おとぎ話のその後1
エリザの作った料理はちょうど二人前しかなかった。ミハイルはエリザがミモラの隣人に教えてもらい改良を加えたミモラスペシャルという名のオムライスにハンバーグのついたものをニールと半分にして食べた。
エリザとニールは先ほどの続きをした後「しょうがないな~ミハイル私の分もあげる」
エリザは自分のまだ三分の二ほど残っているオムライスを半分にわけ、ミハイルの皿に移した。
「おいおい! お前が食えよ。オレはいいって」
「もうお皿にうつしちゃったよ」
「だったらニールにあげろよ。オレが招いた客なんだからよ」
「いや、俺もいいっす。兄貴食べてください」
断るに断れなくなったミハイルは渋々エリザが分けたオムライスにスプーンを刺した。
三人とも食べ終わり、ミハイルとニールは食後のワインを呑んでいた。エリザは食べ終わり、三人分の食器を重ねていた時ミハイルはエリザを呼び止めた。
「口の周りにケチャップがついているぞ。拭いていけ」
「うん」
力強くうなづいたエリザは口の周りを綺麗に布で拭いた後、部屋の奥に消えて行った。
ミハイルが一杯目のワインを飲み終わり再びグラスに注ごうとしたとき、ニールの口が開いた。
「兄貴、そろそろいいでしょう」
「食っているとき、何も聞いてこなかったな」
「兄貴のことだ。きっとわけありだろうと思いましてね」
「お見通しってわけか」
ミハイルは苦笑してニールを見た。大きく嘆息しソファーの背もたれにもたれかかった。
ワインの赤紫色のワインが入っているグラスをもてあそびながら続ける。「話をする前に一つ尋ねたいことがある。この国に伝わっている伝説を信じるか?」
「昔、悪い竜がこの大陸を支配していてってやつですか」
「そうだ。その後勇者は姫と結婚し、子供を作った。その三人の子が三つの国を造り治め今のこの大陸の国々の元となるっていう話だ、今となってはそんな面影がないが」
「多少大げさなところもあるでしょうけど……一応信じてます。そうだ。兄貴この悪い竜はどうなったか知っていますか」
「だから、勇者に倒されたんだろ」
「そうじゃないんです。オレの故郷はコレックという漁村なんですがコレックにはあの多頭竜が生きていたことを示す歌が残っているんです。誰が創ったかは分かっていませんが」
「全部覚えているのか」
ミハイルの問いにニールは黙って小さくうなずき口にした。
北の空から深い傷を負った竜来る。
竜は宝と赤髪の青年を残し、
再度旅に出る。
青年は復讐を誓い
旅に出る。




