第一話 魔法使いになった俺は魔法学校の生徒になった
始めに
ある小説を見てこのサイトを知りました。
面白いのに何時まで経っても更新されず、もやもやした気持ちを
昇華させるため自分で小説を書いてみました。
今まで無かったと思う話、いやあっただろと思われる内容ですが読んで
頂ければ幸いです。
プロローグ
俺の目の前の大きな鏡に青みが掛かった神秘的な黒髪の美少女がニッコリ微笑んでいる。
いくらガン見しても怒らないし警察も呼ばれない。逆に手を振っている。
何故か?鏡に映っている者、つまり俺自身であり新しく買った服が似合っているか確認している所だから。
魔法使いや魔女がよく被っている三角帽子を少し傾けて被り、服とスカートが良い感じにコーディネイト出来ているのを確認して嬉しくなり腰に手を当てて少し踊ってみる。
少し前なら女物の服、しかも子供用を着るなど狂っても出来るか!とか思っていたのに慣れって怖いね。
今では自分から合う服を探してきて着るようになった。
慣れって本当に怖いね!
しかもポーズとったり鼻歌歌いながら踊ってみたり・・・慣れたのか?いやどう
してこうなったのだ?一気に少し前の自分、元の世界のオッサンだった俺の記憶が蘇る。
ボロアパート1階の角部屋2DKのリビングに使っている部屋の真ん中にコタツがあり、その上にイチゴショートケーキを置き蝋燭を刺し火を着け吹き消す俺。
「ハッピーバースデー俺」
35歳の誕生日だった。ここの所もう当たり前になった御一人様誕生会を例年と変わり無く過ごすはずだったがその年は違った。
ペーケペケペンペンペ~ン♪そんな音がした様な錯覚と同時に魔法を覚えたのだ。RPGの様に学んだ訳ではなく極自然に魔法を覚えたのである。
35歳を童貞で過ごすと魔法使いになるのは都市伝説かと思ったがどうやら本当の様だ。
何故なら俺、鈴木直樹(35歳童貞)が魔法を覚えたのだから。
名前の語呂が悪いと思うだろ?
俺自身悪いと思って親に何故この名前にしたかを聞くと
「昔偉い事した人でよくある名前だから」と言う安直な訳、信じられるか?
魔法の話に戻ると覚えたのは異世界転移の魔法。最初は夢の様に心だけが異世界に行き見たり聞いたりするだけだった。
慣れてくると目を閉じて念じるだけで体が一瞬浮いた様な感じの中、異世界に移動して戻る時も同じで目を閉じて念じるだけ戻ることが出来た。
簡単で金も掛からず旅行が出来ると言う娯楽を手に入れて休みの日は殆ど異世界旅行に出かけていた。
平日も仕事後出かけられたらと思ったが上手く行かない。
異世界とこちらの世界とは時間の流れが違うようで丸一日異世界にいてもこちらの世界に戻ったら一時間も経っていない時もあれば、その逆もあったのだ。
今まで行った異世界の事を細かく話すと限が無いから大雑把に特に記憶に残った事を上げると、木の上で生活する猿人の村、湖畔に住む半漁人の街、地下に高度な文明を作る地底人、地面が見えない空の浮島に住む鳥人、牢獄に囚われた天使を助けたり、悪魔に追いかけられたり色々あった。一番最初に行ったのは暗い洞窟の中にでかい肉塊が有るだけのシュールな世界であったのを覚えている。
後は今居る世界の酷似した世界が殆どだが空にUFOみたいな物が飛んでいる世界もあった。
最初はこの魔法で一儲け出来ないかと言う下衆な根性が働いたがこれも上手く行かない。
珍しい物を見つけ持ったまま元の世界に戻ろうとすると魔法が発動しなくなったり、戻れても物が消えていたりするのだ。
