第四話 魔法使いになった俺は魔法戦士になった
35歳の誕生日に魔法使いになり異世界転移魔法でこの世界アーティファに
旅行に来た俺。
しかし巨乳の少女になった上に魔法で元の世界に帰れなくなっていた。
この世界で俺に協力してくれる人物の一人フォージャイル学園長曰く
「戦争で勝ち相手国の異世界の扉の使用権を取得するしかない。」
この言葉を信じ人生で初、異世界で初の戦場に立つ!
俺は元の世界に帰れるのだろうか?
軍事用浮遊自動車が到着した先は茶色や緑色に塗られた建物やテントが密集
した所で、元の世界の軍服に鎧を着けたような如何にも軍人ですっと言った
感じの人が20人前後、三角帽を被った魔法使いや魔女が10数人、作業着を
着た人数人が立っていて俺達を出迎えてくれた。
その中から1人の男が進み出て来る。
「良く来てくれましたフォージャイル殿、私は将軍を勤めるサリンジャリです。
魔法通信を通して何度か会いましたが実際に顔を合わせたのは今回が初めてです
な。それから・・・そこの魔力で髪が青く輝いている君がキキだね。
話は聞いているが魔力1万以上で戦況を一変させる程の強力な魔法を使えるそ
うだね?当然ながら期待させてもらうよ。」
将軍を名乗った男は細身のインテリな感じで俺が考えていたような無骨な
体格の良いオッサンではなかった。見た感じは高級官僚やチェスの指し手
と言った頭脳派の人間だ。
「歓迎ありがとうサリンジャリ将軍、それと基地に常駐する者達よ!
ワシがトーディ魔法学園学園長にして新将軍になったフォージャイルじゃ。
ワシが来たからには大船に乗ったつもりで居とくれ。」
「何とも頼もしい限りだ。私がお払い箱になるのが分かりますよ。
すぐにでも今後の事について話したいが皆は長旅で疲れているだろうから
部屋で少し休まれると良い。」
言葉使い自体は普通だが学園長を時々睨みつけ笑っても目は笑っていない
とか、かなり暗い感情を持っているのは俺が見ても分かる程だ。
学園長はそれを気付かない天然か知ってて無視しているのかは分からない。
妖精さんの話では昔散々やってきたようだから後者と考えるべきだろう。
学園長は先頭で将軍と楽しそうに会話をしながら頑丈そうな建物の中に
入って行き俺達も後を続いて建物の中に入っていった。
建物の中は外見とは違いあまり家具の無い普通の部屋と言った感じでその
中で3部屋を学園長・イロイ・俺とサーシャに割り揺られた。
ベッドに寝転がり同じ姿勢で座っていた体を伸ばし他にする事も無いので
眠ろうとすると作戦会議を行うので来る様にと呼ばれる。
少し休んで良いみたいな事は無かったようだ。
会議室に入ると自分達以外は将軍と他に2人将軍の補佐役と思われる軍人が
居るだけで思ったよりも人が少ない。木造の部屋に長い机とホワイトボード
魔法球しかなく殺風景な所だ。
しかも資料を学園長に手渡すとサッサと出て行ってしまった。
これで良いのかと思っていると学園長は手渡された資料を黙々と読み始め
俺達はすることもなく椅子に座るだけだった。
「うむっ報告どうりじゃ。では作戦会議を始めよう。」
資料を読み終えてやっと話し出した。それに合わせて
「その前に学園長先生、何故将軍達は出て行ってしまったのですか?」
イロイが俺と同じ事を考えていたのか質問すると
「ワシが作戦を決める。無用な口出しは要らぬから出て行ってもらった
んじゃ。」
何か段々傲慢さが露になって来ていると思わせる発言だ。
「改めて作戦会議を始めるが重要な変更点があるから良く聞くように。
敵の主力と考えられていたラディーネが出てこない事が確定した。
驚いた事に格下の魔女にしかもこの戦争中に一騎打ちを行い負けたのじゃ。
その魔女も急であったせいか、他の魔法戦士に実力を疑われて何度も
一騎打ちをしている為に出てこれない事がヘクトール王国に潜伏している
間者から知らされておる。
その為布陣を変える事にした。まず敵は主力の魔女の欠員をゴーレムの数で
補ってくるのは確実じゃ。実際今確認出来る地上戦力はゴーレムの砲撃兵と
歩兵合わせて8万じゃ。我々のゼロから作り直した3万の兵力に比べ
かなり多い。
飛行戦闘ゴーレムも我々の1千に比べ何倍も用意しているのは確実じゃ。
そこでキキよレールガン以外に地上と空を制圧出来る武器は無いかの?
