森の奥にある廃屋
形見の小刀は見つかるだろうか。不安が頭をよぎる。それを消し去るように小走りで林へと向かった。
林の中は思ったよりも深く森の中のように思えた。太陽が出ていないせいもあってかかなり肌寒く、日の落ちた夕方のようにうす暗い。迷わないように要所要所に護身用のナイフで目印を付けておきながら、森の中を歩き回った。
どのくらい歩き、どのくらい目印をつけただろうか。地面が湿っているために歩きにくくすでに疲労が蓄積し足の裏に軽い痛みを感じるようになった。
ミハイルは木を背に根元に座り大きくため息をついた。腹が減り、のどもからからだった。そういえば、今日一日何も食べていない。
昼前には帰って来れるだろうと考えた自分を恨んだ。この森はミハイルが思っていた以上に深く密林のように思えた。さらに薄暗いため、小刀を探すのに骨を折った。
木の根元や枝に引っかかっていないか注意深く見たが一向に見つからない。もう少し探したら一旦戻ろう。そう思い、立ち上がったときだった。
暗い森林の深い木々の枝と枝の間から建物らしきものが見えた。ミハイルは目を疑った。
こんなところに誰か住んでいるのか。
引き返そうという選択肢はなく飢えと渇きとそして好奇心で足は建物のほうへと向かっていた。




