夕刻の騎士団2
「気が弱くて優しかった。でも腕っぷしが強かった。気は優しくて力持ちその言葉がぴったりとあてはまる、あいつさ」
ミハイルはさらに顔をしかめた。
ミハイルとアンドレは何かと一緒にいることが多かった。身体は大きかったが、気が優しいため何かとからかわれていた。特にミハイル仲が良く常に一緒にいた。しかしミハイルが師匠の下から去ることを知ったアンドレの落ち込みようはことさらだった。
「今日届けられた手紙で知った。最後に剣とだけ残し、舌を噛んで自殺したらしい」
「自殺だと! あいつが自殺なんて出来るはずがないだろ」
「手紙にそう書いてあるんだ」
「どうしてアイツが夕刻の騎士団にいるんだ」
「知らん。それ以上に、信じられないことが書いてあった。アンドレを拘束する前の姿は、竜に近かったらしい、というより竜と人間が合わさったようだったらしい」
「どういうことだ!?」
「身体は人間だったが、顔と腕そして腕は竜そのものだった。しかし報告書の内容によると竜の、出来損ないのようなものだったと」
レノは小さくうつむき言った。
「正直、夕刻の騎士団はどうしていろんなところに戦線を拡大させているのかがわからなかった。しかし、今日お前の話しを聞くまではただ単に領地を獲るためと考えていたが、アンドレの証言で夕刻の騎士団が領地だけが目的ではないことがわかった。剣さ。お前を含む師匠から貰った剣の回収のことを言っているんだ」
「剣って、オレが持っていたあの短剣か」
「それしか考えられないだろ。その剣はどんな力があるんだ」
「全ての金属を破壊できる剣さ」
「なっ!?」
ロワは大きく目を見開きミハイルを見た。
「ただ、人を斬ることはできないんだ」
「変わった剣だな」
しかし使いようはある、か。
でも戦では使いにくい。どうしてそんな剣を回収しようとしているんだ。
「それが弾かれたってことは、すでにファリスに夕刻の騎士団で剣を持っているヤツがいたってことか」
「オレは途中で抜けちまってその後のことを知らないんだ。なあロワ、オレとカルーダの検問所に向かうとき、ねむの木のことを聞いたよな。しかし。お前は聞こえなかったようなふりをした。だからもう一度聞く。ねむの木のみんなは今どうしているんだ。師匠は元気なのか?」
「……その話は長くなる」
「構わないさ」
ロワは温くなったカフェオレを飲み干した。口の両端に重りでもぶら下がったかのように感じる口を開いた。