逆にその世界に存在しない物は持ち込めないもしくは使えない。せめて変わった音楽や美しい景色を撮ろうにもカメラや録音機が使えないのだ。
今居る世界に酷似した異世界ならスマホも持ち込めるのだが録音しても撮影してもデータが保存出来ない。
どうやらその世界の形式に合った物しか受け付けられないみたいだ。
致命的なのは音楽の知識も絵の才能も小説を書く文才も無い事だ。異世界で得た知識を何一つ再現出来ず有意義に使えない。
無駄な足掻きと分かってからは純粋に旅と割り切り楽しむようになった。
先ほど異世界に行くにはその世界の形式に合わせた物しか使えないと言ったが服どころか俺本体まで影響が出てくるのだ。
具体的には猿人の世界では俺が猿人になってしまうのだ。他には魚人や鳥人など体の感覚が変になる様な変化も有る。
服は化学繊維の物は殆どアウトで裸になる事が多く、対策として異世界旅行前には軽装で化学繊維などを使わない服を選んでいる。
でこの世界(異世界人が迷い込む世界アーティファ)に来た。
最初は畑が一面に広がる風光明媚な所に出てきて回りを見ると箒に乗った人間や大きい四角い箱の様な物体が空を行き交いして、変った建物が密集する街に見える場所が遠くに見え、今回は当たり(変った世界)を引いたと思って喜んでいた。
その後に服がダブつく事に気付き体が少し小さくなっていのを知った。注意して体の変化を調べると髪が伸び、胸が出て股間のナニが消えていた。
この世界は女しかいないから体が女体化したものと深く考えずオッパイを弾ませたり揉んだり股間の割れ目を指で擦ったりして楽しんでいた。
「ちょっ、ちょっとあなた公衆の面前で何しているの!今すぐ止めなさい!」
いきなり頭上から甲高い声で叱られて反射的に上を向くと人形に虫の羽が生えた姿、オーソドックスな妖精が手が届く距離に飛んでいた。
妖精!初めて実物を見る事が出来た妖精!CGじゃなく本物が目の前を飛んでいる。
「あなたこの世界の人じゃないでしょ?この世界では下品な行いはしてはいけないし汚い言葉を使う事も禁止されているの!今回は知らないから大目に見るけど次からは懲罰の妖精部屋送りになるわよ。分かった?」
ムッとした表情で腰に手を当てて怒る妖精。
「懲罰の妖精部屋?」急に言われて鸚鵡返しをしてしまう。
「行いの悪い人を矯正する所よ。行ってみれば分かるけど二度と行きたくは無い所よ。それから自己紹介が遅れたけど私はイーニス貴方の素行指導とこの世界の言葉を使えるまでは他の人との会話を翻訳してあげるわ。これから長い付き合いになると思うからよろしくね」
俺も自己紹介、っと言っても名前と魔法で異世界転移をした事を言った。やはり反応は芳しくなく変った名前で言いづらいと言われてしまった。ただ魔法で異世界転移をした事には「本当に?凄い!」の連発でかなりの好評であった。
それから自分を俺と言うなと怒られ、次は懲罰の妖精部屋送りになるよと脅してきた。
・・・異世界には何度も行っているせいか大体の事は驚かないけれど翻訳を買って出る者が居る世界は初めてで少し驚いた。それに長い付き合いになると言われても現地時間で大体何時も2,3時間で帰るのでそこまで付き合ってくれれば良いんだけどね。
「じゃあお言葉に甘えてここに住む人達と交流したいから街まで案内してくれない?」
「そうね、異世界から来た人は街の役場で審査して住民資格がもらえるから行かないとね、着いて来て」
近くの道まで飛んで行って俺を手招きしている。
心の中でガッツポーズを決める俺!
