第二話 魔法使いになった俺は魔法使いキキになった
やっと2話目が書けました。小説って書き始めると止まらず
難しい反面話が勝手に進んでいって面白いですね。
ではよろしければ本文を読んでやって下さい。
ここは魔法球の中、丸いテーブルの向かいに座るフォージャイル学園長が白い髭を擦りながら言う。
「では早速特訓に入りたいじゃが呼び名であるあざなが無いと呼び辛いのう。ここであざなを決めようかと思うのじゃがどうじゃろう?」
確かに君と呼ばれるのは違和感を感じる。良い機会だから滅茶苦茶カッコイイ、いや偉そうな名前にしよう!
「すまんが却下じゃ。大成するには大層な名前は付けないのが常なんじゃ。
ここは最も標準的な決め方で本名から一部を取った名や綴りを変えた名に
してみよう。
本名を言ってみなさい。大丈夫、後で三人とも契約の魔法で君の名前を公表しないようするからの。」
鈴木直樹です。
「変った名前ですね。」とイロイ。まあそうなるわな。
「可愛い名前だと思います。」とサーシャ。かっ可愛いか?この名前が?
「韻を踏んでいるのか、呪術的な響きじゃな。」と学園長。
そんな高尚な物じゃない
イーニスに言った時も酷いもんだったな。
「妖精に本名を言ってしまったのか!?最悪じゃ!何の為に魔法球で会話して
いるか一番の意味が無くなってしまったわ!」
驚愕し落胆する学園長にかなりやってはいけない事をやったしまった実感が湧いてきた。怖いが説明を求める。
「妖精と言う者わじゃな我々人間がこの世界に来る前からここに住んでおったんじゃ。妖精樹の花や実から生まれ人間に近い知能を持ち、何も食べなくても生きて行けるのじゃ。性格は怠惰だが好奇心が強いと言う子供の悪い所を煮詰めたような奴らじゃ。
日がな一日を遊びまわるだけのロクデナシどもじゃが、最初の魔法使いは妖精の
女王に妖精を人間達のお目付け役になってくれるよう求めたのじゃ。
当時の人間の民度は低く、蛮行が頻繁に行われ汚い言葉を乱発し魔法に悪い影響を出したので、数が多く暇を持て余している妖精を使えるか考えたんじゃ。
女王は快諾し、妖精達まで我先に行うと言い出しおったのじゃ。何故か?妖精の女王はお優しい方で理解できるが妖精共は最高の暇つぶしを与えられたようなものだったんじゃろう。
そして人間に付いて行く様になってから格差が生まれたのじゃ。どれだけ貴重で珍しい情報を持っているかと言う事を。
妖精共は休みの度、夜お目付けを解かれた後の時間に妖精の潜り戸と言う異次元通路を通り妖精郷に帰り、辺りから掠めた食べ物や酒を飲み食いし止め処無い会話を続けるのじゃ。
重要なのは話が多いほど、貴重な話ほど他の妖精から持て囃され人気者になり、話題が無いと会話に参加出来ない事もあるんじゃ。妖精的には精神的に死活問題なんじゃな。
そこで君の本名じゃ。多分君の御付の妖精も価値を十分知っておるじゃろう。だから今は大丈夫じゃ。宝石は削り磨いてこそ宝石になる。それまでに何らかの手を打っておく。安心せい。
話が大分それたの。本題に戻るとしよう。あざなは何が良いと思う?イロイ、サーシャ」
「最後がキで終わるのが2回、キキなんてどうでしょう?」
サーシャが提案する。
「伝説の再生の魔女キキですね!良いと思います。」イロイが賛成する。
「良く使われて無難な名じゃな。」学園長も賛成する。
また有名人からとったっぱい多く居る名前かよ。やはりここは俺自身で名前を
決めるべきだが、魔法使いなら良い名前が思いつくが魔女だと名前が出てこないな。
「君の親は優しく賢明な方なのじゃろうな。無難な名前は災いを避ける。
他に候補は無いのでキキで決定じゃ。よろしくのキキ。」
元の世界では聞かない話だな。でも言われてみれば今まで大病も大怪我も無かっ
たな。名前にそんな力があるとは驚きだ。
でもキキっていかにも女の子らしい名前だよね。何か段々俺じゃあ無くなって
行くようで怖いな。
ああっダメだ。悪い方や暗い方へ思考が向いてしまう。他の事を考えて気分を紛らわそう。
そうだ、先程から妖精の話になると学園長が機嫌が悪くなるのは何故です?
