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勇者の復讐  作者: にけ
プロローグ
51/84

思いだされた謎

自宅に戻ったミハイルは一人ソファーに座り考えていた。

 

確実性はないが、シェンは白だ。

 

もしかしたら、団長はカルサスとシェンの二人の企みによって殺されたのではないか。そしてシェンはカルサスを殺し、オレに手紙を出したのではないかーーと考えたこともあった。


しかし怪しい素振りはミハイルが見ている限り一つもない。それにわざわざカルサスの自殺を偽りミハイルに知らせる意味が分からない。

 

謎は一つも解決していない。ミハイルは立ち上がりベランダに出た。心地よい風が吹いている。この季節のしては少し汗ばむような天気だ。雲ひとつない真っ青なじゅうたんのような空は、自分の今の灰色の心中とは全く違う。からっと晴れた湿度のない天気が少しでも癒してくれているようだった。


 ミハイルは突然思い出した。

 

 あの時、あの竜に襲われたときにいた怪しい視線に向けて投げつけてしまった師匠からもらった小刀のことを。ここ最近は王都に帰ってきても、ばたばたし過ぎてすっかり忘れてしまった。あの時は金属が弾かれる音を信じることができなかった。

 

 元々あの小刀は普通の金属では作られていないーー。師匠はそう言っていた。それにミハイルは一度本当かどうか師匠の目の前で見せてもらったことがあった。


 自分が投げつけた剣をあっさりと粉々にするほどの力を持った小刀。しかし師匠は、武器を破壊することが出来る代わりに人を斬ることは出来ないと付け加えた。


 もちろんこれもミハイルは自分の掌で試みた。すると師匠の言うとおり傷一つつくことはなかった。まさしく武器破壊のための武器だった。しかし、あのとき誤って投げてしまった小刀は相手によって弾かれた。これが一体何を意味しているのか。

 

 あの竜の側にいたのはなぜなのか。何の目的であそこにいたのだろうか。

 そういえば、師匠は自分の元を去るときには餞別として一人一人に、自分が造ったものを餞別に渡していることを思い出した。


 ということは、師匠の下にいたある人物がこの一連の事件に絡んでいるのかもしれない。


一体誰なんだ。


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