他の世界だと服装などの違いから原住民から不審がられて町など原住民の多く居る場所は行き辛くて文明的な物が殆ど見れない世界が多いのだ。
それなのに向こうから住民資格までくれると言うのだから願ったり叶ったりだ。嬉しい反面今まで同じ世界に異世界転移はした事が無いんだよね。だから今日は少し時間を延長して十分堪能してから話になった妖精に訳を言ってから帰ろう!そう心に決めて妖精の後を付いて行った。
異世界の街で
街に着いて最初に感じた事は驚いたことに文明レベルが高い事、元居た世界かそれ以上のレベルであったからだ。
こちらの世界に来た時に箒の跨って飛んでいた人間がいて妖精まで居るのだからファンタジーな世界、中世ヨーロッパの町並みを考えていた分ギャップも加わってカルチャーショックが強かった。
道を車と思われる物が人を乗せて走り、空を先ほど飛んでいた箒に乗った人間や四角い箱の様な物があちらこちらに飛んでいた。
ネオンの様な看板や信号機それに自販機の様な物まで存在し見た目以外は元の世界に似ている。
しかし建物は屋根が広げた傘の様な変った形をしていて、高層建築物はその建物を縦に積んで行った感じに変っていて、極めつけは車や空を飛ぶ四角い箱、自販機にまで顔が付いてる。よく見ると車の顔の目が左右にギョロギョロ動き周りを見ている。実にシュールだ。
そんな感じで変った物が多いからつい周りを見回しながら歩き完全な御のぼりさん状態であった。
イーニスも小馬鹿にした感じに俺を見ていが旅の恥は書き捨て、だから別に気にはしない。
気になるのは当たり前のように街を男が歩いていたりする事だ。今までの異世界転移の法則が崩れてしまう。まだ情報が少ないのだから後で調べればいいやと深く考えず異世界の変った景色に堪能し続ける。
それから少し歩き続けると建物の前にイーニスが止まりこの建物の中で審査をすると言ってきた。
周りの建物に比べると高さは無いが横に広く重圧な感じの建物でお役所と言われれば納得する建物である。中に入り辺りを見回すと壁は漆喰で塗ったように白く、柱と天井は木で出来ていて目の前に長いカウンターが有りそこで職員が対応している様はいかにもお役所な感じで元の世界と違わない事に変に安心してしまう。
イーニスが職員と話し終えるとこちらに手招きをしてくるので職員のいるカウンターの前に行った。
水晶をはめた見慣れない機械を取り出す職員。何をするのかイーニスに聞くと
「一番最初に魔力検査をするそうよ。」と楽しそうに言う。と言うかはしゃいでいる。
「魔力検査?」またしても鸚鵡返しをしてしまう。名前や他の個人情報などの書類手続き以前にすることか?
「そう魔力検査、この世界の大体の国では魔力に合った仕事や待遇が受けれるの。魔力は体から放出されていて人によって波長が違って、それを水晶で録画に登録するみたい。
それから特に貴方は異世界で魔法が使えたんでしょ?異世界転移をすると魔力が増幅するみたいだから元々魔力の高い貴方は魔女の待遇、しかも上級の待遇を受けれると思うの。上手くいったら私有名魔女の御付妖精になれるの!」
イーニスが先程から悦んだり興奮している訳はそれらしく有名魔女の御付になるのはどうやら妖精にとってはステータスみたいだ。
「準備完了しました。この機械の正面に立って水晶を見つめて下さい。」
イーニスと話している間に職員が準備を整えてくれていた。早速受けてみる。
機械をいじり出す職員。水晶が発光した後何度も水晶を見て緊張したような鬼気迫る顔をして他の職員に話しかける。職員がゾロゾロ来て機械の水晶を覗き込み何か話し始める。一番奥の机に座っていたその部署の偉い人まで話に加わり早足で何処かに行ってしまった。
イーニスが所々翻訳してくれた内容は
「1万越え?本当に?」「凄過ぎだろ!」「新たな伝説だ!」「やったぞ!我が国の勝利だ!」などなど
それからはイーリスは興奮が収まらないのか笑顔万遍で頭上を飛びまくっている。
この状況だけ見ても大体分かるよ。俺が超絶凄い大魔法使いだって。いや超絶凄い魔女か?