学園長の髭を擦る手が止まり、イロイが何かを言い掛けた時
「これが怒らずに済むものか!演説の内容を数えきれない程ばらされたのじゃぞ!憎き悪たれじゃ。あやつ等には良心など無い!糞生物じゃ!」
顔を真っ赤にして怒りながら言う学園長。イロイが「やっちゃったね」と思わせる顔をする。禁句だったらしい。
「でも相談に乗ってくれたりして優しい所も有るわ。」サーシャが少し考えてから話した。
「僕は忘れ物を届けてくれた事など世話を焼く事があるね。」思い出すようにイロイが応える。
これだけ聞くと妖精は子供に優しく大人をからかうのが好きなのか?
「そんな事は無いわ!わしは子供の頃書いた恋文をあちこちにばらされて飛んだ恥をかいたわ!」
つまり学園長の妖精が禄でもないだけのようだ。
「この話は精神が高ぶっていかんのう。心を落ち着かせるためにお茶を飲んでくる。その間に二人で魔法の基本的なところを説明しといてくれ。」
学園長が消える。魔法球から出たようでそれを確認したイロイが
「学園長に妖精の話は禁句なんだよ。魔法の話よりも先に学園での禁止事項と校則を話した方が良いみたいだね。
まず学園内で魔法は無闇に使わない事。どうしても使う場合はあざなを言って
「○○○の魔法を使います。」と宣言してから使う事。
それに他の生徒との接触は肩と手だけで他の部分を触る場合は相手に許可をとってから触る事。特に髪の毛は魔力が溜まり易いので触らない事。
あと先生達についての禁止事項だけど」
「ちょっと待って、その前にその格好はダメよ。」
サーシャが話しに割り込んでくる。
「そうだね制服は無いけど校則で白と黒の服、男子はズボン、女子はスカートが
望ましいと書いてあるよね。」
イロイが同意すると
「そうじゃなくてキキはこんなに美人で可愛いのにそんな格好はさせられないわ!後で街までお洋服を買いに行きましょう!」
確かに酷い格好だけど怒るほどのものか?それにスカートか。勘弁して欲しい。
それより魔法の基礎が知りたいね。
「んーもっと校則や先生について話しておきたかったんだけど後にしておくよ。
じゃあ本題の魔法の基礎なんだけど魔法と言うのは世界に溢れる魔法物質に働き
かけて望むことを具現化する事を言うんだよ。
魔法物質は何処にでも存在するけどそれだけでは何も回りに影響しないたただ存在するだけの物質。
魔力を持つ者が望み命令する事で物質化したり純粋な力に変るんだよ。
例えば!」
「我が手に炎よあれ!」
イロイが伸ばした手のひらに炎が現れ燃える物が無いのに燃え続ける。
「頭の中で炎を思い浮かべて呪文を唱えるんだ。呪文は対象物の設定を言う事で
固定化するためと魔法の暴発を止めるための安全錠になるんだ。
寝ぼけた時や興奮状態の時に必要なんだ。
杖は簡単な魔法には必要ないけど何に共鳴して影響が出るか分からないから最初は杖を必ず使う事。
魔力の大きさは魔力に比例した魔法物質の吸収と使用量に影響するんだ。
物で例えると引き出しと机だね。魔力が大きくなれば引き出しも大きくなり魔法物質を大量に保持できる。机が大きくなれば同時に出来ることが多くなったり、出来る事も大きくなる。例えるなら模型を作るとして模型の大きさが変るんだ。
でも模型の出来はその人のセンスと呪文での調整が関わってくるんだ。
それから魔力の大きさなんだけどキキは1万の魔力を持っていると言われたけど
これは有り得ない程凄いんだ。基本的に魔力がゼロの人は居ないけど魔力10で
魔法の発露、魔法が使えると言われる段階で、魔力50で基本的な魔法は大体出来て魔力100で高度魔法が使えるんだ。魔法を習う一般的な人は魔力50から100前後の人が多くて魔力1000を超える人は少なく魔力1万を超える人は始まりの魔法使いサーニンを含めて片手の指で数えられる数しか居ないのさ。
サーニンはそれまで有った魔法を体系化して基礎を固めた偉い魔法使いだよ。
サーニンを基準に体系化したからそれ以上は分からず魔力測定器も1万までしか
測れないように出来ているんだよ。」
イロイがスラスラと説明する。良く見るとイロイもサーシャも賢そうな顔をして
いる。二人とも優等生だから学園に残ったのか。
「うん本当はもっと年上の人を残したかったらしいけど軍事工場では指導力のある人が必要だから残せる限界が僕らだったんだ。」
感慨深そうに話すイロイ。二人とも今の俺と同い年位なんだよな。
いくら戦争だからって子供に負担を負わせるのは納得がいかない。
とっとと強くなってこの戦争早く片付けてやるぜ!