お前の魔法なら出来るじゃろう?」
簡単に言ってくれるよね。大体戦力差が2倍以上違う事を知った上で戦うのは
完全に俺の魔法を当てにしていたんだろ?そんな簡単に魔法が出る訳無いだろ?
・・・地上面制圧用ロケット砲・地対空ミサイルが使用可能?
ゴーレムなど依り代になる物がある場合命中率や攻撃力が上がるか・・・
簡単に魔法が出てきました!凄いよ俺の魔法!仕事速いわ!
新たに使える魔法を話すと学園長は思ったとおりと言わんばかりに頷き
魔法球で調整するよう言ってきた。
砲撃兵のゴーレムのデータが魔法球にありそれに魔法を掛けるとゴーレムの
背中に連装式のロケット砲とミサイルを装備した姿に変り、試しにロケット砲を
打つとゴーレムの持つ大砲の数倍の威力があることが分かる。
俺の魔力なら全ての砲撃兵に装備が出来るようだ。
かなりの高性能さを出したが依り代になったゴーレムの中身自体を造り変えて
しまうため命令は直に出さないといけないと言う問題が出た。
「うむっ思ったよりも良い魔法じゃ。このまま実践に近い戦闘シュミレーション
を行ってみようか?イロイとサーシャ二人は向かいの建物に救護部隊が居るから
そこに行き救護活動を学んで来るのじゃ。
ではキキよシュミレーションを行うぞ?」
その後は遅くまで出来得る限りの実践に近いシュミレーションを行う事になり
まず敵の兵力は想定される最大数にして今まで使われた最強の武器を装備させて
から先ほどのロケットとミサイルを装備したゴーレムとレールキャノン3台を
中心に戦わせてみた。
結果的にはこちらのゴーレムが1/10減らされた時に相手を全滅させてると言う
圧勝に近いもので何度行っても大体同じ結果になった。
結果に満足した学園長は本人は作戦に見落としが無いか調べ続けると言い、
俺には明日の主役だから早く休むように言ってきた。
言われなくても魔力を消費したせいか眠くなってきたので早々に割り振られた
部屋に移動した。
部屋にはまだサーシャが帰ってきておらず時間は10時を過ぎていた。
これは・・・これは実に良い条件ではないか!
実は荷物の中に大きめの鏡を持ってきていたのですよ。姿見ではないのが
残念だが早速鏡に向かってセクシーポーズ!
むふふっ凄く良いな~っ美少女を間近で見れてしかもエロティックな仕草が最高!
自己性愛者とか何とか罵られてもこれは止められないな!
「さっきからまた自分に酔っているの?この自己性愛者!」
!!後ろから声がして振り向くとイーニスが俺の頭上の後ろを飛んでいて俺を
睨んでいた。
「戦争前でナーバスになっていると思って励ましに来たらまたやっているの?
多分次は罵りまくられるから頑張って、懲罰部屋」
「おいちょっと待て!これ完全に時間外だろ?話が違うだっ・・・」
イーニスに抗議しようとするとまた精神だけになり妖精の懲罰部屋に送られた
ようだ。俺を取り囲むように高い壁が円状に続きその上にスポットライトを
受けた妖精が俺に語りだす。
「私はユニシア、手の付けられないお馬鹿さんを徹底的に罰する妖精の頭よ。
言っておくけど普段は皆出払って少ない人数で罰を与えているけど今は仕事が
オフの時間帯で皆ノリノリよ?分かった?この自己性愛者のメスブタ魔女が!