色々と妄想していると先程出て行った偉い人が更に偉く見える人を連れてきて頭を下げてお辞儀をしこの方はこの役所のトップで首都オデイルの都知事であるジョルド・エバルスであると紹介してきた。
その都知事に是非聞いて欲しい話があるので奥の応接室に来て欲しいと言われる。
「わかりました、話を聞かせていただきます。」と動じないように話したがこんなVIPなど待遇生まれて初めてで心の中では次どうしよ!どうしよう!と一杯一杯の状態である。我ながら情けない。
しかし人生長く生きているだけで何の進歩も無いと考えたら逆に冷静になれた。
冷静さを取り戻して奥の部屋について行く。
豪華な応接室に入ると豪華な椅子に座るよう言われ高そうなティーカップでお茶を出してくれて、少し待つように言われる。
少し経ってさっきのお偉いさんを含め6人も人が入ってきた。
席に座ると衣を正し俺を見据え口を開く都知事。
「まず貴方を正式に我々の住むイヴァイタ連合国家内レーゲン王国の国民にして最上位魔女に認定し登録させて頂きます。つきましては早急で申し訳ありませんが国民として最上位魔女としての義務になる隣国との戦争に参加していただきます。」
貴方を正式にわが国の最上位魔女に認定し登録させて頂きます。
うん
隣国との戦争に参加していただきます。
うん?
いきなり戦争?いや待て待て、いくらスーパー凄い俺でも戦争はないでしょ?戦い方なんて知らないよ?
まあいざとなったら魔法で元の世界に戻るから安請け合いしてもいいんだけどね。
でも魔力が強いだけで戦争に引っ張り出される事に興味が出たので質問してみる。
「おっ私は魔力が高いそうですが戦争などした事がありません。どう戦えば良いのですか?」
皆一斉に「えっ?」と言った顔になり、考え込んだりこちらを見ながら横の人に話し出したりした。
「貴女の元の世界ではどういった魔法の教育を受けどのような得意魔法を使っていましたか?」
考えをまとめてから都知事が聞いてきた。魔法は自動で覚えたので魔法の勉強はしておらず得意魔法と言うよりも一つしか使えない魔法が異世界転移の魔法である事を伝えた。
また皆一斉に「えっ?」と言った顔になり「想定外だ」とか「魔力が高いのに教育を受けていない?」とか使い物にならない!」とか散々な言われようである。
なんか一気にモチベーションが下がった。さっきまで「新たな伝説」とか「数千年に1人の人材」とか散々持ち上げといてこれですか?あーもういいやそろそろ帰ろうかなーっ
横を向くとイーニスまで何か言いたそうな渋い顔をしている。
もうどうでも良くなったから聴いていなかったけどまだ議論はされていて結論が出たようだ。
「それ程の魔力を放っておくのはもったいない。魔法を学習すればきっと強力な魔法が使えるようになるでしょう。そこで我が国にあるトーディ魔法学園で魔法を習ってきて欲しい。
今学園長に宛てた書状を書くのでこれを持って行ってもらいたい。
それから住む場所・生活用品・学費を含む資金一切を国が支払います!
難しいとは思うが早く戦力になって欲しい。大丈夫君はまだ若いのだから。」
都知事がが今にも襲い掛かってきそうに顔を近づけ凄い迫力で迫りながら言う。
ズブの素人と知った上で戦争させようってどんだけブラック企業ならぬブラック国家なのか計り知れないな。
あと若いって35歳なんですけどね。この世界であった人は白人系の人が多いから日本人は大体若く見えるのだろうか?それともここの人達はとんでもなく長寿なのだろうか?
まあどうでもいいや。魔法学園は某映画を見て興味あるから行く途中国費で飲み食いして魔法学園も楽しんでから元の世界で明日仕事があるからとか俺にはこんな大役無理ですとか言ってトンズラさせてもらおうそうしよう!