「おっやるき満々じゃのう。では実践魔法を教えるぞ、大変じゃが付いて来てくれ。」
学園長が戻ってきた。もう怒りが収まったのだろうか?
「もう大丈夫じゃ、早速始めるが先ほども言ったように魔法球の中は精神だけの世界で魔法は実際には発動しておらず出来ると考える心と魔法球の補助でシュミレートされるわけじゃ。もし魔法球の中で怪我を負ったり死んだとしても魔法球から精神が遮断され現実に戻るだけだから思う存分魔法を試すんじゃ。」
随分チートな道具に思えるが魔法戦争がある世界では必然的にあるんだろうな。
先生の指導の下破壊魔法を生徒が放ち続けたり、強力な魔法を暴発したら最悪死人が出た上建物も吹っ飛ぶだろうしな。
「大体理解してくれたようじゃから魔法の発動を始めよう。イロイに教わったと思うがまずは念じて具現化する事から始めよう。蝋燭を用意したから火をつけてみなさい。」
テーブルの上に現れる蝋燭。最初は基本に忠実にやってみよう。
さっき最初は杖を使う事と言われたので学園長から貰った杖で蝋燭の先を指し念じる。
・・・1分ほど火をつけるよう念じたが反応が無い。
「まあ最初はこんなもんじゃろう。想像の仕方を変えよう。体に熱さをあたえた物を思い出し、その物を周りに大量に存在する事を考えてみよ。それを蝋燭の先端に集めていくように念じるんじゃ。」
昔ライターで指を火傷した事を思い出し火のついたライターを蝋燭の周りに大量にあるようにイメージして、蝋燭の先端に集めていくようにする。
音も無く蝋燭の先に火が灯る。
「うむっコツは掴めたかの?この調子で進めてみよう。」
学園長にあれをやってみよ、このようにやってみよと課題を出され試してみる。
結果的にこの学園の入学試験の落第一歩手前と言う散々な評価だった。
物を無から作り出す物質化の魔法は普通かそれ以下で、物を動かしたりする純魔力の魔法は壊滅的にダメだった。
ダメだしをくらった例に箒に跨り空を飛ぶよく知られる魔法を行う時、箒にがに股で乗っかるポーズをとると皆に一斉に止められ
「高さを固定した箒を出すから乗ってみよ。ただしまたがんで良い。」
学園長が腰の高さより少し低い所に箒を出現させた。獲り合えず座ってみる。
思ったより箒が硬く尻に食い込み痛い。その上バランスをとるのが難しい。
「あのまま上手く箒だけを浮かせたら怪我をした上に箒から落ちる事になっておったじゃろう。この魔法は魔力を浮力に変えて体ごと浮かす事が大事で箒はあくまで行く方向を決めるハンドルや体を固定する椅子など飛ぶ時の補助的な物なんじゃ。少し休みを入れて仕切りなおしをしよう。」
皆魔法球から出て行ったので俺も魔法球から出る。精神が戻り研究室の中に立っているとサーシャが先ほどゴーレムが持ってきた飲み物を勧めてきた。
「何処かに座って飲むと良いわ。保温の魔法が掛かって熱いから気をつけて飲んでね。」
応接用の机と椅子がありイロイとサーシャが座っているから俺も座り飲んでみる。匂いも味もコーヒーとココアをたして割った味だ。
変った飲み物を飲んでいると机の上に置いてある本に目が行き、読んで見るが知らない文字で埋め尽くされ全く読めないが、絵などから発音か国語の教科書に見える。
「それは業者が間違えて持ってきた初等教育の教科書じゃ。今年度改訂した基本魔法の教科書もある。丁度良い、キキもって行きなさい。」
大きな椅子に完全に倒れこみやる気の無い声で学園長は言った。
明らかに全くもーやる気がありません、と言う声だ。
確かに高魔力保持者と言う事で期待させておいて実際は全くダメだったのは認める。でもこちらも本気でやっているのだからそんな態度はとって欲しくない。