皆やっちまいな!」
うおーーーーーーっと大きい歓声と共に壁の上に数え切れない程の妖精が現れ
囃し立ててくる。酒瓶持ったり顔を真っ赤にした者など様々なのが居るが同様に
俺に対して悪口を投げかけてきた。
「来た来た!変態娘だ!」「自分の姿を見て自慰しているの?気持ち割り~っ」
「気持ち悪い!気持ち悪い!気持ち悪~い!」「本当にそれだけか?もっと変な
性癖有るんじゃないの?」
一斉に罵声が飛ばされる。精神だけの存在になっているせいか声がクリアーに
聞こえ耳を塞ぐ事が出来ない!
「イーニスから聞いたんだけどコイツ元の世界では35歳のオッサンだったら
しいよ?」
「えっ?見た目詐欺じゃん!」
「オッサンの女装かよ!しかも少女の!どんだけ変態なんだよ!」
「35歳のオッサン魔法使いが少女に化けたのか?」
「でも元の世界では魔法使いが居なかったらしいよ?」
「いや待て、35歳で魔法使い・・・聴いた事があるぞ。」
「知っているのかラーデン!?」
「うむっ。異世界の国ニホンと言う所では35歳を童貞で迎えると魔法使い
になると言う変った転身があるそうだ。」
「あっ私聞いたよ!イーニスからこいつがそんな名前の所から来たって!」
「じゃあこいつは童貞の変態オッサンなの?キモイわ!」
「変態童貞間違いなし!」
「やーい童貞!」「キモイぞ童貞!」「女装趣味の変態童貞!」
「「「「「童貞!童貞!童貞!童貞!童貞!童貞!童貞!童貞!童貞!」」」」」
流石精神的拷問を喰らわせる場所だけあってかなりピンポイントに攻めてくる。
それも元の世界では極秘にしてきた弱点を。
イーニスに変な事を言わなきゃよかった!しかも誰だ魔法使い35歳説を
知っている妖精は!
俺だって帰る為に戦う事も厭わないのに!そう帰るまでの束の間のお楽しみ
だと言うのに、何故ここまで罵倒されなければいけないのか?
異常だろ?不条理だ!
俺の心の中を黒い怒りの様な感情が渦巻いていくのが感じられる。
その時
[DT発動準備完了、DT発動準備完了、DT発動準備完了、DT発動準備完了]
急に頭の中で警告音と供に響き出した音声。これも俺の魔法のようだ。
しかしDTって童貞の事だよな?俺の魔法も俺を馬鹿にしているのか?
「「「「「童貞!童貞!童貞!童貞!童貞!童貞!童貞!童貞!童貞!」」」」」
[DT発動準備完了、DT発動準備完了、DT発動準備完了、DT発動準備完了]
「「「「「童貞!童貞!童貞!童貞!童貞!童貞!童貞!童貞!童貞!」」」」」
[DT発動準備完了、DT発動準備完了、DT発動準備完了、DT発動準備完了]
「「「「「童貞!童貞!童貞!童貞!童貞!童貞!童貞!童貞!童貞!」」」」」
[DT発動準備完了、DT発動準備完了、DT発動準備完了、DT発動準備完了]
童貞コールに頭の中で鳴り響くDTと言う声
そんなに童貞が悪いのか?余りの理不尽さに怒りが頂点に達してきたぞ!