心は決まったので
「それでは可能な限り頑張らせていただきます!」安請け合いをしてしまった。
俺がお辞儀をすると都知事もお辞儀をしてから握手を求めて来たので握手をして、この世界でもお辞儀や握手の習慣が有るんだな程度の事しか考えておらず、この時は自らややっこしい方に進路を進めている事に無関心であった。
トーディ魔法学園
頼んでないのにあの顔の付いた車で魔法学園まで送ってもらえた。完全自動操縦みたいだけど運転士が居てハンドルも付いている。車の中から町並みを見ると看板が出ているからレストランやカフェと分かる店が見える。
国費で飲み食いしてやろうと考えていたがまだこの国のお金を全然もらっていなかったんだな。
取り合えずお金が入ってから行く店を吟味しておく。
車は街から少し離れた小高い丘の上に在る建物の門の前で止まり、同行していた役所の職員から学園には話を通してあるから真正面のひと際大きい建物に行き学長に会うように言われた。
笑顔でお礼を言い門をくぐる。やはり中世風の建物にローブを纏った学生が行き交っているのだろうか?
妄想全開で周りを見る。
・・・誰も居ない。しかもそれっぽい建物は真正面の建物だけで道の両脇に工場みたいな建物が並んでいてまるで何処かの製造系の会社に来てしまった感じで妄想が瓦解していく。
それでもまだ真正面の建物がある。気を取り直して大きな門を開き中に入る。
・・・また誰も居ない。建物の内装は国会議事堂が一番近いような感じで膨らんだ妄想からはかけ離れていて、それでもこんな物だろうと現実に折り合いを付けた。
しかし話が通っているなら誰か迎えに来るだろう普通。不親切だなと思いながら建物の中を散策しながら歩いていると数冊の本を重そうに抱えて歩く少年が居た。
格好は私服に三角帽子を被った姿で、なんか違うといった思いが始めて学生に会えた喜びを半減させた。
でも笑顔で話しかける。
「ねえ君ここの学生さん?すまないけど学園長はどちらにいるの?」
少し固まる少年。こちらを頭からつま先まで見て手に持っていた書状に目が止まり
「君は途中入学の方ですね。今から学園長先生の所に研究用の資料を持って行くところだから付いて来るといいよ。」
顔を見ると整っていると言うか可愛い感じ、年上のお姉さんお兄さんに受けそうなショタっぽい少年が応えて言ってきた。
しかし36歳のオッサンにいや性転換しているからおばさんに君はないだろうこのガキは!ちょっと違えばこのガキの親と同年代になるかもしれないのに。
もっとも結婚する甲斐性もないから魔法使いになってここに来たんだから俺が悪いのか?
まあ子供の他愛無い言動だ。引っかかる部分はあるけど大人らしく許そう。
学長の居る研究室に行く間に少し話をしようと自己紹介をしようとすると止められ
「魔法使い・魔女になるなら本名以外特に真名を持たないなら名前を名乗ってはいけないよ。名前を知られてしまうと力を削がれたり操られてしまうんだ。」と説明してくれた。
そう言えば今まで会った人はほとんど名前を聞いてこなかったし書類に個人情報を書くと言う事も求めてこなかったな。
ではどうやって相手を呼ぶのかを聞くと第二の名前あざなを呼ぶそうだ。
この少年は自らのあざなをイロイと言い、あざなは大体は短めの名前にするそうだ。
他にも学園長に会うまで聞きたい事が色々あったが結局名前の話を詳しく聞きすぎて他の事は聞けなかった。
学園長は入った建物から少し離れた研究棟と言う魔法の実験を行う建物に居た。
自分だけでは時間内には見つけだせなかっただろう。
イーニスも始めてらしく回りを珍しそうに見回していたので道を聞くことは無かった。
「学園長、イロイ入室します。お客様をお連れしました。」
並んでいる扉の中の一つの前でイロイがノックをした後扉を開けた。ついでに俺も
「失礼します、先ほどジョルド・エバルス都知事の紹介でこちらに来させて頂いた者です。」
言いながら部屋に入ると目に入ってきたのは大きい本棚・色々置いてある机そして台座の上で光る水晶に手を当てている白髪に白髭の老人が居た。
しかし聞いていないのか反応が無い。イロイが抱えていた本を机の上に置き、水晶に手を当てると我に返ったようにこちらを向き
「君の事は聞いていたが研究に没頭して迎えに行く者を手配するのを失念しておったわ。すまんかったな。
話は聞いたが君が異世界転移の魔法を使ってやって来た高魔力所持者か。」
知的な鋭い眼差しで俺を値踏みするように見てくる。
「本当は重要な話じゃから部屋を変える所じゃが急ぎの研究があるのでここでしよう。イロイ、何か飲み物を手配してくれ。サーシャもくるから四人分じゃ。」
手配?持って来てじゃあなく?イロイを見ると入り口付近に立っている人間サイズの木で出来た人形に何か言っている。人形は
「分かりました、四人分用意します。」と言ったきり動かなかった。何これ?