「本当ならなキキが魔法の教育を受け攻撃魔法の1つでも扱えていたら役所から国王陛下に宮廷魔女の推薦状と共に高魔力所持者の報が行き、盛大な壮行式を行って戦場に行っていたじゃろう。
しかし魔法教育を受けていない高魔力所持者と言う無限大に近い可能性は我が元に来た。短い期間に実践に耐えるようにすればワシの名声も上がり、学園の2つの希望も守れたんじゃがな。」
学園長が目を閉じて考えながら言う。
ってお前の欲も絡んでいるのかよ!と心の中で突っ込みを入れる。
「その言い方は酷いのではありません?キキはこんなに頑張っているのに!キキに謝って下さいな!」
サーシャが学園長の机の前まで行き机に手をつきながら言った。
「うむっ突然の幸運を手にして舞い上がってしまったんじゃ、すまぬキキよ。
だが次の戦争に負ければ学園の希望と言える2人の天才を守ってやれないのが一番辛いんじゃ。」
「えっ?学生がどうなってしまうんですか?」
穏やかでない発言に怒りが引っ込み心配で聞いてしまう。
「次の戦争で負ければイヴァイタ連合国家の成績優秀な魔法使いと魔女の学生を上から20人引き渡さなければいかんのじゃ。我が学園の2人はその筆頭じゃ。」
成績優秀な2人の生徒が抜け、見せ掛けだけの役立たずが残れば嫌になるだろう。でも本当にその態度はやめて欲しい。俺自身のモチベーションはもう0だ。
これ以上やられたらマイナスになって自棄酒飲んで寝るぞ?
「次の戦争まで後10日しかないんですよ?元々無理だったんです。」
「キキは時間さえあれば大成しますわ、後で連れて行かれる先輩方諸共に他の方々も取り戻せば良いのですわ!頑張りましょうキキ!」
子供二人に励まされて嬉しいやら、やっぱ悲しいわ!
それよりあと10日って絶対無理だろ?何考えてんだこの髭は?
あーっ映画やアニメみたいに既存の情報を電子情報にして一気に覚えられたら良いかもしれないなどと考えながら机の上の教科書を触った瞬間!
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ
頭の中に音をたてて教科書の現地の文字が漢字や平仮名に変換され読み込まれてくる。目の前に棒がぐーっと伸びて行き、読み込み完了が表示される。
「今魔法を発動したな!どうしたんじゃ?」
学園長が驚いて椅子から背を起こして聞いて来た。
「いえおっ私にも分かりません学園長。」
俺は現地の言葉で応えた。・・・えっ?
研究室の中が静まりかえる。その静けさを学園長が破る。
「いっ今のは失われていたと言われる高速学習の魔法か!?それに今の魔力の
膨大な流れ、キキの得意魔法なのか?これは凄いもう一度やって見せてくれぬか?」
俺の知らない心の中にこれだけではない、もっと使ってみたい!と言う思いが
出てくる。まるでもう1人の俺に言われたような違和感のある知識と感情。
「学園長、その前に魔法球の中で試してみたい事があるので使って良いですか?」
「んっ?うむっ何をするのか興味を引かれる。ワシ等も入ろう。」
学園長達と魔法球に触れ中に入る。
手始めにさっき失敗した飛行魔法だ。ある映画のワンシーンを思い出して真似る。地面にしゃがみ込み力を込めジャンプをする形で上に飛ぶ。
体に圧力が掛かってきて下を見ると皆が小さくなって行くのが見え、これ以上
上に飛ぶのはやめて横に飛んでみたり慣れてくると曲芸飛行もやってみた。
なんだ全然簡単じゃね?と思いながら速度を落としながら着陸する。
「こんな短時間で飛行魔法が上手くなるなんて凄いです!」
「でもこの飛び方は僕達の教科書に載っている方法と違うね。」
二人が感想を述べる。こちらとしては方法が違う程度の事は気にならない位
先ほどの失敗の汚名返上が出来て気分が良い。
あれっ学園長が俺を睨んでいる?
