再び遺跡へ
時間は昼前になっていた。行って帰ってくるだけなら大して時間はかからない。あんなところに誰も行くことはないだろう。少し探せばきっとあるに違いない。
あまりに多い謎に辟易としながらも、ミハイルは再びアジェンダー遺跡へと出発した。
数週間ぶりに訪れたアジェンダー遺跡に踏み入れた。当然何も変わっていることはなく、うっそうと茂った木々をよけながら目的地へと歩みを進めた。
三本目の大木を目にしたとき、ふと思い出した。ゆっくり振り返る。当然足音などない。誰かが走ってくるようなことなどはない。ちょうどこの辺りから走ってくる足音が聞こえてきたのだ。
そして何の縁なのか分からないが、エリザと今一緒に暮らすことになっている。世の中分からないもんだ。
ミハイルは前を向きなおし再び歩き始めた。
十分ほど歩くと、周囲の木々はなくなりはじめ突如視界が開けた。再び見覚えのありすぎる光景が広がっていた。
忘れたくても忘れられない、風景と朽ち果てた神殿。唯一違うところはあの時は肌が爛れてしまうような灼熱の太陽が出ていたことだった。
神殿の一番奥にある隠れた祭壇に向かった。ここでミハイルは多頭竜の吐き出す炎から身を隠した。そのとき怪しい視線を感じ、反射的に小刀を投げた。一連の造作を思い出しながら試みていた。弾かれた小刀は少なくともミハイルからは見えなかった。
視線を感じた方向には林がある。あるとしたらあそこの林の中に違いない。




