狐目の思惑2
「どうとも思っていないさ。残念だが犯人は組織内から出、それも組織の幹部が犯人だった。それだけだ」
「本当にそう思うか」
「警察だってそう言っている。その通りなんだろう」
ミハイルの口からカルサス・テキーラからの手紙のことが出かかった。言うべきか言うまいか迷った。
「今日は頼みがあってここに来てもらったんだ」
シェンは近くの料理を飲み込み言った。
「幹部は俺を含めてお前とカルサスの三人だった。しかしカルサスはもういない。俺とお前だけだ。どちらかが暁の稲妻の頭にならないといけない」
「なるほどな。呼び寄せた理由が分かった」
「二人体制も考えたんだがな……この争いでお前の仲間とカルサスの仲間は大きく力を失った。お前の仲間はほとんど生きて死んでしまっただろう。カルサスのほうの連中は俺の派閥に入ることになっている。どうだ。俺を団長に推薦してくはしないか。もちろんお前は幹部として居座ってくれて構わない」
狡猾なシェンのことだ、少しずつ自分の居場所を削っていき、いずれは組織を脱退させる方向へ向かわせるだろう。ミハイルはシェンの顔を見た。暁の稲妻はすでに自分のものであると強調しているように見えた。
「一つ聞きたい。お前はオレが犯人だとは思わなかったのか」
「お前と団長の仲は十分過ぎるほど知っていた。だからお前がやったとは想像できなかった。ただカルサスのほうはお前の存在がうっとうしかったみたいだからな。チャンスだと思ったんだろう」
「団長のいないこの組織に未練はないが、もう少し考えさせてくれ。一つ聞きたいことがある」
シェンは口に入れていた料理を飲み込んだ。ゆっくりとした動作で箸を置き「なんだ」と答えた。
「オレの派閥にピエールという奴がいるらしいんだ。そいつの存在がわからない。二、三日したら本部に行く予定だ。名簿を用意しておいてくれ」
「部下に伝えておく」
ミハイルは近くにある肉料理を一掴みして口の中に入れ椅子から立ち上がった。
部屋から出ると先ほどの男たちが軽く頭を下げた。