「誰が童貞だー!」
絶叫していた。童貞である事実は置いておいて怒りにまかせて叫んでいた。
しかしその時
[デストロイトランスモード発動します。]
突然音声が変ると怒りの感情がこみ上げてきて全ての物が憎く感じだし、
精神だけの状態だったのがいつの間にかに武装状態の体に戻っていて
体が自分の物ではないように感じるほど軽くそれでいて力が漲り
体中に赤い光の線が浮かび上がり今までに無い力強い高揚を感じた。
腕を上げると吊られる様にレーザー発射用に準備していた陶器製の杖が
何十個も一斉に浮かび妖精に向かってレーザーを何度も照射し出した。
物陰に隠れる者、レーザーを巧みに避ける者、妖精の潜り戸を使って
姿を消す者、あんなに沢山居た妖精だが一発も当たらない。
そこで上げた手の平に力を込めて握ると妖精達が空中に浮いたまま
動かなくなった。
「くっ潜り戸が使えない!逃げれないよ!」
「体が動かない!宙に浮いているのに落ちないって・・・まさか
こいつの魔法?」
「わっわっわーっごめんなさい!お願いだから撃たないで!」
「ぼっ僕も言い過ぎた、謝るから許して!」
空中に浮いて身動きが出来ない妖精達が現状を知って皆謝りだした。
しかし怒りの感情がその言葉を聞き流し宙に浮いた何十本もの杖の
照準を妖精達に向けさせた。
そして止めを刺そうとした時
「お止めなさい」
優しい響きの声がすると柔らかい物に包まれる感じがし、今までの
怒りの感情が嘘のように消えていった。
目の前に視界を覆いつくす能満な胸、両腕で俺を抱きしめていたせいか
密着していた体を柔らかい物と認識してしまった。
「私は妖精の女王、この子達の親にして兄弟。
この子達が行き過ぎた言動をとっているは確か。しかしこれは最初の
魔法使いとの取り決め事、怒りは理解できるがこの子達を傷つけないで
頂きたい。」
何処から現れたか妖精の女王に抱きしめられていた。
胸の谷間に顔を挟んで諭されると余りの気持ち良さに怒りの感情自体が
元から無かったように消えてしまい、周りに浮いていた杖は力無く
落ち、妖精達は自由になり皆逃げていった。
そして何より体に出ていた赤い光の線が全て消え、脱力感が襲ってきた。
・・・まあ何だオッパイは偉大で童貞はチョロイと言う事だ。
俺の怒りが完全に引いた事が分かると妖精の女王は俺から離れ
話し出した。
「異世界から来た魔女よ、まずわが子にして兄弟を許してくれた事に
感謝する。
・・・貴女は噂に聞いていたとおりにとても大きな魔力を持っていますね、
異世界から来た運命の魔女よ。」
「運命の魔女?」
疑問に思った事を口に出して聞いてしまった。
1度目は魔女、2度目に運命の魔女と呼び直すとは変だからだ。
「貴女がこの世界に来たのは必然、呼ばれたからに違いありません。
私に見える物は貴女を囲む運命の輪、そしてそれは全ての運命の輪を
従えこの世界全を動かします。
貴女がこの世界を破滅に導くのか幸福をもたらすのかは私には分かりません。
でももし皆に幸せを与える事をするのなら私は惜しみない助力を
与えるでしょう。
では戻りなさい。私は貴女を見守っています。」
赤みのかかった金色の髪と衣を宙に漂わせ笑顔で手を振る妖精の
女王。
突然の話の変り方に付いていけなくなり話を整理していると
基地の自分用に割り振られた部屋に立っていた。
イーニスが居ない。逃げたようだが許さないよ?
そんな事より俺がこの世界に呼ばれた運命の魔女?そんな事が
「きゃーーーーーーーっ」
俺の思考を阻止するように大きい悲鳴がすぐ近くで上がった。
サーシャだった。
妖精の拷問部屋に精神だけの移動だと、どう言う訳か知らないが
時間が掛かからず肉体を伴うと時間が掛かるらしくサーシャが
帰った後まで時間が過ぎたようだ。
・・・しかし何故サーシャは俺の荷物から着替えを出してしかも
大事そうに抱きしめているのか?