学園長は先ほど触っていた光る水晶の前に俺とイロイに立つようにに言ってきて、サーシャがもうすぐ来るから少し待つよう言った。その間に書状を渡し読んでもらう。
「学園長、サーシャ入室します。」学園長の言うとうりすぐに癖のある栗毛の女の子|(この子も私服に三角帽子の格好をしていた)が入って来て、その後ろに先ほどイロイが話し掛けていた人形と同じ人形が液体を満たした4つのコップをお盆に乗せて入ってきて、机に置くと出て行った。
通信機能が付いて自足歩行どころか簡単な作業も出来るロボットなのか?技術レベルで元の世界よりかなり上のようだ。
「サーシャも来た事だし始めようか。最初にわしが学園長のフォージャイルじゃ。この二人はイロイとサーシャわしの研究補助のために学園に残っておる。隣国と戦争中のため、他の生徒や先生はほとんど軍事工場に借り出されて居らぬ。
それから魔法使いがしてはいけない事が2つあるから先に言う。まず本当の名前は言わぬ事。
んっ?イロイに聞いているか、ではもう1つ、人などを指差さない事。魔法的に照準を合わせた事になり対象と自分の間に強い共鳴反応が生じ、良い事も悪い事も伝わるのじゃ。人が対象なら心や感覚まで伝わる。
魔力が強い者ほど伝わる力が増え、強い憎悪をぶつけると死に至らしめるのじゃ。
その時指差した者に死の絶望や憎悪が伝わってくるんじゃ、ただではすむまい。
そこで杖を使うのじゃ。歩く時に使う長い杖でも良いが懐に入る木の棒の大きさの物でも構わん。緩衝物になり指し示す物になれば何でも良いんじゃ。
学園内の売店でも売っているがすぐに用意した方が良い物なので、わしの予備のを上げよう。」
杖を受け取る。先が少し尖っているだけの30センチ位の長さの木の棒で彫刻とか一切施されていない。
売店で売っているんだ。専用の杖とかないのかな?後で聞いてみよう。
「では入学の手続きに入ろう。よろしいか?」
「はい、よろしくお願いします。」即答する。
「うむ、まず君は異世界から来た高魔力所持者じゃ。都知事から推薦状を受け取った。学生寮に住んでもらい食事は今はやっていないが学生食堂を使うと良い。
制服は基本無いんじゃが三角帽子は必ず被り、野外活動の時は外套を着用する。
服など生活必需品は国から支給される情報端末紙を渡すのでそれで買い物をしなさい。良いか?」
「はい。」とは応えたがちょっと待って欲しい。
イーニスが翻訳してくれるのだが言葉に違和感を覚える。外套ってマントだろ?情報端末紙って何だ?キャッシュカードか?何故こんな訳し方をするのかイーニスに確認すると外国語に対応出来ないし、汚い言葉が含まれているか分からないので出来る限り日本語で翻訳するそうだ。
「イーニス凄過ぎだろ。」と褒めると
「私達妖精なら誰でも出来るわよ!簡単簡単。」大居張りだ。
懲罰の妖精部屋送りの件もあしどうやら妖精には何かサーバになる物があって情報の引き出し・共有が出来るみたいだ。
学園長は俺とイーニスが話し終わるのを待って話し掛けてきた。
「学園での勉学についてじゃが魔法の知識の習得と実践を行っていく。年齢の制限は無く、下は文字の読み書きなど一般知識習得後からじゃからこの国では10歳からで上は学び直す者もいるし何年たっても習得出来ない者も居るから制限が無い。逆に有能な者は学園で研究などで働きながら学ぶ者も居るし家族を持つ者も居る。
君にはまず基礎魔法学を学んでもらう。基本的に魔法が安定する15歳まで行う学科じゃ。君は若いようじゃが何歳じゃ?」
また若いですか。学園長や都知事に比べれば俺は若いだろうがそれは比較から出る言葉で普通言わないよな。
ちょっとウンザリぎみに「35歳です。」と言った。
こちらの世界にきてから3度目の全員での「えっ?」が出た。
先ほどの役所では桁違い魔力についてだからしょうがないと思うけど見た目についてはどうかな。
街中を歩いている時は変った街を見るのに没頭しててショーウィンドウに映ってたかもしれない自分の姿にまで気が回らなかった。
でも胸も大きいし35歳に見えないほど美人なのかも!
