ジャンとの出会い1
二年前――。
ジャンの発行する雑誌に団長を揶揄する記事が掲載された。団長は勝手に書かせておけ。と言っただけだった。
しかしミハイルはたまらず、子飼い十数人ほどを連れこの会社に殴りこみをかけた。
しかしジョーはまるでミハイルが来るのを予想していたかのように、不適な笑みを浮かべ待っていた。ジョーはミハイルたち海千山千、いくつもの修羅場を超えてきた者相手に向かって言い放った。
「ミハイル・ドランコフだけ残って後はこの建物から去れ」
背後にいる子分たちは怒声をあげた。
中には飛びかかろうとしていた者さえもいた。そんな光景を見てジョーはまた言い放った。
「いいか。お前たちのやっていることは、不法侵入に脅迫だ。すぐに警察に通報してもこちらとしては一向に構わないんだ。社員には俺が何かされたらすぐにでも警察へ駆け込むように言ってある。分かったら。さっさと出ていけ。俺の気が変わらないうちにな」
鬼気迫るジョーの言い方に殺気だった子分連中は突如として静まり返った。
このときミハイルは自分があの記事によって誘導させられたことを知った。剣のような鋭い視線を向けてくるジャンに負けじと睨み返すのがことだけが唯一の抵抗だった。
団長の言っていたことはこういうことだったのか……。
ミハイルは心の中で舌打ちした。煮えたぎりそうになっている頭を落ち着かせた。
「お前たちは帰れ」
ミハイルが言った瞬間、住人以上いる子分の仲からざわついた。そして一人の男が口火を切った。
兄貴、何言ってんだ!
一思いに殺っててしまえば済むことじゃねえか!
ウチが舐められてるんすよ。それでいいんすか!
殺るつもりで行くって言ったんは、兄貴じゃねえか!
ミハイルは大きく深呼吸をして後ろに向き直り頭を下げた。
「こいつとサシで話し合わない限り何も解決しなさそうだ。もしここで暴れたら今以上に組織と団長に迷惑がかかる。責任を取るのはオレだけでいい。自分勝手ではあるが、ここから去ってくれないか」
突然組織の幹部であるミハイルが頭を下げたことに十人以上いる子分たちはざわつきしばらくの間沈黙が走った。