「きっキキ何処に居たの?まさか前からずっと居たの?」
かなり動揺して裏っ返った声で喋りだした。
獲り合えず恥ずかしい事は端折って話す。
「ええっ?あの妖精女王にあって来たの?良いなーっ
凄い美人だって話だけど実際会えた人は少ないのよね。
やはり凄い美人だったの?」
やたらと美人のところにグイグイ食いついてくる。
俺の記憶には綺麗な顔立ちよりも大きく形も良くナイスな柔らかさの
胸の事のほうが容量を多く取っていて、顔の細かな造形はボンヤリと
しか覚えていないので表現し辛い美人と話を濁す。
それよりもさっきからずっと抱きしめている俺の着替えだ。
何故俺の着替えを持っているのかを聞くと
「こっこれは護りの魔法を掛けていたの!うん!そう魔法を掛けて
いたのよ!間違いないは!」
凄い勢いで首をぶんぶん縦に振り熱弁するサーシャに気圧されて
何も言えずに服は返してもらったが如何にも怪しい行動と反応で
あった。
色々考えるべき事が増えたが魔力を使ったせいか眠くてしょうがない
こう言う時は考えても良い答えが出ないので寝ることにした。
・・・もう慣れてきたが目の前に赤提灯の有る食堂の入り口が
当たり前の出てきた。
間違い無く今は夢の中だ。
何時ものように何気なく入っていくと
「きーさん大変!大変だよーっ」
何時もと違い緊張した面持ちの大将が出てきた。
俺をカウンター席に座らすと凄い勢いで話し出した。
「きーさんが明日参戦する戦争は敵より味方が怖いんだよ!
前居た将軍さんがゴーレムに何か仕掛けをして現場を退いた
みたいなんだ。」
・・・また何時もの謎情報だよ、情報源はかなり怪しいが情報は
間違い無いのは今まで聞いてきた事が全て本当であったから
疑う余地は無い。
「でっゴーレムに何をしていったの?」
「何をしたかは分からないみたいだよ。こちらの世界ときーさんの
いる世界ではゴーレムの作り方も操作法も違うって記事に書いてある
んだ。」
大将が渡してよこしたのは怪しいネタ満載で有名なスポーツ新聞だった。
見出しにでかでかと『サリンジャリ元将軍ゴーレムに不正操作か?』
と書いてあり、将軍と将校がゴーレムの側で屈んでいる写真がこれも
でかく一面に載っていた。・・・一体誰が写真を撮って記事を書いて
いるのか突っ込みたいが今は置いておいて記事を読むとそれらしい事が
書いてあり、ゴーレムの操作方法が違う為何の操作をしているのか分から
ないと話をしめている。
・・・ゴーレムの製造と操作方法が違うって何を基準に書いてあるのか?
「ゴーレムの操作方法が違うって書いてあるけどゴーレム何て俺達の世界に
存在しないでしょ?どう言う事よ?」
流石に今までに無く謎情報に謎な事が追加しダメ元でされ大将に確認してみる。
「えっ?きーさんゴーレムの造り方や操作法を知らないの?結構無知だねーっ
ゴーレムは人型にエメス(生命)と書いてから名前を与えて起動する状態に
してから名前を呼んでから「○○○の命令を行え」と言って行動させて終わったら
「元の位置に戻り待機」で行動終了、うんっ一般的だね。」
「はあっ?一般的だあっ?ゴーレム何て元の世界ではゲームとオカルトな
話にしか出てこないだろ!
って言うかお前は誰だ?大将がゴーレムの話しをしてしかもそんなマニアな
事まで知る訳ないだろ!お前は誰だ!」
俺の知っている大将は
理解出来ない事=怖い事
と考えている人であり、お化け・UFO・未確認生物など一切ダメな人だった。
それがゴーレムの造り方と使い方を知っているだ?有り得ないだろ!
ついでに言えばゲームとか殆どしない人でもある。
前から変だと思っていたが確信した。
「さあ言え!お前は誰だ!」
胸倉を掴んでぐいぐい引き上げながら言う。
「ちょっと待って許して、ごめんなさい!」
急に高い声で話し出す大将。まるで女の子の様な声だ。
ついに正体を現したかと更に締め上げる。
が目の前にサーシャが居てその胸倉を俺が掴んでいた。
正確に言えばベッドの上で横になりながらこれも横になっている
サーシャの胸倉を掴んでいたのだ。
つまり寝ぼけていた事になる。
・・・ん?でも何でサーシャが俺の横で寝ているんだ?
