ねむの木学園2
ロワは背後から師匠に近づこうとした。しかし師匠が言った一言に一瞬反射的に足が止まった。今まで聞いた事のないような、臓腑を抉り出されるような低い声。
加えて、師匠の横顔は今まで見たことのないような、悪鬼のような表情。
師匠はロワの存在に気づいていなかったのだろう。驚きを隠せないでいるロワの存在に気付いたのか師匠は後ろを振り返った。
「黙っていてくれませんか、生徒たちには」
「師匠、この三人は一体……」
「私を殺しにきた刺客です。おそらくファリスの手の者でしょう」
師匠は表情を変えることなく話した。
「どうして、師匠が……」
「ロワ、お願いがあります。どうかこのことは他の生徒たちには一切黙っていてください。理由を話したいのですが、時間がありません」
小さくロワが頷くと、「ありがとう。では先に早く教室に戻ってください」師匠はロワに静かに微笑を向けた。
ロワが入ってきてもざわつきは収まることはなかった。みんな自習を命じられているにも関わらず、騒いでいるのはいつも通りだ。自分の席に座り隣の席のレオナルドが話しかけてきた。
「師匠はどこに行ったの?」
ロワは努めて冷静に言った。
「会ってないから分からない」
レオナルドは一瞬どこか不満げな表情をした後、机の上の教科書に目を落とした。しばらくしていると師匠が教室に戻ってきた。




