ディエゴとの会談3
レノは自分が思っていた以上に事態は早く最悪の方向に向かっていると判った。何とか食い止める方法を考えないといけない。
「そしてこちらの手紙には暁の稲妻に対して賛成の現した内容がしたためられています。私が部下に頼めば、この共闘関係はすぐに成立します」
大きく息を吐いた。下手な文句を並べてもディエゴにはすぐに見破られてしまう。椅子の背もたれに力なく寄りかかり、店員を呼ぶために手を上げた。
すぐに店員がやってきて、カフェオレを頼む。数分も待たずに店員は置いていった。気持ちを静めるためコーヒーカップに鼻を近づけた。香ばしい惹いたばかりのカフェオレにミルクの優しいの匂いが脳を刺激し心を落ち着かせていくのを感じる。一口含むと、程よい苦味と芳醇な香りが口内を占める。ただ、砂糖の甘みを感じるようなことはなかった。砂糖を入れ忘れたのであろうか。ゆっくりと飲み込み、胃に落ちていくのを感じた。カップをテーブルに置いてから、レノはテーブルに頭がつくくらいに深く頭を下げた。
「今、ファリスは周辺の友好国に大量の軍を派遣させているのは知っているだろう。しかし夕刻の騎士団は徐々に勢力を拡大しつつある。押されていることは間違いないんだ。背後のカルーダにまで夕刻の騎士団の種である魔獣の奏者にこれ以上勢力を伸ばさすわけにはいかないこれがファリス方針であり、貴殿等と手を結ぶ理由だ。ファリスは数週間前も今も全く変わっていない。是非ともファリスに協力してくれないだろうか」
数秒頭を下げ続けたとき、ディエゴの声が聞こえた。
「シェンからの手紙の中身をもう少し話しましょう。シェンはカルーダ内部に政治の中枢にいる人物の後ろ盾の確約があると書いてありました。誰かまでとは書いてありませんでしたがおそらく、シェンは傭兵という枠組みを超えようとしています。生き残るにはベストなのかもしれませんが私は気に入らない。傭兵はあくまでも傭兵でなくてはならない。あなたがたと組めばしばらくは戦いがなくなることはない。私はそう考えています」
無表情で答えるディエゴになるほど、と思った。狂った狼。これがディエゴ・ユーロピアスのあだ名だったことを思い出した。それでもレノは頭を上げ、ディエゴに改めて礼を言い尋ねた。