「私だよ!サーシャだよ!戦争に行くのってやっぱり怖いから
キキの隣で寝ていたの。お願い痛いから手を放して!」
子供が戦争に行く事自体が間違っているが流される形で来てしまった
がやはり子供だからか精神的に負担が大きいのだろう。
ここは一つ大人らしく手を放して肩を叩きながら
「ごめん、寝ぼけていたみたいだ。大丈夫?」
と気遣ってみた。
しかし何も言わずに横に置いてあるもう一つのベッドに行き
寝てしまった。
・・・人徳無いし子供も居ない俺には子供の気を楽にする事も
出来ないみたいだ。
少し反省し寝る事にした。しかしこの時何故かパジャマの前が思いっきり
開いている事に気付いたがそのまま寝た。
朝になり起きてサーシャに謝ると「私も勝手に一緒に寝て御免ね。」と
返され、考えてみればそうかも!と思う反面精神的に不安定な所に
胸倉を掴むと言う暴力的な行動を取られても余り動じていない思われる
サーシャは大人だなと変に感心してしまう。
着替えて作戦会議室に入ると学園長とイロイ、そして基地に居る他の
魔法使いや兵士達がもう来ていて、作業着を着ている人が朝食を用意
してくれている。
「キキ達も来たか、丁度朝食の準備も終わった所だ。それでは朝食を
取りながら今日の作戦の確認をしようかの。」
各々食事が済んでデザートが出てきてから学園長がホワイトボードの
前で各自の行動の確認を行った。
学園長は後方で指揮、イロイとサーシャは後方で救護用に待機、兵士と
魔法使いは緊急時用に後方待機、で俺は
前線でゴーレムに命令を出しながら魔法で攻撃っと。
・・・戦うのは俺だけだよな?分かっていたが改めて確認すると騙されて
いるのではないか?と思われる程俺への負担がデカイな。
っがやるしかないな、前に出るだけだ!
「では各自持ち場に付き準備を始めよ。」
皆が動き出した中で昨日の夢を思い出して学園長に少し話してみる。
「学園長先生、ゴーレムは問題ないのですか?」
「問題?今の所は異常は無いぞ。それとも心当たりが有るのか?」
昨日の夢で変な事言われた!なんて言うと話が拗れるのが見えているので
「嫌な予感がした。」っと流してみた。
すると
「予感か、大成する魔女や魔法使いは皆予感や予知が出来るからの。
やはりキキは大物になる運命なのか。
獲り合えずゴーレム整備の技術者と魔力コントロールを行う魔法使いに
異常が無いか確認させよう。」
係りの者に話をしてから考え込む学園長を後にして持ち場に着き予定どうりに
2機のレールガンを創りだす。
そして大砲を持つ砲撃兵のゴーレムの武装を換えようと近づいた時
「すいません、まだ整備が終わっていないので待って頂けますか?」
整備の技術者と魔法使いが困った顔で近づいて来た。
後少しの時間で開戦と言う時に何言っているんだ?と思い訳を聞くと
何度も起動用のパスワードを入力しても弾かれてしまうと言う。
パスワードのリセットもゴーレム全体にに魔法障壁が掛かっていて
受け付けないようだ。
・・・まさかこれの事を言っていたのか。
出来るかどうか試しに近くの一体のゴーレムに魔法を掛けて武装を換えて
動かしてみる。
ロケットやミサイルの台座は動かせるがゴーレム自体は全く動かない。
まさか味方に裏切られる事になるとは思ってもみなかった。
しかし今は如何したらよいかと言う浮き足立った心よりも裏切りに対しての
怒りが勝ってきた。
そこに箒に跨りやって来た魔法使いが
「伝令です。ゴーレム起動不可能なことによりこの戦争は出来なくなりました。
直ちに撤退してください!」
学園長にゴーレムが動かない事が伝わり戦争を断念したのだろう。
でもこの怒りは収まりそうに無い。
ならやる事は一つ。
「学園長いや将軍に伝えて、私1人で戦う。手出しはいらない。」