「うーむ、率直な感想じゃがどう見ても10代前半じゃのう。若返りの魔法かの?じゃが書状には魔法の勉強は一切していないと書いてあるしの。
種族特性か?もしや亜人種か。亜人ならば我らの属する連合国家の亜人専用の
国に行って魔法を学ぶ事になるぞ。」
「亜人?いえいえおっ私は人間だけが住む世界から来て元の世界では35歳の男でした。
ある事で異世界転移の魔法が使えるようになってこの世界に来たので、若返りの魔法でも亜人でもありません。」
はい来ました全員での{えっ?」っと言った顔、4度目です。
学園長は険しい顔になり言った。
「少し早いが魔法球に手を当てなさい。大丈夫、精神だけが魔法球内に出来た仮想空間に移るだけで手を離せば帰ってこれる。」
皆魔法球に手を当てる。怖かったが手を当ててみる。感覚が吸い込まれるような感じがした後薄暗い空間の中に立っていて、目の前に丸い大きなテーブルと4つの椅子があり皆座っているので俺も座ることにした。
「ここは魔法の実験に使ったりするんだけど内緒話をする時にも結構使うんだ。
特にお喋りな妖精に聞かれたく無い時にはね。」横の席のイロイが説明してくれる。
確かにイーニスが居ない。じゃあ誰が翻訳してくれているんだ?
「安心して、私の口を見て。動いてないのに声が聞こえるでしょ?魔法球の中では直接意思を伝える事が楽に出来るのよ。」
初めてサーシャが話し掛けて来た。良く見ると目が垂れ気味で優しそうで可愛い顔だ。
少しはにかむサーシャがテーブルを杖で指すとテーブルから鏡が出てきて俺の姿を映す。
「私にも35歳の男性には見えないのですけれどその姿で間違いありませんか?
あるなら心当たりがありませんか?」
サーシャが出した鏡には青みがかかった長い黒髪の美少女が映っていた。しかも巨乳!
いやいやいや有り得ないでしょ?歳も性別も違う上に顔が全然違うだろ?まったくの別人だ!
しかも今までの異世界転移時におきる体の変化と明らかに法則が違う。どうなっているんだ?
