ミハイルの要求4
「兄貴は何を考えて、この同盟に参加したんだろうな」
それはつぶやいたのか、それとも独り言だったのかは分からなかった。
ミハイルが口を開くとミハイルの目がレノに合わさったのを感じた。
「お前はなにか知っているんじゃないのか、レノ」
視線が物語っていた。
知り合って何度目かの会合だった。ロバルト・シャーンが強めのウイスキーをロックで飲みながら語っていたのを思い出した。
深い夜のロバルトが死ぬ数日前。あの双眸は今のこのファリスの状態を予想していたのであろうか。そして一体何を見ていたのであろうか。
聞いてないな。と言おうとしたときディエゴが口を開いた。
「ところで――準備は終わっているんでしょうか」
「ん、ああ。後は最終確認だけだ」
「何の話だ」
「ミハイル悪いが、先にやるべきことがある。ディエゴ、すでに準備は出来ている。今夜決行だ」
「何するんだ?」
「夜討ちですよ。ハイルトン・ヒューストンを殺るんです」
ディエゴの口が鋭くつりあがった。
「今日じゃないと駄目なのか」
「当然です」
「死亡診断書を手に入れてからだ」
「駄目だ。順番的にこっちが先になっている」
それでも納得していないミハイルにレノがぴしゃりと言った。
「いいですか。シェンはおそらく私と団長、天秤にかけているはずです。両方と組むことができない。
だったら間違いなく自分に都合のいいほうを選ぶ。この同盟は明日には王国内に広まる。そうなったら、
間違いなくハイルトンはシェンと結ぶ。最悪なことは、シェンが魔獣の奏者も加え我等に対する包囲網を
作ることです。そうならないうちに、手を打つことが重要なんです。一つ一つ出来る限り早く潰しておけ
ばあなたの求めているにも手に入りやすくなるんですよ」
ディエゴの声は冷たかったが、熱を帯びているように感じた。




