廃屋の中
部屋の端には暖炉があり薄暗くあまり確認できない。さすがに中に何があるか探ろうとは思わなかった。足が一本なくなりバランスを失った椅子がある。
椅子の近くにふとタバコの吸殻が落ちていることに気づいた。明らかに最近何者かが吸っていたものだ。
何者かがここに住んでいるのであろうか。
すぐに立ち上がりいつここの主が帰ってくるか全身の感覚を研ぎ澄ませながら部屋の探索を始めた。どうやらこの部屋は昔住んでいた住人の書斎のようなものだった。古くなった本棚にはもう読むことの出来ないような本がびっしりと置かれ、近くにはカビとばい菌の温床のようなベッドがある。
机の上を見た。そこには不自然に置かれた紐のようなものがあった。紫色をしたリボンだった。まだ真新しい。遠くない過去ミハイルはどこかで見たような気がしたが、思い出せなかった。
何かが揺れたように感じた。空気が突如張り詰めたものに変わった。木々の揺れる音。明らかに動物や自然ではなく、人為的なものだ。それも複数の足音だ。なにやら話し声が聞こえてくる。反射的に机のうえにあったリボンを握り締め音のあったほうとは逆の方向に向かった。