混乱する俺に今までの異世界転移に答えがあるかも知れないと出来る限りの異世界転移を思い出すように学園長が提案してきた。すぐに思い出してみる。
結果として謎が深まっただけだった。
こちらの世界でも異世界転移の魔法は知られているが難しく使える者が少ないらしい。
メジャーCマイナーと言う格付けになるらしい。ちなみに○○○(知名度)○(クラス、メジャーAなら一番知られている)○○○(実際に使用される度合い)となる。
良くは知られているが実際に使う者が少ないので学園長でも俺と同じ位の知識しかないのでかなり悩んでいる。
「かなりの確立で異世界転移の魔法で帰れないかもしれん。一度魔法球から出て魔法を使ってみなさい。
魔法球から出るには「魔法球から出る」と言って手を離す事を思い浮かべなさい。」
悩んだ後かなり衝撃的な事を言ってきた。今まですぐに帰れるからとお気楽に考えていた俺にとっては有り得ない話であった。テンパッてしまった俺はすぐに魔法球から手を離し現実世界に心が戻る。
顔と掌から汗が溢れる。
「やってみなさい。」魔法球から手を離して戻ってきた学園長が言った。
言われなくてもやるわ!美少女も巨乳も頭の隅から消え、帰る事しか頭に無かった。
目を瞑り魔法を発動する。これで元の世界のぼろい我が家に帰還!と願いながら目を開けるが目の前には学園長を含む三人が立っていて、異世界転移が失敗した事を悟った。
「えっ?もう魔法を使ったの?」イロイが驚く。
「特殊じゃがこう言った魔法の発動もかなり有る。やはりダメじゃったか。説明をしよう。その前にもう一度魔法球に手を当てなさい。」学園長が長い髭を擦りながら言った。
魔法球に入ると急いで学園長に説明を求めた。
「この世界はあらゆる世界から色んな種族が迷い込んでくるんじゃ。大体は神隠しなど異世界転移の特異点から飛ばされた者が来る。君のように異世界転移の魔法で来るのは希じゃ。
転移先になりやすいのに狙っては行けない世界がここ異世界人が迷い込む世界アーティファなのじゃ。
世界と世界の繋ぎ目がこちらの世界に向いているようで入るのは簡単でも出て行くのは難しい。たとえ君のように魔法を使ってもじゃ。
それでも各国家ごとに強力な魔法技術の粋を集めた異世界への門が有りそこからならば帰れるやもしれん。
我々の連合国家にも一つある。しかし壊れていて修理中じゃ。」
どういうことなんだ!落ち込んでいる所に「実は帰れる。でもやっぱダメ。」みたいな喜ばせといて突き落とす、精神に思いっきり負担を掛ける言い方は!何か他に帰る方法は無いのかよ!
「うむっそれは君の魔法の習得に掛かっておる。」
学園長が微笑みながら言う。何で魔法の習得が出てくる?門を修理する為か?
「いや門は制御を司る石が壊れているから連合国家の技術を持っても直せないんじゃ。
昔異世界転移に特化した魔法使いが作った石で、製作者は製造方法を残す前に死んでしまい後には使用書と石だけが残ったのじゃた。
だが話はこれからじゃ。今我々の属する連合国家は隣国のヘクトール王国と戦争状態にあり、勝てば領土を取り決めの分奪え、負ければ奪われる。
君は魔力が強い分上手く魔法を使いこなせば最強の戦力になる。
先ほど話したが異世界への門は各国にある。君が勝ち続けたならば連合国大統領に進言も出来るようになり、異世界への門のある領土を取り決めで獲るようにするか門自体を獲るように出来るのじゃ。
無理強いはせんがやって損は無いじゃろう?」
確かにこのままでは帰る事が出来ない。解決策は提示された。しかし戦争となれば多くの人を殺す事になるだろうし俺自身が殺されるかもしれない。
「それについては大体解決出来る。まず戦う相手はゴーレムじゃ。
この世界ではほとんどの戦争で人の代わりにゴーレム同士が戦いあう。飲み物を持ってきた動く人形が居たじゃろう?あれがゴーレムじゃ。
当たり前じゃが人も戦争に参加しておる。攻撃を受けにくい後方からの魔法攻撃を行うのじゃ。
君が強力な魔法を習得出来れば危険を最小限に抑え、敵を殲滅する事も可能になる。この世界に留まるにせよ元の世界に戻るせよ魔法の習得は避けて通れんじゃろう。」
選択肢は他には無さそうだ。いいぜ、やってやろうじゃないか!
「良い答えじゃ、早速わしが教鞭を取らせてもらおう。今までの研究は放っておこう。
新兵器の開発じゃったが後回しじゃ。イロイ、サーシャ補佐を頼むぞ!」
「「はい」」声がハモる。
こうして魔法学園での楽しいお勉強ではなく特訓が始まったのであった。
魔法戦争まで書こうとしましたが一度ここで切らせて頂きます。
初めて書くから思ったように話が進まずやきもきしてます。
暇な時に書き進めますので暇があったら続きを読んでやって下さい。