思い出した一人の男
オレンジ色の夕日が部屋に差し込んでくる時間このアパートに直接西日がリビングに差し込んでいる。薄手のカーテンくらいでは防ぐことはできない。
唯一といってもいいくらいの欠点だった。ミハイルは生地の厚いカーテンをひいた。部屋はオレンジ色の夕日を遮断し薄暗くなった。灯りをともし再びソファーに腰をかけようとしたとき、一人の男の顔が思い浮かんだ。
勢いよくソファーから再び立ち上がり、足先を玄関へ向けようとしたときだった。男が官公庁に近いところで働いているところを思い出し瞬間的に熱くなった脳は一瞬にして冷却していった。
仕方なく引き出しから一枚の紙とペンを取り出し、一筆したためることにした。
手紙を書き終えたミハイルは夕食の準備を取り掛かっている、エリザに声をかけ部屋を出た。
向かった先は東アムサーラ地区で一番近い郵便局。東アムサーラ地区には郵便ポストというのはない。建ててもすぐに壊されてしまう。いつからかポストを建てるということを、なくしてしまったようだった。
まだ夕方で日も落ちていないにも関わらず、薄暗い。街灯もなく夜は真っ暗になり、ミハイルのような人物でも恐怖を感じてしまうときがあった。何人かの住人とすれ違ったが誰も彼もお互いを警戒しているように思えた。
ミハイルは背後に前方、左右に気をつけながら郵便局へ歩いていた。でこぼこで整備のされていない石畳に足を取られないように気をつけた。隙でもを見せるものなら財布をすられるのは生易しい。下手をすると数人の男に囲まれ金品はおろか身に着けているもの全て剥ぎ取られてしまう。
廃屋のようなアパートの側を歩き地区、唯一の雑貨屋を通り過ぎ数分歩いたところに郵便局が姿を現した。鉄柵をつけているのは、強盗よけだろう。灯りを点けているのは防犯を意識しているのであろうか。鉄柵を付けている郵便局なんて全国どこ行ってもないだろう。苦笑し、ベルを鳴らした。
鉄柵が開き、中に入ることが出来た。中に入ると鉄格子から一人の元用兵のような、がたいの良い男郵便局員だった。傍らにはブロードソードが置いてある。
鉄格子の隙間から先ほどしたためた手紙を渡し、速達で頼む。追加料金で
銀貨一枚頂きますハイルは銀貨を数枚渡すときに尋ねた。
「早くて何時に到着するんだ」
局員は時計を見て、王都内なので明日の午後までには到着します。と単調に答えた。
どんなに早くても明日の夕方か明後日じゃないと返事は来ないだろう。名前も偽名だし胡散臭いいたずらだと思う可能性のほうが高いだろう。それでも返事が来るかどうか分からないが、あの男にかけてみるしかなかった。
局を出るとガチャリと鍵のかかる音がした。
アパートに帰る道を歩いているとき、きっと二人がいるであろう、ムーンアンドサンに行ってみようかと思った。しかしやはり街中を平然と歩いている治安維持部隊やいつもより多い警察官のことがやはり気になった。
治安維持部隊がいるということは明らかに自分を狙っているに違いない。そう考えると行くのをためらう。やはり行くのはよそう。ミハイルは自分のアパートへと急いだ。