「キキ、他にも出来る事が有るのかね?是非見せて欲しい。」
学園長が怖いぐらい俺を見つめて言ってきた。いや本当に目が怖い。
他にと言われると急には出ないが・・・瞬間移動をやってみよう!
ある一点に杖をさだめてその位置まで体を滑らせていくイメージをし、それを
高速で行うようにさらにイメージする。
そして実際出来た。まるで映画やマンガのように。
二人の子供が驚き歓声を上げる中学園長が静かに睨みつけてくる。
「これも凄い!ワシは見た事はあっても再現出来なかった魔法じゃ。だがまだ
他に有るんじゃろ?攻撃魔法が。見せてくれぬか?」
先程より更に鋭くと言うか目を血走らせて睨みながら言ってくる!
学園長怖すぎ!
考えてみれば凄いと言われた魔法は直接攻撃に使える物ではない。
戦争をするなら攻撃魔法が必要だろう。
相手は人では無いし一瞬で終わらせるのが良いだろう。あれをやってみよう。
皆見渡す限りにゴーレムの大きさの標的を並べて作り出してくれないかな?
「まかせよ!」
学園長が呪文を唱え地面を杖で指すと一斉に等間隔に地面が隆起した。
舞台が出来たので早速魔法を使おうとすると呪文と操作方法が思い浮かぶ。
まるで何処からか情報をダウンロードするように。
並ぶ標的の真ん中に狙いを定め
「おーっ見詰め続けれぬ眩しき地上に落ちた太陽よ、その限り無き炎の風で
全てを焼きなぎ払えーっ」(実際はもっと長い)
爆発しようとする物を外から圧力を掛け爆発を押さえ込むようにする。それと
同時に爆発の威力を上げ、圧力を突破するととてつもない光と風と爆音を発生
させた。核爆発だ。
あっと言う間に標的を吹き飛ばしかなり離れた俺達の所まで爆風がくると
精神が遮断され、心が魔法球の外に押し出された。
「なっ何ですかあれは?怖い!」
「何がおきたのか理解出来ないよ。今どんな魔法を使ったの?」
何がおきたか理解できない二人と対照的に笑い出す学園長
「凄い!凄いぞ!あの伝説のニラバハラの爆炎の魔女も相手にならない
圧倒的な炎と爆風!こんな魔法が存在するとは驚きじゃ!
もう戦う前に戦争は決した!我々の勝利じゃ!」
「だっダメですよ学園長!あれが爆発なら戦場に居る人間を倒すだけでなく
戦場の外の街の人にも影響が出ます!あの魔法は余りに強すぎます!」
狂喜乱舞する学園長を諌めるイロイ、何か考え込んでいるサーシャ。
人の居ない戦場なら問題無いと思ったがダメなのか?
強さはある程度調整出来るけど放射能汚染は免れないからなあ。
この後話し合いとそれに伴う魔法の試行錯誤が続いた。
戦場は負けているイヴァイタ連合国家内の荒地に用意した場所を使うようだが
直径10キロも無いらしく後方支援の魔法使いも多く大量破壊兵器は使え
ない状況であることを確認し、対応した魔法を探し出した。
結果SFと既存の兵器からレーザー砲、レールガン、ロボット、ホーミング
ミサイル、携帯可能な小型武器だ。
どうやら元居た世界で実際に存在する物や化学反応とSFなど映画でリアルに表現
されている事をイメージ化し、再現する魔法のようだ。
その再現した物はどれも一長一短でレーザー砲は強力だが杖が燃えてしまい連射が不可能で、レールガンも威力が高いが場所を固定してからでないと打てなく、
隙が大きい。ロボットは無理やり作り出し動かしている感じで動きが不安定すぎる。ホーミングミサイルは光る玉で再現し、杖で誘導出来るようにしたが出現させるのに時間が掛かる。
一番無難なのがライフルなどを実体化させる方法だがこれじゃあ普通に戦争だよね?
