エリザとの再会
「三棟目の3-302に住んでいるアレクサンドロ・ミッテルに会いに来た」
初老の男はずり落ちている眼鏡を中指で押し上げた。
「軍人さん、だね。それもカルーダ王国の軍人ではない」
「よく分かったな」
「わしもファリス出身で軍人だったからね」
大きく老人が笑うと口周りの皺が 一気に増える。「アレクサンドロさんとは友人ですかな」
「まぁそんな感じだね」
「ちょっと待っててください」
詰め所から老人は出ると、分厚い鉄扉の鍵を開けた。
広々とした庭園のようだった。少なくともスラム街の中にあるとは思う者はいないだろう。咲き乱れる花々に青々しく茂った木々に見とれながら、レノはアパートを探した。そこかしこで話し声や子供の遊び声が聞こえる。この中自体がもう小さい街みたいなものではないか。レノは側を走り去って行った子供の背中を見ながら思った。
やがて、どこかで見覚えのある子供をみつけた。大きわらでできた洗濯かごを頭の上に乗せアパートのほうへ歩いていく女の子、ディエゴからすでに聞いていたがうろ覚えだった。確か名前はーー。
「エリザ」
思い出し声を出した。女児は立ち止まりレノの方を向いた。女児はまだ誰か分からないといったどこか困惑した表情でレノを見つめている。近づき確認のためにもう一度尋ねた。
「ミハイルはおうちにいる?」
「ミハイルのおともだち?」
女児は首をかしげ、レノを見上げている。
そうだ。そういえばこの子が目覚める前に帰ってしまっていたんだ。だったら知るわけないか。レノは飛び切りの笑顔でエリザと目線と同じ高さに腰を落とした。
「ミハイルとは昔からの友達なんだ」




