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勇者の復讐  作者: にけ
プロローグ
31/84

アパートに来た理由

 アパートへ到着し部屋に入ったとき、リビングで黄色い声が聞こえてきた。

 誰かいるのか。と疑問に思いながら、ミハイルがリビングに向かうとムーンアンドサンで働いているはずのノアがエリザと談笑していた。


 テーブルには夕飯であろう料理が並んでいる。すでにぶどう酒も一本開けており酒の強いノアはまだまだ酔っている様子はなかったが、酔っ払う直前のように見えた。

「お前店どうしたんだ」

 ミハイルはグラスになみなみと注がれているぶどう酒を一気に飲み干そうとしているノアに尋ねた。

「おー! やっと帰ってきたか」

 

 グラスの中に入っていた薄紫色の液体を体内に勢いよく流し込む姿はまるでどこぞの職人や兵士、もしくは用兵といったところか。

「あ、ミハイルお帰りー。ちょっと待ってて」

 エリザは立ち上がりパタパタと台所に向かった。

 

 ミハイルはノアの隣に座り再び尋ねた。

「店、行かないのか。というかよくここが分かったな」

「店長に聞いたんだ。それにしばらく営業できないかもしれないんだよね。店長があの調子じゃね……」

 グラスをテーブルに置きうつむきながら答えた。


「マリアがどうかしたのか」

「うん……。団長が殺されちゃったでしょ。しばらくは大丈夫だったんだけど……」

 

 ノアの口調はどこか重く言いにくそうにミハイルに聞こえた。「ミハイルが現れてから、体調悪くしちゃって……。店長はミハイルを犯人ではないと思っていないよ。でもやっぱり色々と心労がたまってたんだろうね。真犯人が捕まれば少しは良くなるかもしれないけど」


「そうか……」

 ミハイルは一言以上言葉が出てこなかった。口を真一文字にし、うつむき両手を握り締め歯を食いしばった。

 

 よくミハイルとノア、団長とマリンの四人で暇があれば出かけた。しかしもうそんな楽しい時間を過ごすことはできない。そう思うと残念だと思うと同時に怒りで身体が燃え尽きてしまいそうだった。


「あの子、エリザだっけ」

 ノアは目の前のジャガイモと鶏肉に手をつけ口に入れた。のみこんでからすました顔でミハイルを見た。


「あたしがこのアパートに来て最初どんなこと言ったと思う」

 ミハイルは首をかしげるとノアはどこかおかしそうに答えた。「あなたから正々堂々とミハイルを奪ってみせますって言われたよ。今の子は進んでるね。でも……あんな子がいるならあたしも安心だよ」

 

 ミハイルは顔をしかめどういう意味か尋ねようとしたときちょうどエリザが台所からミハイルの分の料理をもって戻ってきた。

「今日は少し多めに作ったの。前みたいなことがないようにね」

 さすがにエリザがいるところで聞くことはできない。普段は美味いと感じるエリザの料理も今だけは砂をかんでいるようで味を感じることはなかった。

 数時間ほど三人で談笑しているとノアがのろのろと立ち上がった。 

「そろそろ帰るね。今日は久しぶりに楽しかった。ありがとう」

 ノアは笑顔で言うと部屋を出て行った。

「ちょっと待てよ」

 すでに階段を下りていたノアをミハイルは呼び止めた。

「わざわざ見送りに来なくてもいいのに」

「さっき言ったことどういう意味だ」

 ミハイルは尋問するかのような強い口調でノアに尋ねた。

「さっき? なにか言ったっけ?」

「とぼけんじゃねえよ」

 ミハイルの口調はさらに強くなっていった。

「わかってるって。そんなに大きな声出さないでよ。ちゃんと覚えてるし。話すって。確か外に座るところがあったでしょ」


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