ジャンとの出会い2
そのとき一人の少年が一歩前に出た。まだ幼さの残る顔に頬に出来たニキビがあどけなさに拍車をかけた。それがニールだった。ニールはまだ組織に入ったばかりの新人だった。
「兄貴がここまでやってるんだ。兄貴の顔を立てるのが男ってもんじゃねーか」
まだまだ若々しい声が響く。
周囲はニールの意見に従うものが多くなった。納得していない者も数人いたが、とりあえず全員社長室から出て行った。
ミハイルは自分の子分たちが全員部屋からいなくなるまで頭を下げ続けた。下げていた頭を上げ開けっ放しになったドアを閉めジャンを睨みつけた。
「オレにここまでさせたんだ。半端な答えじゃ納得しねえぞ」
「とりあえず座ってくれ」
いつの間にかジャンが社長の椅子からセンターテーブルの側のソファーに座っていた。ミハイルもジャンと向かい合うように座り大きく足を組み「さあ聞かせてもらおうか。どうしてあんな記事を書いたのかをよ」
「元々を言えばあんた等が悪いんだ」
「この期に及んでてめえ何を言っていってんだ」
「まあとにかく最後まで聞いてくれ。あの記事を書く数ヶ月前ある情報がうちにタレこんできた。それがあの記事だ。俺はな、これが本当に事実なのか分からなかった、ガセの可能性が非常に高い。そんな気がした。しかし、念のため確認することにしたんだ。あんた等の団長に取材の許可を取ろうとしたのさ。あんたのところの団長は広報を通じて喜んで取材に応じるといった。しかし取材の前日の夕方突然、キャンセルする手紙が届いた。それでもこういう仕事をしているとこんなことはざらにある。もう慣れている。だから、二回目も取材を申し込んだ。二回目も快く取材を受け入れてくれた。しかし二回目も、前日の夕方にキャンセルの手紙が届いていたんだ。
三回目も同じように前日の夕方になってドタキャンだ。挙句の果てに謝りの言葉一つないときた。さすがの俺もキレたさ。これが今回のいきさつさ。なんか文句あるかい」
ジャンは一気呵成に喋り続けたあと、コップの中の水を飲み干した。
「あんたの言ったことは全て団長に伝える。言っていることが全て本当だったら非は全てこちらにある」
「言っていることが信じられないっていうんか」
「てめぇの一方的な意見だけではどうにも判断できねえんだ。とにかくオレが言えるのはここまでだ。ところで取材を許可した書面をみせてくれないか」
ジャンは立ち上がり机の中から三枚の手紙を持ちだしてテーブルの前に置いた。
「上から、一回目、二回目、三回目だ」
ミハイルは最初に一枚目の手紙を見た。確かに書面では取材を受けるとの文体。それに団長であるロバルト・シャーンの名前とサイン。二枚目も一枚目と同じ文体で同じ文章と団長の名前とサイン。