「そんな無茶はよして、うわっ何だ!何だこれは!」
伝令に来た魔法使いと話している間に怒りが募り魔力が止め処無く溢れ出す。
[デストロイトランスモード発動します。]
突然魔法のアナウンスが聞こえた後目の前が真っ赤に染まり意識が飛んだ。
・
・
・
周りが騒がしく起きるとベッドに寝ていてイロイやサーシャそれに学園長や
基地に居た人も数人ベッドを囲むように立っていて俺に呼びかけていたようだ。
どうやら気を失っていて基地の病室のベッドに寝かされていた。
体を見るとこれと言って怪我も無く安心し
戦争はどうなったかと聞くと嬉々とした学園長以外皆は黙り込んでしまった。
そこで学園長に話を聞くと皆を部屋から出して
「圧勝じゃ。ゴーレムが動かないと聞いた時は目の前が真っ暗になったが
キキよよくやってくれた!しかし何と凄まじい魔法か!あの魔法は新しく覚えた
ものか?」
学園長に記憶が跳んでいる事を伝えどういった事をしていたかを聞く。
その内容は驚くものであった。
辺り一面が暗くなり俺が杖で指した所が更に暗くなりそこから戦争用に
作った陶器製の杖が後から後から無数に出てきて一糸乱れず射撃などを
行い出した。
地上に向かって一斉射撃を行い空を飛んできた飛行戦闘ゴーレムに一斉射撃を
行った後ビームサーベルのようにビームを出したまま綺麗な連携をとり
切り付けていた。
俺自身は全身に赤い線が浮かび上がった姿で空に浮いていて杖やレールガンと
連携して攻撃をしていた。
地上の敵のゴーレムに向かって杖を横に振ると振った方向に地上で爆炎が連なり
空を飛ぶゴーレムに向かって掴む動作をするとゴーレムがぶつかりながら
つぶれて壊れ、光の球を呼び出すと敵の陣地に打ち込み至る所で爆発しては
炎と爆風でゴーレムを破壊し、動かない味方のゴーレムに呪文を唱え杖を
振るうと禍々しい形に変形しゴーレムとは思えないほど機敏に動き敵のゴーレムを
粉砕し始めた。
魔法とビーム射撃で弱体化した敵をゴーレムと剣と化した杖が切り付け
跳んでくる弾は杖がビームシールドを何重にも発生させて全て退ける。
全ての攻撃と防御は統率のとれた連携の上で行われていた。
たった一人の魔女に戦場が完全に支配されていたと言うのだ。
そうこの俺に。
!!
フラッシュバックのようにその時の光景が少しずつ思い出されていく。
空を高速で飛び従えた杖に斬りつけさせたり自ら魔法攻撃を仕掛けたり
していた。
圧倒的な高揚感と無慈悲な破壊衝動があった。
-私こそが世界の至高。私に逆らう者は全て殺し破壊する-
後から思い出した形だが何故こんな事を思うのか自分自身が分からなくなる
考えで動いていたようだ。
その後敵側が敗北宣言を出したにも関わらず敵の本陣まで攻め入って敵の大将を含む
兵隊が逃げた後の建物を執拗に破壊しつくしてから魔法が解け俺は倒れたそうだ。
その時全身の赤い線が消えたと言う。
学園長が得意げに話すには物を操る魔法もメジャーAメジャーの扱いで
誰でも出来る事だが多くの数の物を自分の手足の様に動かすのは至難の技らしく
得意魔法としても同じ動きをさせるなら数千、一つ一つ別な動きをさせるなら
百程制御出来れば得意魔法認定レベルとのこと。
その上で今回の戦いでの数万の魔法の杖とゴーレムを自在に操りながら自分自身も
魔法を繰り出すのは誰も真似が出来ない神の領域らしく
更におもちゃが増えて喜ぶ子供のように笑いながら話す学園長。
ヤバイな。学園長は俺を使って何をするつもりだ?不安しか感じられない笑顔だ。
すまない妖精さんと妖精の女王よ学園長の野望を俺自身が加速させているみたいだ。
物思いに耽っていると皆が待っているから治療室を出るように言い先に部屋の
入り口に向かう学園長。
慌てて後を追い外に出るとイロイとサーシャが真っ先に来て「怪我は大丈夫?
