ディエゴの計画
ミハイルは舌打ちをし、椅子に座った。どうやら渋々ながらも納得したようだった。
「でもよ、だったらシェンも勢いで潰せるんじゃないか」
「それは無理です。シェンは私に宛てた手紙でカルーダ内部に援助を受けているとほのめかしていまし
た。嘘か真かは分かりません。しかしもしシェンの言葉が本当だったら、私の傭兵団は壊滅してしまいます。それに本当にカルーダ王国が背後にいるとしたら、なおさらファリスは手を貸してくれない」
ミハイルがそうなのか、と顔を見てきた。レノは小さく頷き「外国の軍隊が他国で動くには自国民の保護などの明確な理由が必要なんだ。加えてファリスはカルーダとは昔からの同盟国だ。表立って、ファリスにある一つの傭兵団を潰すのに軍隊を動かすなんてできるはずがない」
「シェンが魔獣の奏者と組むってのは考えていないのか」
レノが答えようとしたときにディエゴが口を開いた。
「もちろん考えましたよ。しかしシェンはかなり保守的な性格のはずです。新興勢力をまとめつつある魔獣の奏者とは手を組む可能性はかなり薄い」
「ミハイルはこの作戦には参加はないが、今回の作戦について話しておこう」
レノは座っていた椅子をから一回立ち上がって再び座りなおした。
「この同盟をする前、一週間前からオレはハイルトン・ヒューストンとファリス代表として数回会談を行っていた。後々にはファリスと同盟を結んで欲しいという前提でな。色々送ったよ、金銭や女、ファリスの名産品など……。同盟を結ぶにはもうひと押しって所だ。今日の夜にファリスの名産が着くことになっている。ハイルトンが好きなものだ。それで侵入方法だが、今用意してある、五つの籠に二人ずつディエゴたちが入る」
「おいおい。大丈夫か。そんなんで。そもそも中に入れるのかよ」
「門番の連中はすでに金を渡し、今後の事も保障するようにディエゴには頼んである。すんなりと入れるようになっている。それに届けるのは夜遅くなると伝えてある。業者はこちらで用意してある」
「大丈夫ですよ」
ディエゴが怪しく微笑する。




