夕刻の騎士団
本当に分かっていないのかな」
レノは通行人を見ながらつぶやくように言った。
「どういう意味だ」
「お前は相手のことを分からなかったかもしれないが、向こうはお前のことを知ったという可能性さ」
「まさか、そんな事は……」
「ないとは言い切れないだろ。第一、お前が狙われる原因はもうないはずだ。先ほど何者かに襲われたってのもそいつ等が原因なんじゃないのか」
「だとしたら、どこでオレだと分かったんだ。顔は見られていないはずなのに。それにあの時竜のところにいた人物と遺跡の奥の三人は全く別人ということになる。仮に竜のところで会った一人が三人のうちの誰かとしたら、オレ投げた短剣がどこぞにいったってことを知っている。なのにどうして、オレを襲う必要がある」
「まだ1回だけだろ。さっきお前も言ったじゃないか。オレに恨みをもつ人間は五万といるって。これから度々襲われたなら、廃墟の3人と竜のところにいた人間は別人の可能性が高い。しかしなくなったら3人と竜のところにいた人間は同じということなるんじゃないか
ミハイルは首をかしげた。まぁいいか、そのうち分かる。と勝手に自己完結した後、思い出したかのように言った。
「ところで、どうして急にそんなことを聞いてくるんだ」
「ファリスが対夕刻の騎士団相手に周辺国に軍隊を派遣していることは知っているだろ。その時夕刻の騎士団の幹部を捕まえたらしい。名前はーーアンドレ・グリーン」
レノが口に出すと、ミハイルは眉間にしわを寄せ、しばらく黙り込んだ後、
「もしかしてあのアンドレか?」と答えた。レノは小さく頷いた。




