなって来た。

どうやらロックを解いているようだ。


「おおっキキよ無事じゃったか!予告の夜を終え素晴らしき朝を

迎えられたぞ!」


少し経ってから学園長を先頭に皆がゾロゾロ入って来て俺が無事で

ある事を知ると緊張が解けたようだ。


「皆準備万端で構えていたがモサデグはどころか暗殺者が一人も

来なかったわい。どうなっておるん・・・こっこれは!?」


学園長がまた目を見開いて怖い顔になったかと思うとベッドの上の

枕の横に置いてあった額縁のような物を拾い上げた。

おいおいっあんな物置いてなかったぞと思っていたら


「・・・キキよこれはどう言う事なんじゃ?」


学園長が額縁を渡しながら聞いてくる。

どうもこうも言われてもその額縁の存在自体知らないんですけど・・・

!!!何だこれ?真ん中にでかでかと

『私達これから真っ当に生きていきます!今までありがとうございました』

と書かれていて、字が額縁の中の紙を二分するように真ん中一直線に

書いてあるとその字の上に先ほど居酒屋で見た大勢の客が載っている

集合写真があって、皆苦々しい顔・絶望しきった顔・落ち込んだ顔など

一様にネガティブな表情をしていた。

真ん中の大きな字の下にはアザナと実名・出身地と誰が暗殺を仕向けたかが

書いてある。

実名は魔法的に明かさないのがこの世界の常識であり、雇い主を明かすのは

暗殺者の信用問題に関わる事だろ?

それが書いてあると言うことはこいつら色々人生積んでるだろうとしか

思えない。

・・・てっこれはやはりDがやったのか?皆こっちを見てる。


「まっ魔法を再検索してみたらサイコメトリーと言う相手の思考を読み取る

力があってそれで周りの人間を片っ端から調べて行って暗殺者を見つけて

それから一人ずつ洗脳を施したのさ。

何処に言ったかは私も知らないよ。あとこの額縁も魔法で作りました。」


はい嘘です。先ほどDに教えてもらった事をそのまま話しました。

だってしょうがないでしょ?

夢の中でDと言うぬいぐるみみたいのが全員連行していったと言って

誰が信じる?いや信じられると更に話がややこしくなるだろ?

大人には優しい嘘も必要なんだよ。

童貞でもそこら辺は分かっている、大人だからな。

これを聞いた皆は


「守りに入らず攻めに転じて敵を制すとはキキさんは実力もある上に

戦い方を知っているんだね。」


「流石キキちゃんだわーっお姉さん扉を開くまでヒヤヒヤしてたけど

無事で何よりだわーっ」


「僕も協力しようとしたけど邪魔をすると容赦無く殺されるって言われ

他の学生とキキの無事をずっと祈っていたよ。」


「そう祈りの心は全てを正しい方に導くと神聖魔法学のメルティ先生が

言ってたわ。私も頑張って何十人分も祈っていたの。」


そんな事よりも俺の事を心配し努力してくれて居た事を話し出した。

嬉しくて涙が出てきそうだ。

・・・でも俺自身は寝てただけでDが片付けた事を自分の手柄にして

話してしまった。自己嫌悪におちいる。

しかしそうでもない人達が居た。


「確かに数人の暗殺者の顔を知っているが間違い無く本人じゃ。

ふふふっこの情報を公に流せばもう誰も怖くてキキの命を狙う者は

出ないじゃろう。

あの伝説の暗殺者モサデグを返り討ちにしたのじゃからな!

もうヘクトール王国も目ではないないな。このまま行けば帝国打倒も

夢ではないか。」


「その時はどうぞ我々もお供させて下さい。」


「ふっふふふふふ」

「おほほほほっ」


非常に不穏な空気を垂れ流す学園長とヴィアンダ。

今までの爽やかな空気が嘘のようにどす黒く汚染される。

これからまだ一騎打ちが残っているのに不安さが絶頂状態であった。


今回は早く書く事が出来ました。実は出来る子だったんですね自分!

次はサブタイトルが終わりっぽいんですがまだ続きます。

やっと前半の終わりなのでまだまだお付き合いください。

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