ミハイルの要求
「大使がいなくなるのは分かっていたのですか」
ディエゴが尋ねる。
「彼のような権力欲にまみれた人間の考えなんてすぐ読める。一刻も早く自分の成果を元帥に報告させたいだろうからな」
「まさかミハイルをそれも暁の稲妻の代表として出席させるとは思っていませんでした。何が狙いなんです?」
「このことはすぐに王都を駆け巡るだろう。目的はシェンの背後にいる勢力のあぶり出しさ」
「ではその背後にいる勢力について伺いましょう」
「シェンはおそらくミハイルの動きを封じていると考えている。しかしこの同盟を発表することで背後にいる人物とシェンは焦りを感じるでしょう。そこで何らかの動きがあるのがシェンの背後にいる人物かと思っている」
「なるほど。王国内部にいるのが何者かってことですね」
「そうだ」
「なあ。前にオレのやることに協力はしてくれるんだろうな」
ディエゴの隣に座っていたミハイルが切り出した。声にどこかあせりと苛立ちが混ざっているように感じた。
「もちろんだ」
「死亡診断書を探す」
「どこにあるか分からないでしょう」
「その前にこれをみてくれ」
ミハイルは懐から一冊の雑誌をテーブルの上に置いた。政治や経済、文化など様々なことを扱っている。新聞では書けない記事が多々ある雑誌だった。レノは何度か購入したことがあったが、正直どこからどこまでが本物なのか分からない雑誌だった。雑誌をめくる必要はなかった。
表紙の真ん中に大きく文字が躍っているのが目に付いた。
やはりそうか。しかし、これがガセで書いたのかどうなのかは分からない。
レノはちらとミハイルをみた。ミハイルは腕組みをしてじっと見つめている。
「これ本当か」
「当然だ」
「しかしこの雑誌は全部事実を書いている雑誌ではないでしょう。もしこれが本当だとしても絶対的に信じることはできません」
雑誌を触れることすらしていない、ディエゴにミハイルは答えた。