他にも何か無いかを思い出していると学園長から俺の世界ではこんな変った魔法が存在するのか?と聞かれ、科学や空想科学を再現していて今まで知られている魔法とはかなり違うところが有る事を伝える。
では他の魔法使いとは違うのか?と聞かれ、恥ずかしいが俺の住んでいる国では
本物の魔法使いは存在が確認されず、その代わり35歳を童貞で迎えると魔法使いになると言う都市伝説があり、実際35歳の誕生日に魔法を使えるようになったと言うと皆一斉に微妙過ぎる顔になった。
何か反応してくれた方が良いのだが何も言って来ないから恥ずかしくてしかたない。
「童貞魔法とでも呼ぶべきなんじゃろか?変っているがもの凄い力と可能性を持っているのう。時間が有れば研究せずにはおれんな。・・・そう言えば異世界転移の魔法でこちらに来たと言っていたがその魔法も童貞魔法なのか?そうであれば納得できるの。しかし最初は1つしか魔法が使えないと言うに少しの時間でこれ程多様な魔法が使えるとは驚かされ・・・違和感を感じるのう。」
嫌な沈黙を終わらせてくれたことは有り難いけれど童貞魔法・・・最悪のネーミングだ!
「貴女の得意魔法は何ですか?」「童貞魔法です♪」
ダーッ有り得ん!女の子の口から童貞と言う単語が出ると言う以前に恥ずかしくて死ぬわ!
マジで!俺がカッコイイ名前を決めるぞ!魔法の名前位良いだろ?
「んーっ童貞魔法と言うのかどうかと。唯単に異世界特異魔法で良いんじゃないですか?最初の魔法使いも異世界から来て使ってたんですから。」
「そうじゃな、異世界転移者には少なからず持つ魔法じゃしそのほうが一般的に使用されているしの。」
くーっまたか?またなのか?喉の辺りまで英単語を4,5こ並べた超カッコイイ名前が出掛かっていたのに!
「それでは今使える魔法での実践を想定したシュミレーションを行おう。モノに成るのに少なくとも5日は掛かると思っとったからこれは良い誤算じゃ。それに予想外の強力な魔法、これなら一騎打ちに持ち込めるな。」
「ヘクトール王国の最高位魔法戦士は炎竜のラディーネですね。公式発表では魔力3千越えの熟達の魔女で、実力は炎竜に炎の魔法で打ち勝った程です。流石に無理ではないですか?」
「ふふふっこんな事も有ろうかとあの魔女の戦力分析をして対策まで考えておったのじゃ。キキの魔法なら問題無く倒せるじゃろう!
そしてキキ!魔法少女を名乗るんじゃ!」
「・・・はっ?」
何を急に言い出すんだこの髭は?
「この千年近く戦争の勝敗を一騎打ちで決めた事は何度もあったがそれは
熟練の魔力の高い魔女や技術の高い魔法使いで、言い換えれば歳の上がったベテランで若いのが出る幕は無かった。
だがキキの出現で覆される。昔は魔法を使うものは15歳で成人扱いを受けた。
魔力が安定するからじゃ。特に女子は10歳頃から15歳までにとてつもない魔力の伸びを見せ、その華麗なる成長から魔法少女と呼ばれるようになったのじゃ。
そして魔法少女が一騎打ちに出てきたらどう思う?熟練の者は舐めてかかり
勝てば相手国にまだ伸びる敵を相手にさせる圧倒的な圧力をかける事が出来る。
それに魔法少女であればほとんどが魔法学校に在籍し、我が学園が一躍有名になる!良い事尽くしではないか!」
何からつっこんだら良いか分からん。とりあえずまた髭の欲が絡んでるのか!
いや、いやいやいやその前に現実逃避したくなる単語魔法少女だ。昔見たテレビではステッキで悪を懲らしめる的な物だったと思うが、今の魔法少女は銃あり、刀あり、素手で敵を殴り倒す、しかもミニスカートで!
やめて!宴会の出し物での女装も拒否したオッサンなのよ?ハードル高過ぎだろ!
正直何度か転職をしてきたが得体の知れない会社に入るような表現し難い恐怖しか感じられない。
「一騎打ちは魔女、魔法使いの晴れ舞台です。キキは胸が大きいからセクシー系の服も良いですけど私としてはミニスカートとリボンははずせないカワイイ系でコーディネイトするべきだと思います!」
嬉々として喋るサーシャだが怖い、やめて!敵の前に本当の敵が居た!
「格好は後で考えれば良い。戦闘のシュミレーションを行いながら一騎打ちに持ち込む妙案も教えよう。」
こうしてとても精神的に嫌な案件を抱えたまま魔法と戦闘の特訓が始まった。
次はゴールデンウィークに書き進めますのでその辺りで
3話目を出すつもりです。