ミハイルが隠れていた理由
封を切り、手紙に目を落とす。
ガラスを叩く音にレノは我に返った。目の前には微笑したミハイルが立っている。店内の時計を見るとアパートから三十分ほどがたっていた。
「わざわざ来てくれたんだな」
ミハイルはレノの隣に座った。
「突然の訪問悪かった」
「何か用があるんだろ」
レノはディエゴと話したことをミハイルに話した。ミハイルは無言で全てを聞き終わると小さい声で「そうか」とつぶやいた。
「だったら、オレが団長の後をつがないといけない」力強く言った。加えてもう一つミハイルに聞いて
おきたかったことがミハイルにはあった。
「ところで師匠からもらったものがある剣があるだろ。一度見せてくれないか」
「あ、ああ。あれな、今はない」
「どういうことだ!?」
レノはつい声を荒げ立ち上がった。勢いで椅子が倒れ、店にいる客たちが、二人に注目する。
「落ち着けよ」
ミハイルは落ち着かせるようにディエゴの肩を軽く叩き倒れた椅子を直した。すぐに脚の視線は、二人から遠ざけられた。
瞬間的に沸騰した脳を落ち着かせるようにカフェオレを一口飲んだ。若干温くなってしまったカフェオレはさきほどまでより美味く感じることはなかった。しかしすでに甘いだけの飲み物に変わってしまっていた。
出来る限り声を絞ってミハイルに言った。
「詳しく聞かせてくれないか。理由によっては事態は今以上に悪くなる」
「その前に、実はオレは三階のベランダにいたんだ。ちょうどエリザが何者かに話しかけられていた。よく見たらお前だったから安心はしたが、念のため用心しないといけないと思ってな。いくらあそこに住んでいるとはいえ、エリザにはオレは出かけていると、指示してある」
「指名手配は解かれたんだろ。どうして隠れる必要がある」
「昨日のことだ。オレは用があって、【暁の稲妻】本部に出かけていた。その帰り道、東アムサーラ地区に入って数分もたっていないときに何者かに襲われたんだ」
「どうしてお前が今、襲われる必要がある」
「今だからじゃないか。オレを怨んでいる奴等はごまんといる。当然返り討ちにしたが、逃げられてちまった」
「心当たりはあるのか」
「あり過ぎてわからねーな」
自嘲するように笑い肩をすくめながら言うミハイルをロワは黙って見つめ考えた。