魔力は戻った?」と気遣ってくれる。
しかし先程から他の人と同じく余所余所しい感じで何時もより少し離れて話掛けて
来た。
何か居心地が悪いので単刀直入に理由を聞くと口篭るイロイとサーシャ。
代わりに近くに居た魔法使いが喋り出した。
「君が操ったゴーレムの姿は悪魔そのものだ。その跳び抜けた魔力の強さ
それにいくつもの都市を一撃で破壊した魔法、そして今回の悪魔の姿をした
ゴーレム。
これらから導き出される答えは悪魔との契約魔法だ!そうあの呪われた魔法だ!
余りの凶悪さと破壊の力、そして代償に自らの命を払うおぞましさから数百年前に
使用を禁止された禁忌の魔法だ。
君に魔法戦士の資格は無い!」
驚いて少し混乱する俺。契約って悪魔でも書類にサインするとかだろ?
サインする以前に悪魔にあった事も無いしな・・・夢の中のはカウントされるか
分からないが。
仮に俺の魔法が契約魔法とするなら強力なところや無意識のうちに敵を殲滅した
事が理解できる。
しかし漠然とそれを否定する考えが頭の中を支配していた。
「皆の者待つのじゃ。とんでもない言い掛かりを言い出す者が出てきたのう。
悪魔は使役魔法、契約魔法を問わず癒しの魔法は使えぬ。
そして我が手には戦場に紛れ込み瀕死の怪我をした鳥がいる。
キキよこの鳥の怪我を治して契約魔法ではない事を証明して見せよ。」
不穏な空気が支配し出した中助けに入ったのは意外な人物だった。
怪我をした鳥を手にした学園長だ。
手にした鳥を差し出してきたので手をかざしてみる。
[腹部に大きな刺し傷有り。多くの内臓に損傷有り。出血により数分以内に
高確率で死亡。]
頭に響いてくる機械的な声に治療するように言ってみる。
[ナノマシーン治療を行います。負傷者を安定した場所に寝かせ治療箇所を
両手の掌で挟むようにして下さい。]
言われるままに近くの机の上に怪我をした鳥をのせ両手を包むようにすると
掌が青く光だし鳥を包み込む。
時間にして数秒間で光が消え鳥が何事も無かったように起き上がり周りを
首を慌しく回し見ると俺を見つめた後肩に止まり口を突いて来る。
肩に止まった鳥を見るとさっきの傷は綺麗に消えていた。
「うむっ傷は消え鳥はキキに懐きおった。これから導き出される答えは
キキの魔法に悪魔は関わっておらず傷を治した魔力がキキのだと理解した
鳥はキキに懐いた。間違い無くキキの魔法で治したのじゃ。
目の前で実証したんじゃ異論は無かろう?以上でこの話は終わりじゃ。」
学園長が離し掛けると先程難癖をかけてきた魔法使いが目を白黒させ
どう感情を表せば良いのか分からないのか困った顔になっていて
他の魔法使いや魔女は
「まさか瀕死の生き物を瞬時に治すことが出来るとわ。」
「これ程の回復魔法は再生の魔女キキ以外に知らないわ!」
「詠唱無しに複雑な臓器を含めた回復をするとは信じがたい。」
「破壊魔法と回復魔法をどちらもこれ程高次元で使いこなせた者は
今まで居ただろうか?」
皆一様に驚愕と賞賛を口にしていた。
褒められて満更でもないと思う一方魔法が話し出す?事と使い方を
教えてくれて後は殆ど全自動で行うあたり誰かが勝手に行っているように
思え怖くなってきた。
後でじっく調べた方がいいだろう。
「皆の者静かに。キキも問題無かった事じゃし先ほど皆に話しておいた様に
この基地を撤収し故郷に我らの国へ帰るぞ。凱旋じゃ!
そして皆で戦勝パレードに出るのじゃ!」
オーと大きな歓声が上がる。
色々まだ知らない事が多いし調べなければいけない事など悩む事が多く頭の中を
占領しているが、今は難しい事は忘れてこのお祭り気分に浸かっていたかった。
驚くほど四話目までの期間が延びてしまいました。
実際は年末には書き終わっていたのですが年が明けてから仕事が
増えて大変な上に某アニメを見て、わーいたーのしーとかやっていたら
もう5月の終わりでした。
次は心を入れ替えてなるべく早く5話目を出すつもりです。
つもりです。